ファンを作る社内ラジオ
エムハンドでは社内広報の取り組みとして、社内ラジオ『M-Radio(エムラジオ)』を配信しています。「まずはやってみよう」と手探りで始めた企画でしたが、ラジオを制作する人と聴く人、双方の立場から多くの社員の皆様に協力いただき、軌道に乗り始めたように感じます。「聴いてます」「楽しみにしています」といったリスナーからの声を制作側の人間として実際に聴くことができるようになったからです。
今回は企画・構成・収録・社内広報の視点から、M-Radioの制作プロジェクトを紹介します。これから社内ラジオを始めてみようと考えている方にとっての参考になれば幸いです。
M-Radioの企画
M-Radioの目的
M-Radioは主に2つの目的で企画しました。
さらに、この2つの目的は以下のように分類しています。
なぜラジオなのか
では、なぜラジオという媒体を選んだのか。実は「社員を知る機会」としては、M-Radioの企画前からすでに社内では【リモートランチ会】というイベントを開催していました。一定数の参加が見込めるほどに社内に根付いたイベントです。
一方で、やはり課題もありました。エムハンドはフレックスタイム制のため昼休みに定時という概念がなく、リモートランチ会の参加にはかなり能動的な意思が必要です。参加しない・参加できない社員も多くいました。そこで、ラジオです。音楽やラジオを聴きながらの勤務は許可されています。収録番組にすれば、「いま聴かなくてはならない!」という時間の縛りはありません。
M-Radioの概要
2つの目的を踏まえて、M-Radioの概要を以下のように定めました。
M-Radioのコンセプト「楽しむこと」について
この「楽しむこと」は、M-Radioにとって非常に重要です。番組の制作からリリースまで、すべてのフェーズで「楽しむこと」を意識しています。
目的を果たすために必要なのが「楽しむこと」
M-Radioの目的を振り返ります。
では「毎回異なるゲストの社員を迎えてトークする」だけのラジオを制作して、果たしてリスナーを獲得できるのか。できるとは思います。しかし、そのゲストに興味関心が極めて高いリスナーに限られます。別のゲストになると聴いてもらえません。
そこで必要になるのが、リスナーに楽しんでもらうことです。M-Radioのファンになってもらい、社員を知ってもらう。その果てに、組織市民行動の重要性・必要性を少しでも感じてもらうことができれば良い。そして、リスナーに楽しんでもらうために必要なのがコンセプトとして掲げた「楽しむこと」です。番組の出演者が楽しんでいる様子を聴いて、リスナーもまた楽しさを感じます。
M-Radioの構成
M-Radioは先日第23回を配信しました。番組内容を大きく変えたタイミングを<シーズン>の区切りとして、現在のM-Radioはシーズン3です。各シーズンの構成と構成意図、所感をまとめました。
シーズン1(第1回~5回)の構成
・オープニング、ゲスト社員の紹介
番組が始まると「それでは早速~」とゲストを紹介します。ゲストは自分の経歴や現在の業務内容を話します。
・おすすめの〇〇、エンディング
ゲストが「おすすめの〇〇」を紹介していきます。ゲストが話し、パーソナリティA・Bがリアクションをします。最後に「<ゲスト>さん、ありがとうございました!」と、簡単なあいさつをしてエンディングを迎えます。
シーズン1を終えての所感
台本は必要
台本がないラジオはパーソナリティとゲストのトーク力に依存します。ある程度の緊張も伴います。ハードルを低くするためには台本が必要です。
おすすめの紹介は、人の紹介ではなくなることがある
ゲスト社員を紹介したいはずが、おすすめの紹介コーナーになってしまう、ということです。この場合、人に焦点を当てて話を深堀りすると解消されます。「なぜ」そのおすすめを紹介してくれるのか、おすすめの「どんなところ」が好きなのか、といったイメージです。
リスナーとの距離が遠い
開始当初のため、残念ながら社内の関心は高いとはいえませんでした。しかし、リスナーあってのラジオ。できるだけ関心を持ってもらいたい。なにかしらの形でリスナーが関われるような企画を考えることにしました。
シーズン2(第6回~20回)の構成
・オープニング
定型の挨拶は番組のメリハリに必要です。パーソナリティの紹介も兼ねた以下の内容にしました。
・ゲストの紹介
進行役のパーソナリティAがゲストのプロフィールを紹介して、話題も提起します。ゲストが答えて、パーソナリティBがさらに話題を提起していくと会話のリズムが生まれます。以下のイメージです。
・ゲストへのメッセージ紹介
メッセージは以下の2パターンを設けました。
・ゲストが話したいトピック
おすすめの〇〇、最近のニュース、推したいことなど、方向性はシーズン1と同じです。シーズン2からは紹介してもらう内容をできるだけ限定しました。以下のようなイメージです。
・エンディング
ゲストがリスナーにメッセージを伝え、パーソナリティの定型のあいさつで終わります。以下のような流れにしました。
シーズン2を終えての所感
パーソナリティの役割は事前に決めておくべき
出演者が二人以上の場合、その掛け合いは重要です。「進行役」「リアクション役」をパーソナリティAとBに振り分けると掛け合いが安定します。
メッセージの募集は難しい
現在も苦労しています。ヘビーリスナーであっても、仕事をしつつ、メッセージ内容を考えて、文章を作って送る、という行動はハードルが高いです。
ゲストの紹介のみに留めた構成には限界がある
