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講演家・きよちゃん誕生! ~地域の学校Vol.6

いま、塩尻で新しい学校をつくろうという動きがあります。
0からつくる、まったく新しい民間の学校です。この学校を、どんな場所にしていくか?
子どもたちのために、どんな授業や、どんな人が必要だろうか?
今まさに、学校のアイデアは広がっている途中です。
このミーティングの内容を中心に、学校をめぐる動きをレポートしていきます。

今回もオンラインで開催した「ゆっこの部屋」には、特別なゲストが来てくれました。
小学6年生の講演家、きよちゃんです。

きよちゃんは、ゆっこの部屋に参加してくれる吉田忍さん(通称ビリー)の次男。プロゲーマーとして歩み始めたお兄さんを持つ、家族が大好きな少年です。
小学6年生になったばかりのきよちゃんの現在の夢は、講演家になること。講演家としてのテーマは「同調圧力をなくして、みんなが悔いのない人生をおくるようになること」だそうです。
先日、その夢を聞いたゆっこさんが、きよちゃんの記念すべき第1回講演会を、ゆっこの部屋という場で行ってみてはどうかと提案したことから、今回のミニ講演会が催されました。

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きよちゃんが講演会を行いたいと思ったきっかけは、「同調圧力をなくしたい」という強い思いからでした。

小6の子から突然「同調圧力」という言葉が飛び出すだけでも、びっくりしてしまう大人の方もいるかもしれません。(筆者はとても驚きました。)

でも、きよちゃんの声は真剣そのものです。

例えば、時代を進歩させるようなすごくいい意見を持った人がいたとしても、同調圧力に負けてしまえばその意見がつぶれてしまい、時代の進歩のチャンスがなくなってしまう、ときよちゃんはいいます。自分の講演が広がることで、一人ひとりの意見が尊重され、よりよい世界になってほしい。そんな熱い導入から、きよちゃんの講演会は始まりました。

「将来の夢:プロゲーマー」はなぜ認められないか?

今回は、同調圧力に対する具体的な例としてプロゲーマーを挙げています。
きよちゃんのお兄さんはプロゲーマーです。一般的な意見として、子どもが「ゲーマーになりたい」というと、不安を覚える保護者は少なくありません。
きよちゃんは、保護者がプロゲーマーに対して抱く不安を4つ挙げてくれました。

1. 不健康そう
一般的に、ゲームをやめられずに依存している症状は「ゲーム障害」と言われます。しかし、こういった症状とプロゲーマーの仕事には大きな違いがあります。
プロゲーマーは、大会で賞金を得ることを職業としている人たちのことです。大会で勝ち続けないと、生きていけません。本気で仕事に取り組むためにも、体力はもちろん必要です。運動して体力を上げるだけでなく、集中力や反射神経を衰えさせないためにも、自身が健康でいることに人一倍気を付けなければいけません。このため、不健康というイメージは、適切ではないことがわかります。

2. 不安定な職業
賞金が収入源である以上、収入が不安定なのは事実です。しかし、きよちゃんによれば、こうした職業でも一時的に安定することができるといいます。スポンサーや事務所と契約することで、期限はありますが収入を安定させたり、海外の大会への出張費をまかなったりすることができます。

3. 今後が心配
職業としてのプロゲーマーの寿命は短いそうです。歳を追うことに体力や反射神経などが衰え、ゲームで勝てなくなれば、仕事は辞めざるをえません。
しかし、辞めなければいけない時に備え、その後の計画を立てておくことは可能です。ゲーマーになる前もしくは在職中に、自分の引退後の計画をしたり、ほかの職業の知識をつけておいたりすることなどが、不安から解放されるための戦略です。

4. 不登校
学生のうちにゲーマーになる場合、不登校になるのではと考える方もいるかもしれません。でも、きよちゃんは、不登校が必須というわけではないといいます。ゲーマーに限らず、学校に行く理由は人それぞれ異なります。学校は、ゲーマー以外の自分の選択肢について、考えたり学んだりすることもできる場所です。その人が、ゲームを研究したほうが成長できると思えば行かなければいいし、ほかの選択肢がほしいなら通えばいい。また、週に一度や月に一度通うという可能性も考えられます。
学校とどのように付き合うにしても、「自分に合うものを選んでいったらいい」、ときよちゃんはいいます。

認め合いの力

きよちゃんが一番伝えたいのは、「認めあい」の大切さです。やりたいことがある子どもと、それを認めてくれない親という関係よりも、お互いに認め合える家族のほうが、WIN―WINの関係になれます。そうすれば、子どもも応援されてうれしいだけでなく、ほかの家庭から見た印象がよくなり、もしかすると「うちも真似してみようかな」という家庭が現れるかもしれない、といいます。
保護者は子どもの夢を応援したいならば、まず認めてあげることが大切です。

同調圧力は強い!

