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それぞれの疲れと回復 ~地域の学校Vol.13

今回は、1月末に実施した会の記録です。
この日は、みんなが少し不調気味な心のうちを告白する中、始まりました。


溺れていることに気づく

年末年始からスランプに陥っているという山田さん。
といっても、状況を悲観しているわけではなく、「この不調にも意味がある」と思って向き合っている最中だといいます。

山田さんは、側から見ても、猛烈に忙しそうです。
自身の疲れを客観視するために、まず、一週間のスケジュールを可視化してみたそうです。
さまざまな会議や事業を含めると、山田さんが会っている人の総数はおよそ250人もいました。

ロビン・ダンバーの理論(参考:インターシフト『友達の数は何人?』)によると、一人の人が友達として保持できる人はおよそ150人だといいます。そこからしても、友人として抱えるには多すぎる人数と接していることを、山田さんは意識し始めたそうです。

不調を自覚してから、何か変わったことあったか尋ねてみました。
乗らないときは、乗らないほうに集中するようになった、と山田さん。5~10年前はお酒を飲むことで忘れようとしたそうですが、今はやらなくなり、むしろぼーっとしたり、横になったりするようです。膨大な数の会議も、全部自分で仕切らずに人に任せるようになりました。

その様子を、ドラッカースクールで教鞭をとるジェレミー・ハンターの川の図に例えて共有してくれました。(参考:プレジデント社『ドラッカー・スクールのセルフマネジメント教室』)

それによれば、激流に飲まれている人は最初、自分が溺れていることにも気づいていない状態だといいます。自分が溺れていることに気づいたら、いったんその激流を出て、川辺に立って観察する。そして、川の流れを意識した上で、もう一度川に戻るのだそうです。

ゆっこさんもまた、似たように自分を俯瞰してみることを日常的に行っていました。
自分の身体や心がどんな状態なのか意識することで、「いっぱいいっぱいだ」と思ったら、今できることに集中することができそうです。

人と接して疲れてしまうとき

ゆっこさんは「自由に生きたい」という意志があるために、人から自分のことを決めつけられるときに、反発や苦しさを感じるといいます。

それでも、人と話すときには「いい人」であろうとして、その場は当たり障りのないことを返してしまう。すると、結局後になって「自分の気持ちに嘘をついた」ことに気づいて、悲しくなるのだといいます。

そういった経験は、参加者のよしみさんにもありました。
例えば誰かに誘われて、自分になじみのない場に参加するとき。誘われたときに自分がちょっと違和感を感じても、「参加したら楽しいかも」という希望から一度行ってみたとします。でも、「やっぱり違った」というときには精神的に激しく消耗することになる。

「感受性が強く敏感な気質を持った人」は、HSPと呼ばれるそうです。HSPの自覚があるというよしみさんは、誰かの不穏な空気や気持ちは出会った瞬間にわかるといいます。
でも、そういった人たちと適度に距離をとっていくと、最後には自分にとって大事な人だけのこっていくと思う、とも付け加えました。

子育てはブランディング

ゆっこさんは、子育てをブランディングに例えます。

一般的に「ブランディング」と聞くと、作るものや売るものを限定することで方向性をつけ、特定の顧客の目に留まりやすい商品をつくる、といったイメージを思い浮かべます。こうしたブランディングは、もっぱら売り上げを伸ばすことが目的になります。

でも、子育てにおけるブランディングは、少し違います。
その人の作るものや感受性からにじみ出る全部を、「そのまま個性として活かす」方法を見つけること。そこでは、持って生まれた個性を削って方向性を作るのではなくて、その人の存在そのものを尊重し解釈することで、方向性を創り出していく、という前提があります。

もし、あらかじめ個性を削ったりやることを限定したりしてしまうと、その子自身がもつ「やりたい」という気持ちはまったく尊重されず、そもそもやりたくなくなってしまうかもしれません。

ハンドメイド作家として活動するあみさんは、「つくる」ことそのものを楽しみながら活動されています。もちろん周囲には、売れるために作品を作る参加さんもいます。しかし、せっかく「つくる」からには、自分が学びたいセンスやよい刺激を持ち帰りたいというあみさん。つくりたい気持ちの優先順位が高い人との会話は、あみさん自身のセンスも磨いてくれるといいます。このため、ワークショップやイベントのときには、誰とやるか、どんな空間をつくるかを大切にしているそうです。

まとめ

印象的だったのは、参加者のみんなが調子悪い状況を語る中、最後に出たよしみさんの一言でした。
がんばりすぎが原因で体調を壊した経験のあるよしみさんは、
やる気が出たときしかやらない」をずっと実践しているといいます。
自分がやりたくないことを無理にやらなくても、ここまで生きてこられたから大丈夫だよ!と太鼓判を推すよしみさん。
今回話題に上がった川の例でいえば、「川から出る」こともせずに「川で浮いて待つ」感覚だといっていたのには、思わずなるほど!と思いました。

苦しみや悲しみ、怒りといったネガティブな感情も、向き合ってみると自分が大切にしている思いが見つかったりします。

ゆっこの部屋は、そういったネガティブもポジティブもぜんぶ共有しながら、次回に続きます。

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