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飲み屋で考える

若い頃には一人で飲み屋に入るなんてことはありませんでした。
必ず誰かと一緒でした。
やはり仕事の関係の飲酒の席が多かったですね。

お客さんをタクシーに乗せてドアを閉めた後の記憶が無いなんてことがよくありました。
気は張っていますし、もともと弱くはない酒です。
酒に飲まれることはめったにないのですが、体調の悪い時の席や宴席の続いた時には記憶が無いってことがしばしばありました。

今はそんなことは無く、気楽ですね。
飲酒の時間を楽しめるようになったって感じです。
一人で飲んでよくモノ思いに耽り、考え事をします。
メニューを見て考えます。

大阪日本橋から続く『なんばウォーク』の入り口あたりにある『初霞はつがすみ』って名前の飲み屋です。
奈良県宇陀市の造り酒屋の直営店です。
もうずいぶん前から足を運んでいます。息子が小学校の低学年の頃に二人で入った記憶があるのでもう軽く20年は過ぎています。

私が入ったのは午後のまだ早い時間、朝に仕事を終え、その後京都の放置竹林整備NPOの事務所で打合せ、阪急電車最寄り駅から電動アシスト自転車で往復1時間のサイクリングを終えて、やっと大阪市内まで帰って来ました。

久々にのぞいた『初霞はつがすみ』はそんな時間でもそこそこ客は入っています。
朝9時に開店だったと思います。

一人カウンターに座りビールを片手に京都での打ち合わせの記録をノートにまとめていると、右横の私より年上の胡散臭いオヤジがこれまた胡散臭げに私の所作を覗き見てきます。
そのまた右横にはどう見ても奥方には見えない若いお勤め前の女性、同伴にしたらあまりにも時間が早すぎる、まあ、大阪で時々見かける元気なオヤジとオネーチャンでした。

真面目に仕事帰りの客も、何をしているのか分からない客もいる雑多な空間がこんな時間の大阪の飲み屋です。

この『初霞はつがすみ』のもちろん日本酒も好きなのですが、丁寧にこしらえる肴がなかなか美味しいのです。
私はどんな店に入ってもメニューで推測の出来ないそこでしか食べることの出来ない一品を注文します。
ここでは『蔵元秘蔵和え』ってのをいつも頼みます。
このメニューの上下から推測して蔵元の酒粕使った料理なんだろうとは思いましたが、何を和えているのか分かりませんでした。

濃厚の旨味の酒粕に薄くスライスしたシメサバとワサビの茎が和えてあります。
酒飲みにはたまらない酒の肴です。
イワシの天ぷらもサクサクと美味しくいただけました。

一人飲みながらの考え事は半分くらいはメニューの内容と、その原価予測や値付け、店からしたらめんどくさい男と思われることを考えていたりします。

酒を飲みながら難しいことは考えません。
両親のことはすべて卒業させてもらいましたが、時々頭に浮かぶ病身の兄のことは素面しらふの時に真面目に考えています。

酒を飲むのは頭のなかを整理して心の平穏を作るためです。
だからこんな事を考えるのが私にとっては一番なのです。
しかしながら、いつもがそうならないって難点はありますが、、


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