ゲスト社員への依存度が高いということです。ゲストに考えてもらうトピックの内容、ゲストとパーソナリティとの関係性、ゲストとリスナーとの関係性…ゲスト頼みの番組になってしまいます。継続性が低い構成です。
綿密な台本は番組出演のハードルを下げる
綿密な台本を用意することで、出演者は「基本はこれを読めばいいんだ」と安心して参加できます。
シーズン3(第21回~現在)の構成
・オープニング
パーソナリティAは固定し、Bに限ってはゲスト枠として毎回交代することにしました。Bを迎える構成のため、オープニングはAだけの短いトークです。定型のあいさつは以下のようにしています。
・ゲストパーソナリティの紹介
シーズン2のゲストの紹介と同じ内容です。プロフィールの紹介と直近の仕事について軽く質問をします。
・リスナーからのメッセージ紹介
パーソナリティAがリスナーからのメッセージを紹介し、パーソナリティAとBがリアクションをします。すべてAが起点です。以下のような流れです。
・ゲストの紹介、トーク
「ゲストパーソナリティが話したい人」をテーマにゲストを迎えています。ゲストのプロフィールを紹介し、直近の仕事について軽く質問をします。ゲストパーソナリティとの仕事上での関わりも尋ねます。トーク内容も「ゲストパーソナリティが、ゲストと話したいこと」にしました。進行はパーソナリティAが務めますが、中心はBとゲストです。この場合の聞き役はAです。以下のような流れで始めていきます。
・エンディング
ゲストとゲストパーソナリティがそれぞれリスナーにメッセージを伝えて、パーソナリティAの定型の挨拶で終わりです。
現在の所感
メッセージが少しずつ投稿されるようになってきた
以前は数回の社内広報の後、個人間で投稿をお願いしていました。しかし直近では一度の社内広報でメッセージが投稿されました。シーズン2に比べて投稿ハードルは下がっていると考えています。
メッセージテーマはリスナー視点で決めるべき
「このテーマであれば、面白いメッセージが集まるのではないか」という期待は易々と叶いません。リスナーにとってメッセージの投稿はハードルが高いです。テーマは以下のようなリスナーが思いつきやすい、投稿しやすい内容にするべきです。
・思いつきやすい:日常で体験する頻度が高い、体験する可能性が高い
・投稿しやすい:恥ずかしくない
M-Radioの収録
続いて収録までの流れと、各フェーズで重要だと感じたポイントを紹介します。
収録までの流れ
➊ゲストパーソナリティの選定
直近で出演した社員の属性を加味して選定します。できるだけ部署が偏らないようにしています。
➋ゲストの選定
「ゲストパーソナリティが話したい」を優先します。そのため、候補の選定は基本的にゲストパーソナリティに任せています。
➌トーク内容のすり合わせ
ゲストコーナーのトーク内容をすり合わせし、内容の大枠を固めます。
トークテーマ例:「ゲストの前向きさの秘訣!」
➍台本の作成
台本を作成していきます。遅くとも収録の前日には校了し、出演者に共有します。
➎収録前のすり合わせ
番組の大まかな流れを確認します。
➏収録・編集
収録し、編集します。
M-Radioの社内広報
最後にM-Radioに関する社内広報の手法とポイントです。
M-Radioのリリース
リリースの流れ
M-Radioは二段階のリリースをしています。
・リリース第一弾:社内チャットによる文章
全社員に対して社内チャットでリリースします。
・リリース第二弾:終礼での口頭
エムハンドでは毎日17時から終礼を開催しています。社員全員が参加する10分程度のMTGです。8つのチームを4枠に分けて開催し、1週間で総当たりするように組まれています。M-Radioが社内チャットでリリースされた後、この終礼で再度口頭によるリリースをします。
・リリース後の拡散:口コミの重要性
「聴いた」「面白かった」という感想は、まだ聴いていない人が、聴いてみようとすることの動機になりえます。口コミを拡散してもらうよう、常に社内に呼びかけています。
リスナーへのメッセージ募集
メッセージ募集のリリース方法
ラジオのリリース同様に、文章と口頭で募集を呼びかけています。
メッセージの投稿方法
Googleフォームを使用しています。記載項目はラジオネームとメッセージのみです。「気軽に投稿できる」ことを優先しています。
おわりに
社内ラジオの制作は「社員がどのように感じるか、どのように動くのか」の想像と実証の追求だと考えます。どのように打診すれば、社員は出演を承諾してくれるのか。どのような構成にすれば、社員は楽しんでくれるのか。どのような広報をすれば、社員はラジオに注目してくれるのか。そして、どのようなラジオにすれば、目的を果たすことができるのか。
業務の一環として社内ラジオを制作する以上、なにかしらの目的があると思います。その目的は、おそらく数回程度の配信では果たせません。まずは継続です。そして制作する側にとっての継続のなによりの原動力は、やはり「聴いてもらう」ことです。リスナーの獲得、ひいてはファンの獲得が社内ラジオに必要なことだと思います。ぜひ聴く側の視点を大事にしてください。
<おまけ>M-Radioで今後予定している企画
・ラジオCM
社内でCM料を徴収するわけにはいきませんので、正確には「告知枠」です。月1回の配信に合う社内告知。「全社員が対象の、月次の、必須業務のリマインド」が理想です。
・オンライン公開収録
現在は残念ながら需要は一切ありません。まずはM-Radioのファンを獲得していく必要があります。より楽しい番組にするため、ブラッシュアップを続けていきます。