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オンライン授業に学ぶ、大人たち ~地域の学校Vol.7

いま、塩尻で新しい学校をつくろうという動きがあります。
0からつくる、まったく新しい民間の学校です。この学校を、どんな場所にしていくか?
子どもたちのために、どんな授業や、どんな人が必要だろうか?
今まさに、学校のアイデアは広がっている途中です。
本連載では、このミーティングの内容を中心に、学校をめぐる動きをレポートしていきます。

オンライン授業、どうしてる?

ゆみこさんは、保護者の立場から、オンライン授業について気になっていたといいます。家庭によって、デバイスがなかったりWifi環境がなかったりすることから、まだまだオンライン授業のハードルは高いのでは、という予想です。実際のところ、塩尻近辺の学校ではオンライン授業がどのようにとらえられているのでしょうか。

先生をしているふなさんの学校では、このとき学校では分散登校の準備が進められていました。分散登校で子どもたちをどのように落ち着いて生活させられるかという話題は出ても、オンライン授業にまでは言及されていなかったと語ります。

とはいえ、休校中、同僚の先生方の間でオンライン授業の情報交換はされていたそうです。しかし管理職の先生へ相談した際は、各クラスの足並みをそろえられないという理由から、学校全体でのオンライン授業の導入は難しいと言われたのだといいます。これまで経験がない事態に、先生たちも、そもそも授業をどのように実施するか決めきれていないようです。

でも、この機会だからこそオンラインの可能性をいろいろ実験できたらよいのでは、とゆっこさんはいいます。やるかやらないかで悩んで失敗するリスクを避けるよりも、未知の領域に飛び込んで試行錯誤したほうが、少なくとも前進することができます。

教員の役割

今の時代、オンライン上に優秀な教材がたくさんあります。このため、オンライン授業といっても、教員は教材を0から作る必要はありません。
こうした中で教員の役割は、学活などで子どもたちの様子を見て、フォローすることなのではないか、とふなさんは考えます。

むしろオンラインでは、一方通行の授業よりも、都度話す子どもたちとのコミュニケーションを行うほうがよいという考え方もあります。宿題が大量に出され、子どもたちが自分ひとりで課題をこなす、という対応が多くの学校で取られています。

しかし、課題をする子どもたちの様子を見ると、ひとりでは質問もできず、モチベーションも上がらず、しんどい思いをしている子も少なくないように思われます。(同じ状況で学習を強いられたとしたら、大人の私でもしんどいかもしれません。)
休校で自宅にこもっていると、どうしても学びを個別化せざるを得ません。そんなとき、学びを共有したり、アドバイスを求めたりするための、オンラインサポーターがいればよいかもしれません。誰かに話すことで、学習にもメリハリをつけて取り組むことができそうです。

保護者発信の「オンライン朝の会」

ゆみこさんが、知り合いの方の事例を共有してくれました。

休校中の子どもたちの様子を間近で見ていた保護者の方々が、有志で集まって「オンライン朝の会」を始めたところ、最終的に担任の先生が朝の会の役割を引き取り、クラスとして実施されるようになったのだそうです。
このことからも、アイデアを出すのは先生たちだけでなく、保護者ももちろん可能なのだということがわかります。そのアイデアを見逃さず、取り入れて実施に至った先生の姿勢も、素晴らしいものがあります。

そこから、話題はオンライン学活の可能性について盛り上がりました。オンライン学活は、休校中で直接会えない子どもたちが自分の活動を発表する機会としても使えそうです。

例えば、子どもが「こういうの学んだよ」という事例をクラスで共有すると、興味がある子どもたちが自発的に集って、小さな学習グループをつくります。
すると、子どもたちは学びたいことを自分で選べるし、先生たちは学習する内容をあれこれ指示しなくてもよくなります。
休校が続いたとしても、発表や共有の場をうまく取り入れていければ、有意義な学びにつながる可能性が開けます。

学ぶのは子どもだけじゃない

山田さんは、オンライン対応を進めた隠岐島前高校の事例を紹介してくれました。

隠岐島前高校は、島根県の離島である海士町にあり、長きにわたって「教育魅力化プロジェクト」に取り組んできました。

今回、新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴って移動が制限された島外出身の子どもたちに配慮し、いち早くオンラインでの対応を実行しました。

プロジェクトのリーダーを務める大野佳祐さんは、これまで、子どもたちに向けて語られてきた下記の文言の主語を、「私たち」に変えることにしたといいます。

皆さんがこれから予想される変化の激しい時代を生き抜くためには、主体的に課題を見つけ、多様な人々と協働しながら答えのない課題に粘り強く向かっていける力を着実に身につけていくことが必要です

インタビューによれば、大野さんは今回の対応で、子どもだけでなく大人もまた激動の時代に生きていることを痛感したと語ります。このインタビューに掲載されている写真では、先生たちが誰一人座らずに話し合いをしている職員室が写されています。

この写真からは、座って黙々と事務作業をするのではなく、先生もまた話し合い、意見を交わしながら、対応を探っている様子がわかります。

あっという間に状況が変化してしまう今の時代は、「正解」が何か誰もわかりません。だからこそ、話し合って試行錯誤を繰り返し、変化に応じて対応していくことの必要性を、この写真は投げかけてくれます。

大野さんの言葉として山田さんが付け加えたのは、新しい取り組みに対しては、教育委員会の判断を待たずに現場が成功例を作ってしまったほうが早い、ということでした。プロジェクトではiPadなどの端末供給が追い付かないため、メンバーがいったん自腹で費用を負担し、あとから行政に予算をつけてもらうように交渉しているのだといいます。その姿にも、「子どもたちよりも前に、大人たちもまた学ばねばならない」という強い覚悟がにじみ出ています。

先日、文部科学省が強い言葉で「ICTの活用」を提言した会見も話題になりました。

こちらの会見でも言及された通り、オンラインやICTを使った学びは、今後も各自治体、各学校が考えなければいけないこととして位置づけられています。長野県内の学校は徐々に登校を再開していますが、再開したら終わりという課題ではなさそうです。

私たち学校を作るプロジェクトとしても、今回オンラインの可能性について意見を交わしたことで、シンプルな「学校」の姿について考えるきっかけとなりました。校舎やカリキュラムよりも、もっと「学校」に必要なものとは何か。少しずつですが、かたちを作っていければと思います。

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