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「Jessica Jones」はおもしろい

マーベルもそうだし、DCコミックスもそうなんだが、アメコミを基にした映画やテレビ番組というのがどうもピンとこない。マンガが原作だからではなく、我々が暮らす世界とほぼ同じでありながら、なぜかスーパーヒーローが存在するという設定に納得がいかないのだと思う。実世界の問題を解決するには超人的能力を持つスーパーヒーローが必要、と言われているようで、なんだか救いがないじゃないですか。ファンタジーのように完全に別世界ならそれはそれで良いのだが。

一方そうした設定を逆手にとり、スーパーヒーローやお決まりのストーリーをいわば道具として使って自分なりの映像表現を紡ぐクリエイターもいる。日本でも、かつては特撮ものや子供向けアニメという枠の中で好き放題している人がいたが、Netflixで制作されたこの「ジェシカ・ジョーンズ」などもなかなか良い線をいっていると思う。あまり人気が無かったのか、Netflix制作のマーベルものは最近全部打ち切られてしまい、これもシーズン3がファイナルになってしまったが…。パイロットで派手にぶちかまして出資者を募る、という必要がなかったせいか、最初のほうは地味というか展開がややもたついているような気もするが、次第にエンジンがかかってくるあたりは映画的でもある。

主人公のジェシカ・ジョーンズは一応元スーパーヒーローで、自動車を持ち上げられるくらいの人間離れした怪力と跳躍力を持っているのだが(そうなった事情はシーズン2で明かされる)、今はニューヨークの場末で私立探偵をやっている。スーパーヒーロー活動を辞めたのは、キルグレイヴという他人を思うがままに操れる怪人に洗脳されてさんざんレイプされたり人殺しをさせられたりしたトラウマからだが、奇妙な事件の依頼から、死んだと思っていたキルグレイヴがどうやら生きているらしいことがわかり…というのがシーズン1の出だしである。

ここまでで明らかなように、ジェシカにしろ、キルグレイヴにしろ、あるいは脇役の酒場の店主ルーク・ケイジ(刑務所での人体実験で刃を通さないほどの強靱な皮膚になったという設定)にしろ、元々のコミックがそうなので超人的能力を与えられてはいるのだが、物語上は必ずしも能力が必須というわけでもない。単純にろくでもない男にDVなどされて傷ついた、タフな女性の苦闘と回復のストーリーと捉えても良いし、そちらのほうが個人的にはピンとくる。

主役のジェシカ・ジョーンズはクリステン・リッターが演じていて、ご多分に漏れず私もリッターには、「ブレイキング・バッド」での主役ジェシーのヤク中彼女ジェーン役で注目したのだが、大酒飲みでがさつでいつも不機嫌そうだが実は繊細、というようなキャラクターをやらせたらリッターの右に出るものはいない。あとはやはり、キルグレイヴを演じたデイヴィッド・テナントがうまい。外見上はとりたてて特徴のない、いわば凡庸な悪の象徴とでもいえる男を楽しげに演じている。近づくと洗脳されてしまうという特異な悪役キルグレイヴをどう倒すか、という謎解き的な要素もあるせいか、やはりシーズン1が一番おもしろく、キルグレイヴが退場したシーズン2以降は物語の推進力がやや衰えるのは仕方が無いところか。シーズン3では、冒頭の私の疑問と全く同じことを考えている奴が悪役でおもしろい。

そもそも私がフィルム・ノワール好きということもあってか、点が甘くなっている部分はあるかもしれないが、子供だましなところもなく個人的にはなかなか楽しめた。あと注目すべきは各話の導入部(タイトル・シーケンス)で、CGをスタイリッシュに使いダークな世界観を十二分に表現していて感心させられる。日本出身アメリカ育ちの柏木亜利朱という人が手がけているようだが、2016年にはエミー賞にこれでノミネート、2017年には「ストレンジャー・シングス」でまたノミネートされ受賞、ということで、能力ある人が正当に報われるのは素晴らしいことだなと思った。

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