「じつは、最初に見せるべきだったのですが…」といって、きよちゃんは、ある実験例を示してくれました。

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上記写真のようなグラフを用いて、「棒グラフAと同じ長さのグラフは、①②③のうちどれか?」という問いをしたとします。
回答者が一人のときは、99%の人が「②」と答えるそうです。8人のグループで回答するときは、予め7人の回答者に①と答えるように仕込んでおきます。すると、残りの1人の回答者は、3分の2の確率で①と答えたのだといいます。
このように、本当は自分で違う答えを持っていたとしても、半分以上の人が周りの意見に流されてしまうということがわかります。こうした「同調圧力」に少しでも抗いたい、というのが、きよちゃんの願いです。

質問タイム

約11分間のきよちゃんの話は、ほんとうに立派な講演会でした。「初めて話をしたので緊張した」といいつつも、シナリオをきちんと準備して、リハーサルもして臨んでくれたようです。
きよちゃん自身、自分の家族は「ほかの家族より認め合いが深い」と感じているといいます。その実体験の中から感じたことを率直に話してくれた講演会でしたが、ほかの家庭や大人たちにとっても参考になる、深い内容でした。
感想を共有すると、「きよちゃんみたいな説明ができる子どもならば、親は安心できるだろうな」といっていたのは、現役教師のふなさんです。ゲーマーになりたいと考えている子どもは多いが、綿密な計画を立てている子どもは実感としては少なく、それゆえに保護者は心配しているのではないかといいます。

聞いていた大人たちからは、こんな質問が出ました。

Q.
日本は文化的に人に合わせてしまいがちだ考えているけれども、きよちゃんが友達や家庭で認め合いができるように、きよちゃんが気を付けていることはありますか?

A.
まずは、自分の意見を言うようにしています。それから、相手が自分に賛成してくれるように、プレゼンのように自分で根拠を集めるようにしている。情報をいうときには、長所だけでなく短所もいうと信頼してもらえるので、短所も言うようにしています。

Q.
周囲に、自分の意見を言うのが苦手な子がいるなら、どういう風にコミュニケーションをとっていますか?

A.
たぶんその人は人と接触することを、あまり好んでいないと思う。だから、少しずつ話すなど、相手に適応した話し方をするようにしています。

先輩から本気のフィードバック

ここで、数々の講演を行ってきた山田さんからもフィードバックがありました。

講演家として、山田さんはいくつかのお手本を持ち、型を作って実践しているのだといいます。お手本のひとりである伊藤羊一さんは、プレゼンに関して「観客が内容をわかるだけではなく、『腑に落ちて、行動しようと思った』までいくのがプレゼンテーションだ」といっているそうです。
これを踏まえて、講演の時に気を付けていることがあります。

・今日聞いてくれたメンバーにどういう行動をしてほしいか
・世の中を変える行動をどのように起こしてもらえるか

こうしたことを考えることが大事だといいます。今回、きよちゃんはプロゲーマーを例に挙げましたが、ゲーマー以外にも、今は世の中にないどんな仕事でも応用できるプレゼンを作ることができれば、絶対強くなると山田さんは語りました。

大人の本気のフィードバックを受けた、きよちゃん。今日の感想は「エレベーターが少し進んだ感じ」とのこと。今後の活動に期待して、きよちゃんの講演会は終了しました。

※きよちゃんの講演にあった、少数派だと不安に感じてしまう現象は「ハーディング効果」というのだそうです。こちらのブログに紹介されています。

つづいて、大人たちが語る番です。


きよちゃんの言葉に心動かされつつも、チェックインで自分の今を振り返るところから始めました。
山田さんは、小6のきよちゃんが立派に自分の言葉で語ったことをふまえて、「年齢・性別で下駄を履かせちゃいけない」と改めて感じたようでした。山田さん自身が講演をたくさん経験しており、きよちゃんにもたくさんのフィードバックを「本気で」していました。それに対し、きよちゃんの父親であるビリーさんからは、プロが子ども扱いせず本気で接してくれたことに、感謝する言葉がありました。
一人ひとりの言葉を受けて、きよちゃんが今後どのような講演家になるのか、とても楽しみです。

