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建築とサッカー | プロサッカークラブで働くまで

皆さま、こんにちは!
2018年からJリーグクラブ 水戸ホーリーホックのフロントスタッフで働いている市原侑祐👓です。

クラブでの役割は経営企画室 ゼネラルマネージャー補佐という少々小難しい名前ですので日々の業務内容はおいおい書き記します。
既に2020シーズン開幕に向けて準備が本格的に始まっています。プロサッカークラブは選手契約期間と連動して1月決算月のクラブが多く、本日2月1日から事業年度が切替ります。
新たな1日を機にプロサッカークラブで働くに至った流れを振り返ってみます。模範的なことはありませんが、スポーツ産業やプロスポーツクラブへの転身、就職をお考えの方に少しでもお役に立てたらと思います。

1.幼少期と学生時代

千葉県千葉市で生まれ、幼少期は重い小児喘息で幼稚園や小学校をよく休み、まともに運動もできない少年でした。大きな入院を機に医者から「本気で治したかったら苦しくてもスポーツをして心肺機能を高めなさい。」と言われ、退院後に友人の誘いで始めたスポーツがたまたまサッカーでした。

ちょうどその頃、父親の誘いでとあるプロサッカー選手の講演会に参加しました。それが私と同じく千葉市出身で高校サッカーの名門市立船橋高校からジェフ市原(当時)に入団し、なんと今季から水戸ホーリーホックのトップチーム監督に就任した秋葉忠宏さんでした!近々秋葉さんに当時の話をお伝えしてみようと思います。
約25年の時を経て、仕事でご一緒できるなんて不思議な縁ですし、とても感慨深いものです。サッカーの繋がりって素敵ですね。

サッカーと同時に幼少期の頃から興味を持っていたのが建築。毎週日曜日の朝「渡辺篤史の建もの探訪」というテレビ朝日の番組が好きで、この番組を観てからサッカーの練習に行き、時間があれば市原臨海競技場(当時)にジェフ市原の試合を観に行くのが定番でした。

サッカーと建築。
サッカーは全国大会出場やプロサッカー戦になるとは全く無縁でしたが小・中・高・社会人と26才頃までわりと真剣に続けていました。サッカーと建築の点が繋がり、気づくと「将来スタジアムを作る仕事したいな。」と漠然と考えていた学生時代でした。建築学部の卒業設計で「スタジアムを軸とした街づくり」を講師に提案したら「こんなの壮大すぎて終わらないだろ!終わらなかったら卒業できないからな。」と瞬殺NGを出されてふてくされた日々を思い出します。卒業する頃には無事に喘息も完治し、サッカーと建築のお陰で心身ともに鍛えられた学生時代でした。

2.就職と葛藤

卒業後はスタジアム建設に携われそうな企業を探しましたが、当時は今ほどスタジアム・アリーナ構想の話題もなく、先ずは広く建設業に携わりながらヒト・モノ・カネの大きな動きが学べる企業を選び、東京の建設会社に2009年に入社。約5年間、建設プロジェクトマネジメント職(PM/CM)に携わりました。予算管理・工程管理をはじめ、施主・建築士・施工会社・施設担当者・メーカー・こてこての職人など、一癖も二癖も、時に難癖つけられる登場人物を取りまとめて、プロジェクトを0から100まで完遂させる言わばTHE調整役の仕事でした。
時間に追われる怒涛の日々に「スタジアムを作りたい!」なんて想いがすっかり抜けてしまい、気づけば20代後半に。仕事に慣れてくる20代中盤から後半に誰もが一度は考えるキャリアの壁に例外なくぶち当たりました。

「あれ?俺、この先もこのままでいいんだっけ?」
「本当は何がしたかったんだっけ?なんで建築目指したんだっけ?」
と自問自答を繰り返す日々。

未消化の代休と有給を使い倒して、ヨーロッパの歴史的建造物とサッカー観戦の旅をする中で、FCバルセロナのホームスタジアム カンプノウで観た光景に衝撃を受けて「あー、やっぱりサッカー専用スタジアムの雰囲気っていいな。街に熱狂を生み出せるスポーツを仕事にすることって出来ないのか?なんで日本のサッカーは陸上競技場ばかりなんだろう?そもそもスポーツを仕事にするってどうやるんだ?」建築からスポーツにキャリアチェンジが本当にできるのか真剣に考えるきっかけを得て帰国の途に。
帰りの飛行機で悶々と考える中、激務の日々に戻りながら転職活動することを諦め退職を決意。有給を使って散々旅を楽しんで帰ってきたら、お土産に退職届を提出。それはそれは上司たちの愛情たっぷりなお叱りを受けたことは言うまでもありません。

3.転機とSHCの学び

2014年はJリーグクラブのスポンサー企業を調べたり、現役プロスポーツ選手や引退後のアスリートに会いに行って現場の話を聞いたり、スポーツビジネスに携わる知人・友人を人づてに紹介してもらったりと過ごす中で、プロスポーツ選手やクラブをマネジメントする仕事の面白さに出会いました。スポーツを仕事にする人たちとのコミュニティづくりが積極的にできた1年でした。

