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玉子入り肉うどん

季節は変わり、熱いうどんを少々早めのスピードですすり込んでも汗をかくことはなくなった。
てなわけで、近鉄八尾駅近くまで用足しに行ったついでに久しぶりに高架下のうどん屋に寄ってみた。

そしてここでも『値上げ』という衝撃の事実が私を待ち構えていた。
なんと、410円の肉うどんが一挙に500円に上がっていたのだ。
社会情勢を鑑みて、モノの値段が上がるのは致し方がないと頭は理解しているが、ここ最近心の動揺を納めるのに苦労する。

「えっ、」と動揺しながらも券売機の500円の肉うどんのボタンに私の人差し指は触れ、清水の舞台から飛び降りたつもりで力を込めて押していた。
ついでにカウンターでおばちゃんに100円玉一枚を渡して追加で玉子とじにしてもらおうと思った。
いつもより早く「玉子入り肉うどん出来たわよ~」と声をかけられれ受け取りそのうどんの顔を見て、再び「えっ、」と私の心は動揺した。
玉子がとじられることなく先日の夜にお会いした中秋の名月のようにまん丸のまま私を見つめていた。
そして、お盆には30円のお釣りが乗っていた。

「あぁ、、」それを見て理解した。

値上げの衝撃に打ち砕かれた私の心を、脳はなんとか平静を保てるように全力を傾注してしまい、私の追加注文の「おばちゃん、玉子、、、、とじ、、」とハッキリ意志伝達をすることにまで及んでいなかったのである。

うなだれて席につき、値の上がった分を取り返すために七味を鬼のようにふり、ゴマを山のようにすりおろした。

そして、ひと口すするといつものうどんにいつもの甘めの出汁と味のシュンだ牛肉、おばちゃん達の愛情を感じる美味しいいつもの肉うどんだった。
私がスーパーで買う10個118円の玉子より色の濃い生の玉子も玉子の味がして美味かった。
玉子とじ100円、生卵70円はメニューには無い。
これまで生きて来た経験則で得た裏メニューのような私の楽しみなのである。

生きるということはこんなことである。
予測もしない事態に出くわした時にいかに対応するか、いかに平常心を保てるか。

というようなくだらぬことを考えつつうどん屋にも流れ込む秋の空気を感じつつ次は必ず600円の玉子とじ肉うどんを食おうと決意したのであった。


夕食のメニューを考えながら自転車でスーパーに向かった。
買い物は満腹時が良い、余計な物を買わずに済む。


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