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「The Blacklist/ブラックリスト」はおもしろい

今年のゴールデン・ウィークは家に引きこもって仕事していた。息抜きは動画配信の視聴という、典型的なダメ人間である。

ゴールデン・ウィークは、主に「ブラックリスト」(The Blacklist)を見た。始まったのは2013年で、最初のほうはずいぶん前に一度見ていたのだが、最近のシーズンを見たのは初めてだ。

主人公は「犯罪界のコンシェルジュ」(笑)ことレイモンド・レディントン、通称レッド。もとは米海軍でエリート街道を驀進していたが、国家機密を売り渡して道を踏み外し逃亡、他の犯罪者に様々なサービスや便宜を提供して一大犯罪帝国を築き、20年に渡ってFBIの最重要指名手配犯リスト入りしていた、という設定だ。なお、流石に恥ずかしくなったのか、後のシーズンではあまりコンシェルジュとは言わなくなったようだ。

それはともかく、このレッドが突然FBIに投降し、免責と引き換えに極秘裏に情報提供。彼が持つ「ブラックリスト」以外では存在すら知られていない大物犯罪者をFBIの特別チームと組んで次々と滅ぼしていく。もちろんレッドは慈善事業をしているわけではなく、彼の過去と関わる個人的な事情というか利害が絡んでいるのだが、そこに自ら指名して連絡係とした新米FBI捜査官、エリザベス・キーンとの関係が絡んできて…というのが話の大筋である。

当初のアイデアは「羊たちの沈黙」をひとひねりして「ペリカン文書」をまぶした程度のものなのだが、ふんだんにお金をつぎ込んでいるのか、脚本も俳優も演出も実に質が高い。まあ、若干あざとさが目立つのだが、こういうのはどうせなら徹底的にやってくれたほうが楽しめますね。○○実は××、というどんでん返しを連続させるのは、なんとなく歌舞伎を思わせるところがある。

アメリカのドラマは、生体心臓移植よろしく割と平気で主役を入れ替えたりするので驚かされるが、この「ブラックリスト」は、主役のレッドを演じるジェームズ・スペイダー抜きには考えられないだろう。若い頃は青春映画の悪役、その後ソダーバーグの映画「セックスと嘘とビデオテープ」でカンヌの男優賞を取ったり、あるいはテレビドラマ「ボストン・リーガル」でエミー賞を取ったりと長く活躍してきた人らしいが、とにかく得体の知れない変人を演じさせたら天下一品で、レッドはまさにはまり役、当人も楽しげに演じている。シーズンによって体重の増減が激しいのはご愛敬。

相方のエリザベスを演じるメーガン・ブーンは、別のドラマ「ブルーブラッド」で主役の刑事ダニーの相棒マックになったのもつかの間、2話だけ出て何の説明もなく消えてしまい、どうしたのかなと思ったらこちらでFBI捜査官になっていた。ブーン演じるエリザベスの夫トムを演じていたライアン・エッゴールドも、こちらで死んだらすぐさま別のドラマ「ニュー・アムステルダム」の主役の熱血医師に転生していて、まあ別にいいんですけど、効率第一義理第二という感じではある。

個人的には、結局アメリカのドラマは第一シーズン、極端に言えば第一話(パイロット)だけ見れば良いと思っているのだが(パイロット次第で発注元がゴーサインを出すかどうか決まるので、とにかくパイロットにはリキが入っている)、「ブラックリスト」もそんなところはあり、当初のディープステート、じゃなかった「結社」が絡むストーリーラインは第三シーズンあたりで終わってしまうので、その後はややプロットの推進力が落ちている。それでもどうにか話を持たせているのはスペイダー演じるレッドの怪しさというかキャラ力だけなのだが、あともう一、二シーズンくらいは楽しめるかなあ。

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