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カエルのはなし

マンガのキャラクターとなるカエルは可愛い。
実際、私が子どもの頃の遊び場であった農業用水の護岸工事のされていない土手で見つけるカエルは可愛らしかった。
トノサマガエルやアマガエルである。

そんな私の子どもの頃、ガマガエルを目にすることはそれほど多くはなかった。
まあまあの田舎で育った私は春先に冬眠明けであろうヨタヨタするガマガエルに遭遇する機会はあったものの、奴らの元気な梅雨時から夏場にはなかなかお目にかかることは無かった。
デカい体のわりに動作は機敏だった。

私たちの背丈にちかい草をかき分けて、農業用水の支流の川でザリガニ釣りをしていると時折大きなポチャンという音が聞こえた。
静かなザリガニ釣りの最中のその音は不気味だった。
ガマである。

私たちは奴らの仲間であるトノサマガエルを生贄にしてザリガニを釣っていた。
私はその大きさと醜さでガマガエルが怖かった。
殿様の仕返しに迫っているのではないかと怯えた。

しかし私の仲間にそんなデリケートな奴はいなかった。
なぜかポケットにマッチや串、味の素まで用意してきている奴らであった。
大人の目から隔絶された青い背の高い草の塀の中でザリガニを焼いて食った。

小学校に入学したての私に理科室は未知の世界であった。
そこでいきなりガマガエルの標本作りの途中を見てしまったことがある。
白骨化しつつあるガマ、骨の漂泊のためだったのか、嗅いだことの無い異臭に誘われて一人さまよい込んだその先での遭遇であった。

上級生の理科クラブの仕業であったのだがしばらくそれがトラウマになっていた。
今思えば懐かしい思い出である。
そして、虫や小動物たちに残酷なことをしてきた。
多くの生き物の命とともに成長させてもらった。
生きるための訓練をさせてもらったと言った方がいいのかも知れない。
平成元年生まれの息子世代とは全く違う昭和の悪ガキ達の校外学習の教師の一人が『カエル』だったのである。

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