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JR西日本 大阪環状線新今宮駅

駅って存在をいつも不思議に思っています。
そこは必ず通過地点、もしくは発着地点、この駅に長時間とどまっているのは駅員さんをはじめとする駅関連業務従事者の方だけでしょう。
そこで時間を過ごすことを目的とする人が極端に少ない駅を不思議に思います。

駅によって匂いが違います。
鶴橋駅のように実際嗅覚で感じる匂いもありますが、私が感じるのは肌で感じる『匂い』なのです。
新今宮駅にも最初からほかの駅と違う匂いを肌で感じていました。

平成に入ってすぐくらいです。今から30年以上前に新今宮駅に降りたのです。ゼネコン営業マンの1年生でした。駅から徒歩圏内の法務局今宮出張所(調べたらずいぶん前に統合されて無くなっていました。)まで、ある土地の権利関係を調べに行きました。

ゼネコン営業マンの仕事は多岐に渡ります。
土地があって初めてその上に建設計画が出来て金儲けの青写真を描くことが出来ます。
だから、まずは土地ありきなのです。

この時は大阪市内の有効利用、地主は奈良の山持の大地主でした。
過去に貸しビルの施工実績があっての持ち込みの提案資料を作るためでした。

そのために生まれて初めて一人で法務局に行きました。
初めての法務局で、企業の営利目的で他人の土地の調査などしてもいいのかと疑問を持ったのですが、行ってみれば多くの人が私の目的と同じようなことを求めているんだと分かり、ちょっと驚きました。

でも、その時は初めて降りた新今宮の町に驚きました。
建築屋のだいぶ年上の先輩に「若い頃、大阪で土方が足らなくて、よく『あいりんセンター』まで『あんこ』を拾いに行った。」と聞いたことがありました。

そのあいりんセンターが賑わうのは朝早く日の出の頃だとも聞きました。
早い時間に立たなければ日当のいい、割りのよい仕事に当たらないそうです。そのために早くから賑わったのです。
日雇いの仕事をする労務者を『あんこ』と言います。
本当かどうか知りませんが、語源は深海魚のアンコウだそうです。
普段は眠っていて、エサが目の前に着たらパクっと食いつくからと。
案外、この手の隠語は港湾労働関係から来たりするので語源はあってるかも知れません。

私が行ったのは遅い午前中、閑散としたあいりんセンターの1階の広い土間にはもう段ボールで領地確保を済ませて寝ているオッチャン達がいました。
その日の仕事にあぶれた人達だったのでしょう。
横目でそんな光景を見ながら街をウロウロしました。

もうその時間から酒の飲める店はあり、南海のガード下ではオッチャンたちは簡易な出店で電車や駅のゴミ箱で集めてきた週刊誌や日用品を売ってました。
なぜか片側だけのサンダルやたぶん壊れてるであろう目覚まし時計などを。

怖いもの知らずの30過ぎでしたが、スーツは場違いだと思い、その時は引き返しました。

私は外見で人を判断しませんが、人は私を外見で判断します。
場違いなのは、ここで生きる皆さんに不快感を与えると思ったからです。
この新今宮の『釜ヶ崎』や東京の『山谷』などが存在することに私は全く否定しません。
それまで生きにくかった人達が、そこで生きていけるのならばこんなにいい事は無いと思います。

でも初めての新今宮は不思議でした。
今でも不思議な新今宮です。
星野リゾートがやって来てこのGW前に開業です。
もっと不思議な、複雑な不思議さに変わっていきます。
大阪市の思い描く新今宮が私には理解の出来ない不思議さです。

人を大切にする、人情味のある大阪はここらあたりにも原点の一部があると思っていました。
だから、ここで今まで生きてきた、今を生きている人達が魅力を感じなくなる新今宮になってもらっては困ると思っています。

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