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猫のひげ

不思議である。
わが家のばあちゃんネコ、ミケ猫ブウニャンのひげは一本だけ波打っているのである。
秋バージョンではない。抜けても抜けても年中波打っている。
たくさんの猫を見てきたが、初めてである。特殊な能力を備えているわけでもなさそうである。普通のひげである。

ごくごく普通のミケ猫は15年ほど前に愛知の実家で生を授かった。
母猫は不幸にも交通事故で他界している、それからしばらくして兄弟の茶トラ白の『トラ』とともに大阪に引き取った。
高齢の両親の他界と施設入所で飼い主がいなくなってしまったのである。

10年近く過ぎ、大阪の空気にも馴染んだようである。
トラは一昨年前の暮れにあの世に行き、今このブウニャンが後を続こうとしている。いずれ来ることは分かっていたが、やはり悲しく寂しい気持ちが溢れてくる。
肉親の死はもちろん悲しいがそれとはまた違う寂しさがある。

モノを言うことの出来ない彼女に何をしてやったらいいのか。
こんな日が来ることがわかっていたから、本当は引き取りたくなかった。
でも捨て去ってくることはもっと嫌だった。
なるべく互いに関わらず、空気のような存在でいるように、いてもらうようにして来た。
でもここまで来たらしかたない、抱いて撫でてやる。
子どもの頃飼っていたキジトラ猫の『ブチ』ように。
また同じ思いをしなければならない。
どの愛猫、愛犬家も同じ思いをしてきたはずである。
でも猫、犬を飼う人はいなくなることはない。
不思議に思う。


二人はまあまあ仲良しだったのである、、

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