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学校をつくるお金の話~地域の学校Vol.2

いま、塩尻で新しい学校をつくろうという動きがあります。
0からつくる、まったく新しい民間の学校です。この学校を、どんな場所にしていくか?
子どもたちのために、どんな授業や、どんな人が必要だろうか?
今まさに、学校のアイデアは広がっている途中です。
本連載では、このミーティングの内容を中心に、学校をめぐる動きをレポートしていきます。
今回は「学校をつくるお金の話」です。

前回のイベントとは打って変わって、今回は小規模な会でした。前回はさまざまな人がいろんな理由で参加しており、学校のイメージを話す時間がなかったから、今回は新たに作る学校のことや、いま考えていることを話したい、とゆっこさん。

ゆっこさんが学校のイメージを教えてくれました。

作りたい学校は幼稚園と小学校、中学校。同じ場所には図書館、美術館、多目的ホール、カフェなども併設したいといいます。そこは学校でありながら、地域の人たちも出入りが自由にできることを想定しています。

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写真:筆者がゆっこさんの学校に比較的近いと考える、デンマーク王立図書館。通称「ブラックダイアモンド」。図書館でありながら、美術館、劇場、カフェなどを併設している。

小さな社会をつくるように、学校を作る

学校の敷地内に学校以外の機能を持つのには、一つ大きな理由があります。

それは、この学校にかかる運営費を、自分たちの経済活動によって賄いたいという野望があるからです。

私たちが思い浮かべる代表的な「学校」は、「学校教育法」で定義されている幼稚園、小学校、中学校などで、主に、公立学校は国や地方公共団体、私立学校は学校法人などによって運営されます。公立学校には言わずもがな税金が使われる一方で、私立学校であっても、学校法人が運営するのであれば私学助成などの形で助成金が用いられることが多いです。

しかし、こうした助成金や補助金を通じた行政とのつながりは、ありがたい反面、さまざまな制約を生みます。お金を貰う代わりに、その自治体の方針が学校の方針に大きな影響を与えます。それは、万が一自治体の方針が学校と異なったとき、学校が本当にやりたい方針を尊重できなくなるかもしれません。

しかし、学校法人以外が私立学校を運営することができるのでしょうか?

実際はなんと、株式会社が運営を行う学校も存在するといいます。

いきなり難しい話になりますが、小泉内閣において制定された「構造改革特別区域法」第12条によれば、地方公共団体が教育上又は研究上特別なニーズがあると認める場合には、株式会社などが学校を設置することができるのです。

一方で、こうした学校は通常の私立学校にはある私学助成金が受けられず、寄付などの際に税制上の優遇措置がないという財政的に不利な条件はあります。しかし、学校の校舎や運動場等の施設に対する条件が緩いのに加え、外的なお金による制約もなくなるといったメリットもあります。自由な形の学校ができれば、地域の人たちもそこに通う子どもたちも、その学校にさまざまな用事で通い、さまざまな体験をすることができます。

学校が収益事業を行うことで、運営資金のすべてをまかなうことができれば、学校にとっても地域にとっても、新しい可能性が開けるかもしれません。

こういった学校が実現した暁には、おそらく学校を中心とした小さなコミュニティが出来上がります。

学校は社会の縮図というが、今回の理想像は、そもそも学校を社会として作ってしまう計画というわけです。

メンバーの間で共有された、理想の学校のイメージは下記の記事が近いです。

そして何よりも大切なのが、「先生としてかかわる大人を集めること」とゆっこさんはいいます。重要なのは、子どもたちが安心できること。そして、多様な大人がいることで、子どもたちが自分に相性のいい大人を一人は見つけられるような環境にしたいのだといいます。

教室の子どもがたまたま担任の先生と合わないときに、現在の学校のしくみでは逃げ場がありません。相性の良し悪しは、多様性によって解決できる問題です。

学校はいくらでできる?

しかしここまで語っていて、はたと現実的になる話題が。いったい、学校はいくらでできるのでしょうか?

目標金額については「幼稚園なら500万円でできるらしい」「小・中学校までとなると少なくとも億はかかるのでは?」とさまざまな意見は出ましたが、どうやってその最初の資金を集めるかという話になりました。

どこかの社長から寄付をもらった話とか、投資としてお金を転がす話など、方法は多少なりと考えられました。しかし、どれもあまり現実的ではなさそうでした。

そこで、「お金をくれる人はそうそういなくても、お金の稼ぎ方を教えてくれる人ならいそうだ」という方針も検討することに。

「近いうちにお金の稼ぎ方について勉強会やりたいよね。」と市役所の山田さん。
確かに、その話なら興味がある人はたくさんいそうだし、学校建設が一気に現実的になる気がします。

そもそも、学校の先生の多くはお金の稼ぎ方を知らないのだ、と現職の学校の先生である舟越さんは言います。

教員以外で経済活動を行ってから教員になる先生はまだまだ少なく、子どもたちに対して自立の項目の一つである「経済的自立」を教えられていません。生徒にしても、「就職できない」ということが人生の終わりみたいに感じる子どももいます。

もし、学校自体がお金を稼ぐ仕組みのなかにあれば、子どもたち自身が自分でお金を稼ぐことを自然と学ぶことができるかもしれません。

学校とお金。この大きなテーマを抱えて、次回につづきます。

参考:構造改革特別区域法における学校教育法の特例について(株式会社・NPO法人による学校の設置)

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