今年も『ふたり展』
今年もやって来ました。
設計事務所時代の先輩、一回りも歳上の先輩が毎年この時期に行っている絵画の展示会である。前回この先輩のことを書いたのが2021年、もう二年も前のことである。「早いなぁ、」という感想を持ち、何も変わっていない自分がいることに焦りを感じる。昨年は私の都合で来れなかった。だからなおさら感じるのかも知れない。後期高齢者となった先輩とご友人、やはりそれなりの年齢に見えないこともない。
定点で人を観察する、ということは私も誰かに観察されているということであろうが、自身の身に置き換えて考えることが出来るのがいい。20年以上も前、同じ会社で仕事をしていた先輩に今の丸さは無かった。当時は東京事務所所長、新橋の系列某電鉄会社のビルに事務所があり、グループ会社の東京支社や事務所、劇場や百貨店に営業回りに行っていた。しかし、営業向きの方ではなかった。私が行くといつも時間を持て余して事務所で本を読んでいた。「好きなように仕事をすればいいよ。」と言いながら「人生は一回きりだからね。」という言葉は妙に先輩の風貌にぴったりしていた。
私が勤めていた設計事務所は当時は人を育てることの出来る社長と専務が親会社から転籍してきていた。その先輩の帰阪に合わせて営業会議を行うのだった。毎回の東京での営業活動の報告を聞くたびにご苦労されているなと思ったものである。一人きりの東京での営業は技術畑からいきなり営業所長になった先輩にはきつさがあったに違いない。帰阪途中に名古屋のご実家に寄って、認知症のお母さまを見舞っていたが、思うような最期の介護は出来なかったりもしたようである。
ストレス無く生きることは理想である。でも、若干のストレスが人の脳を活性化させると思っている。楽しく満足だけの生活に創造は生まれてこない。私だけなのかも知れないが、今の私は適度なストレスに支えられていると思っている。
先輩には過度なストレスだったのであろう。当時、絵を描くことは無かったと言う。能と生きる実家で厳しく父親に育てられ、お兄様があとを継ぎ本人は建築家を志して大阪の大学に行き、大阪で修業をした。
永く続く伝統を守る人じゃなかったんだと思う。発想はいつも飛んでいた。
先輩の絵も楽しく創造的な絵が多いのである。
一週間の展示期間中の二日目の午前中に伺うとヘッダーのナスビのOLDがすでに売約済みになっていた。酒が似合う先輩である。
昼前から会場で丹波篠山の枝豆を肴にビールと日本酒を十分にいただき、近いうちに二人でよく行った大阪駅の高架下辺りでの酒飲を約束して展示会場を後にした。