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「Loudermilk」はおもしろい

日本で話題になっているのをあまり見たことがないが、Loudermilkはなかなか面白い。Amazonプライムビデオに入っていて「ラウダーミルクの人生やり直し手伝います」という邦題がついているが、甘口のハートウォーミングな話を期待すると裏切られると思う。まあ、ある意味ハートウォーミングな話ではあるのだが。「メリーに首ったけ」などで知られるファレリー兄弟の片割れピーター・ファレリーと、「コルベア・レポート」のボビー・モートがプロデュース。

シアトルに暮らす主人公のサム・ラウダーミルクは、かつてはローリングストーン誌のような一流どころにも書いていたくらいの音楽ライターで著書もあるのだが、アル中になって身を持ち崩し、今は本業が用務員、副業で同じアル中や薬物依存症の連中向けのカウンセラー(AAミーティングが下敷きと思われる)をやっている。こう書くと社会派的に真面目な話を想像するかもしれないが、シニカルで大変口が悪い中年男のラウダーミルク(二枚目俳優のロイ・リヴィングストンが好演)をはじめ、ラウダーミルクの同居人ベン、ミーティングの場所を貸している教会の牧師ファーザー・マイク、ミーティングに来る連中、全員一癖あって面白い。ラウダーミルクに関してはなんだろうな、はてなブログとかにいっぱいいるよねこういう人。

特に優れているのがメインの女性陣二人で、いろいろあってラウダーミルクの家に転がり込むジャンキー少女クレアを演じるアンニャ・サヴィッチがまず素晴らしい。最初はどうしようもないアル中で、脂が浮いていそうなメイクまでしていてまことに汚らしいのが、回復するにつれてだんだん人の良さや内面の強さが表に出てきて、最後はいろいろあっておかしくなったラウダーミルクを叱咤するに至る。かわいい上に演技もうまくて驚かされるが、聞けば実世界でバンクーバーの新聞にThe Whoなどの音楽評を書いているのはサヴィッチのほうらしく、これまた呆れる。

もう一人のローラ・メネルは様々なSFものでヒロインをやっていた人だが、ラウダーミルクやクレアに振り回される善良で透明感のある美人アリソンをうまく演じている。外はトゲトゲしているが内はマシュマロ並みに柔らかいラウダーミルクは彼女に惹かれているのだが、最終話になって勝負に出る。あまり細かいことを言うと興ざめなので書かないが、この場面はラウダーミルク一世一代の啖呵という感じで素晴らしく、この一瞬のためにシーズン1の全10話があるというくらいのものである。あまりにも鮮やかなエンディングなのでこれで終わりなのかと思っていたら、本国ではシーズン2はもとよりシーズン3まで更新されたとかで、日本のAmazonではシーズン1しかまだ見られないのだが、この後どういう話に持って行ったのか興味津々だ。

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