同時期にJリーグと立命館大学が連携し、プロスポーツクラブの経営人材を輩出を目指すカリキュラム「Jリーグヒューマンキャピタル(現SHC)」が開講されるニュースを見て受験。村井チェアマンとの最終面接はさすがに緊張しましたが運良く1期生として合格し、同期40名と1年間スポーツビジネスとプロサッカークラブの経営や業務、組織構造を体系的に学ぶ中で、プロサッカークラブ内の課題やビジネスモデルの難しさを痛感しました。
とあるJクラブ社長の講義が印象深く、「成績と経営の両輪が回らないと3ヶ年事業計画なんて作る意味ないよ。だって降格したら突然事業規模縮小だから。」(いや、そういう運営側からの課題設定なんですけど...。)
また別の社長は「フロントスタッフの給与水準は受講生の皆さんが勤めている企業より遥かに低いし、華やかな理想と現実は全然違う。応募は多いけど採用条件の設定が難しい。」などクラブ経営の多大なる苦労を知りました。

SHC1期を経てガイナーレ鳥取・大分トリニータ・浦和レッズ・鹿島アントラーズ・福島ユナイテッド・長野パルセイロ・FC今治・水戸ホーリーホック・アジアサッカー連盟・JFA・Jリーグ・Bリーグ等、数多くのプロスポーツクラブやリーグ組織へのキャリアチェンジをする同期が多く、志高い方々との繋がりは今でも非常に価値ある財産となっています。

プロスポーツクラブで働く難しさを感じる一方で、自分の原体験を掘り起こすと、小児喘息を治すきっかけや人格形成に大きな影響を与えてくれた要因は間違いなくサッカーであったと。その頂点に位置するプロサッカークラブの職業課題を解決して、働く価値を高める為にはクラブの外からヒト・モノ・カネを繋いだり集める仕組みを作りだなと。30代はこの課題にチャレンジしようと確信しました。もはや使命感に近い思いでした。

4.プロサッカークラブへ

SHC1期修了後、2016年より友人の縁からシステム開発事業とアスリートのエージェント業務を行っていたFootbank株式会社(現職)に参画し、2017年からプロサッカークラブを支援する事業作りを開始しました。
幾つかのクラブのヒアリングと提案にいく中で、現在水戸ホーリーホックのゼネラルマネージャーである西村卓朗さんに再会し、「強化部と事業部を繋ぎ、フロントスタッフで新たな事業作りと組織のマネジメントを一緒にやろう!」と依頼を受けて、2018年から水戸ホーリーホックでの業務委託がスタートすることになりました。

当時同棲していた彼女とは別居となり、別居しながら入籍し、別居しながら結婚式を挙げ、もちろん現在は...
別居しながらお互いに水戸と湘南を行き来しています。
去年のシーズン最終戦、昇格プレーオフに僅かに届かなかったことを私より悔しがって泣いていためちゃくちゃ理解のある妻です。この職業は家族の理解なしには成り立ちません。本当に。

ちなみに、西村さん前職の関東サッカーリーグVONDS市原FCで監督・GMをされている時に出会ったこと、たまたま私が取材を受けた記事を読んでいたこと、SHCの講義で再会したこと、そして名前が「市原」だったことが後々分かりぐっと距離が縮まりました。市原姓を名乗れたことをご先祖様に感謝しなければと思いつつ、千葉市出身ではなく市原市出身の市原だったら完璧であったなと。

ということで余談はさておき、プロサッカークラブで働くまでの背景を長々と書いてきましたが、整理すると以下3つがキーポイントとして挙げられます。

・人との縁を大切にしてきたこと
・学ぶ環境から課題を見出し、解決策の仮説を立てたこと
・自分と向き合い、お金と時間を惜しみなく自分に投資したこと

新卒で建設会社に入社した頃、スポーツ業界、プロスポーツクラブ、スポーツ産業で働くなんて全く考えてもいませんでした。自分の興味関心や原体験と向き合ってきた結果、点と点が繋がってプロサッカークラブで働いているのだと思います。もちろん前職で得た様々なプロジェクトを回すマネジメント経験は想像以上に現職に活きています。

更なる驚きは、昨年末に「民設民営のスタジアム建設構想」をクラブから発表しました。収益性のあるスタジアム建設は、Jリーグが掲げる一丁目一番地のプロジェクトです。スタジアム建設に携わることを目指して建設業の仕事をしていた約10年前、旅先でFCバルセロナのホームスタジアムで抱いた新たな興味の点が、まさか巡り巡って水戸ホーリーホックで線となり、サッカーと建築が面で繋がるとは思ってもみませんでした。
偶然であり必然であったかのような物語をきちんと形にしていきたいと思います。

5.最後に

こちらのオンラインサロンで6クラブのJリーグクラブスタッフがプロサッカークラブで働くリアルな日常を定期的に配信しています。先日運用が開始されたばかりですが、私も発信していきますのでプロスポーツクラブ、スポーツに関わるお仕事にご興味ある方がいましたら覗いてみてください!(錚々たるメンバーの中に選んでいただき恐れ多いのですが。)

さて、本日は14:00からJ1鹿島アントラーズとのプレシーズンマッチがケーズデンキスタジアム水戸で行われます。いよいよ新シーズンが本格的に動き出すのだと身が引き締まる思いです!
また思い立ったら更新します。ありがとうございました。

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