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「The Kominsky Method/コミンスキー・メソッド」はおもしろい

Netflixで配信されている「コミンスキー・メソッド」はなかなか面白い。これもあまり日本では話題になっていないが、佳品だと思う。

俳優のサンディ・コミンスキーは、高齢になった今は演技指導塾を経営し、俳優の卵たちを指導して生計を立てている。かつてそれなりに脚光を浴びたこともあるサンディだが、その後はあまりぱっとせず、今では端役やCMの仕事もままならない。サンディの長年の友人であるノーマン・ニューランダーは、ハリウッドで大成功を収めたエージェントで、豪邸もあるし生活自体に不安はないのだが、仕事はほぼ引退で、長年連れ添った妻を亡くし、薬物中毒の娘との関係もうまくいっていない。この二人が、老いや体の不調、財政難、新たな恋など様々なトラブルやらなにやらに直面してもがく有様をコミカルに描いたコメディである。

ようはサンディ役のマイケル・ダグラス(75歳)、ノーマン役のアラン・アーキン(86歳)という高齢じじい二人のバディもので、彼らのかけあいを軸に話が進行するのだが、やはりどちらも芸達者で安心して見られる。ダグラスはさすがに私でも知っていたものの、アーキンは不見識で全く知らなかったのだが、調べてみたらアカデミー賞など主要な賞は大体取っている大物俳優のようだ。矍鑠とはしているもののさすがに80代後半なので、ぶっきらぼうな物言いや所作がどこまで演技なのかよく分からないくらいなのだが、突然キレたり色気も見せたりといろいろな意味でまだ枯れていないところを示し、良い味わいを出している。晩年の森繁久弥を思いだした。

ダグラス演じるサンディも、年齢の割に若作りしていてバイアグラも飲んでいるし(笑)、これまたまだまだ枯れていないのだが、老いのわびしさも十分に表現していて、確かに一時代を築いた名優だけのことはある。ダグラスもアーキンも、無意味な大御所感なく一俳優として全力投球している感じが素晴らしい。ダグラスは声も渋くていいですね。

その他、サンディのしっかり者の娘ミンディを演じるサラ・ベイカー、ノーマンの(50年前の)元カノとして登場するジェーン・シーモア(ドクター・クイン!子供のころNHKで見ていたが相変わらずお美しい)に加え、サンディの元妻を演じるキャスリーン・ターナーや、全くどうでも良い役で出てきておいしいところを全部持って行くダニー・デビートやボブ・オデンカークと、チョイ役も芸達者ばかりでうれしい。

うまいのは彼らだけではなく、サンディの演技塾の生徒たちを演じる若手の連中が凄腕で、ヘタクソな演技、半素人のそこそこうまい演技、ヘタクソな役者の一世一代の名演技といった具合に的確に演じ分けていてたまげる。ハリウッドの人材の厚みを感じる瞬間だ。

プロデューサーはチャック・ローリで、昔だと「ダーマ&グレッグ」や「チャーリー・シーンのハーパー★ボーイズ(Two and a Half Men)」、最近はおそらく「ビッグ・バン・セオリー」で知られている人だ。巧みなプロットと適度な下品さが特長で、さすがキング・オブ・シットコム(コメディドラマ)と言われるだけのことはあるなと思った。

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