続いて、小売りの仕事をされているよしみさんは、現在の職場の雰囲気について話してくれました。新型コロナの影響で、売り場には人もいないし売り上げも悪い。自然と雰囲気も悪くなり、スタッフはコロナの愚痴ばかりになっていたようです。その状況を打開しようと思ったよしみさんは「でもやることあるじゃん!」と一喝。言うかどうかを迷いつつも発した一言でしたが、若いスタッフが少し安心してポジティブになったところを見て、言ってよかったな、と思ったそうです。

社会状況が日々変化する中、ゆっこさんは今、自分の人生が変わるときだと感じているといいます。これまでの人生で、自分の進む方向はこっちでいいのかどうか、こんなに確認しながら進む経験は少なかったといい、それに対する怖さがあると打ち明けてくれました。そんな中、きよちゃんが今日の講演で「長所も短所も話す」と話していました。その点は深くゆっこさんの心に響き、これからは自分の弱みも出していきたいと語りました。

新解釈「ヘビに睨まれたカエル」

ここで山田さんは、最近紹介された「ヘビに睨まれたカエル」の新解釈について話してくれました。
一般的に「ヘビに睨まれたカエル」といえば、恐ろしい敵に対峙した際、恐怖で身体がすくんでしまう状態を例えたものです。しかし京都大学の研究によれば、カエルが動かないのは恐怖のためではなく、冷静に状況を判断しているためだとわかりました。

カエルはいったん跳ぶと着地まで空中で進路を変えることができず、ヘビより先に動き出すと動きを読まれて空中で捕まりやすいことがわかった。

カエルが先に動くと、ヘビが軌道を読んでかみつくため、ヘビがどう動くかをカエルはぎりぎりまで読む。膠着状態において、後手に行動することは、カエルの生き残り戦略なのだそうです。

山田さんは、現在の社会状況を、この新解釈「ヘビに睨まれたカエル」と比較しました。自分自身も自然界も同じように、不確実なことが常態化している世の中では、冷静に状況を観察して、後手に動いたほうが勝つのかもしれない。すぐに答えを出して動くのではなく、時には立ち止まることの効用を見つめなおしました。

これに対してゆっこさんは、今の状況では「自分の感覚を研ぎ澄ましている」と付け加えます。冷静に観察しつつも、今起こった出来事に対して自分がわくわくしたのか、やな気持ちになったのか。自分の感覚と比較してみて、ちょっとでも違和感があったら行動をやめる。亀の歩みのようではありつつも、一歩ずつ進んでいるのだといいます。

振り返り

講演会から対話を通した今日一日で、参加者になんとなく共通して得られた気づきがあります。それは、新型コロナの影響は、ネガティブにとらえられることばかりではない、ということです。
さやかさんは、仕事がお休みになったおかげで家事が充実。すると、あれもつくりたい、これもつくりたいと、今まではなかった欲求を自分のなかにたくさん発見するようになりました。今は、日常をていねいに生きるのをやってみたいと語ります。

あみさんは、これまでの生活では必要最低限の家事が精いっぱいでした。加えて、部屋が片付けきれなかったときなど、家族に指摘されるのが嫌だったといいます。でも家事をやる余裕がある今、きれいな部屋がよろこばれるとうれしい、家族が全員そろっていてうれしいと感じることなどが増え、ふと、自分が幸せだということに気づきました。
自分が満たされてない気持ちを、普段は外に求めているかも、とゆっこさんはいいます。今回の対話では、自分が欲しいものは、実は何かの行動によって手に入るものじゃない、ということに気づいた人も多かったように感じます。今までの環境や習慣から一度離れ、自分の身の回りでしか動けないときに、こうした「青い鳥」に気づけたのは良いことのように思えます。

オンラインでの「ゆっこの部屋」も、だんだんと回が深まってきました。
今だからこそ共有したいことを、少しずつ広げています。

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きよちゃんは、講演家として日々感じることをブログにしています。よろしければご覧ください。

- note
https://note.com/funi6

- ブログ
http://mirainiikiru.com/

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