【デザイン史】欧文書体の歴史を学ぶ
みなさん、こんにちは。はまです。
デザイナーとしてロジカルに入社して、2年目に突入しました。早過ぎです。
入社して1年目の時に、
弊社公式ブログにて、下記の記事を書かせていただきました。
https://logical-studio.com/develop/web/design/20201023-typeface-history/
月日はあっという間に経ちましたが、今もなおこの職業への憧れ、そして書体へのロマンが尽きることはありません。大きな服屋さんに行ったらば、お洋服より何よりまず「あ、この服屋さんのロゴは一見DIN寄りに見えるけどちょっと違う、Oの部分にちょっと装飾加えることによってオリジナリティを出している。なるほど〜〜〜」と感嘆するし、誰かが書く綺麗な文字を見たら「こういうフォントがあったら良いのに」と思うし、誰かの綺麗な声を聞いたときは「この人がもし漫画の登場人物なら台詞のフォントはきっとしっぽり明朝かなぁ」とかたまに考えるし、歴史ある欧文書体と最近出てきた変わった形の和文書体がうまくマッチした時はテンションめちゃくちゃ上がったりもしていました(いいから服を買え)
----------------
今や歴史あるものからフリーのフォントまで、書体は実に様々なものがあります。「欧文 フリーフォント」で検索をかけようものなら時間なんてあっという間。同じ言葉でも書体が違えば、雰囲気が全く異なります。
この書体達のことをもっと知り、それぞれ必要な時にちゃんと使うために、色々調べてみることにしました。
今回は特に、アルファベットを扱う「欧文書体」たちの歴史について、改めて、noteでも、ご紹介したいと思います。いざ、5000年前までタイムスリップ!
アルファベットの歴史
文字の歴史は約5000年にわたり、象形文字や楔形文字が起源とされています。ヒエログリフ、漢字、ラテンアルファベットなど、何に書くか、何で書くかで形態が変化してきました。特にアルファベットは最初小文字がなく、必要に応じて追加され、今の文字数になりました。
今から2000年前、ローマ皇帝のトラヤヌスは、戦勝記念柱の土台に碑文を刻みます。その碑文を参考に作られた「trajan(トレイジャン)」は、今も使用されています。
Trajan(トレイジャン)は、「タイタニック」「ハムナプトラ」のタイトルに使用されています。(小文字がない書体で、RやJの形が特徴的です)
その昔、印刷技術がない時代は写本がなされていました。
聖書の写本をする写字生は、ただ文字を写すだけでなく、何か目立たせるための工夫を始めます。
文中を模様で埋めてみる(8世紀頃)
文頭にある大文字に装飾をつけてみる(12世紀頃)
この「埋める」「飾る」表現は、狩の時代からされていたと言われ、洞窟画や壁画、ヒエログリフなどに残っています。そもそも人間には隙間があると「何かしらでなんか埋めたくなっちゃう」「ちょっと凝っちゃう」欲があるみたいです。
写本装飾のことをイルミネーション(輝かせるもの)と呼び、写本装飾家のことをイルミネーターと呼びます。写本装飾には金泥や金箔・銀箔が使われ、細密で美しい文様は鮮やかな色彩で彩られ、まさに輝くほどの美しさでした。
ちなみに、アルファベットのJは、「Iesus」のIを装飾したことから生まれたと言われています。Jesus!
日本では9世紀に漢字を崩したひらがな・カタカナが生まれます。
半紙の端っこにささっと和歌を散らし書きするなど、紙全体を埋めるのとはまた別の表現がされていました。いとをかし。
15世紀. 活版印刷開始、書体登場
1450年にグーテンベルクが活版印刷技術を開発します。
このとき改めて、「紙の節約と効率化のために、なんの書体にしようかな?」という考えが生まれます。写本時代にもその問題はありましたが、何しろ手で書くために、解決できなかったと言われています。
その時は、手書きの風味を残したブラックレター体が用いられました。これが最初の書体(タイプフェイス)です。
中世の世界観が感じられる書体で、今も根強いファンがいます。
ブラックレター体が用いられたグーテンベルクの聖書です。文字がぎっしり埋められており、文字の装飾も見られます。
高価な紙をうまく使うために、ヨーロッパではこの時、1ページにどのように文字や要素を収めるかの考えが生まれました。レイアウトの始まりです。
しかし、ブラックレター体ではどうしても文字が潰れてしまうことから、この後セリフ体が登場します。
Centaur(セントール)は1470年に制作された伝統的なセリフ体です。線のメリハリが少なく、斜めに傾いているのが特徴です。
jenson(ジェンソン)は、ピクサーのロゴの一部に使われています。
Garamond(ギャラモン)(1431)は、ヨーロッパ中に流行し、フランスの公書体になりました。
これらセリフ体は、今後18世紀から19世紀にかけて、様々なスタイルを確立していきます。
19世紀. 産業革命、サンセリフの登場
18世紀半ばから始まった産業革命は、書体を取り巻く環境を大きく変えました。
ベルトコンベア・システムにより労働が単純化され、「時は金なり」という言葉も生まれる・
技術開発が進み、これまで職人が作ってきたものが機械で作られた単純なものに変わる。
これに対し、ウィリアム・モリスらが「アーツ・アンド・クラフツ運動」を提唱。(ものづくりの考えをもう一度見直そうよ!というこの運動から、デザインの考えが生まれました)
チューブ絵具が開発され、外で絵が描かれるようになりました
(のちの印象派です)
この頃日本はまだまだ、鎖国中です。
「Time is money!効率化!」の考えは書体にも影響を及ぼします。
この時、イタリアでBodoni(ボド二)、フランスでDidot(ディド)が生まれました。
Bodoni(ボド二)は、縦画と横画のコントラストが特徴です。
Didot(ディド)は、VOGUEのタイトルに使われています。
メリハリの聞いた書体は、埋めなくても紙面にインパクトをもたらし、これまでの「埋める」レイアウトから一転、余白の考えが生まれたと言われています。
Clarendon(クラレンドン)は、SONYのロゴに使用されています。
これよりも効率を求めた書体が、サンセリフ体です。
サンセリフ体のはじまりは、1816年にウィリアムス・キャズロン四世によって発表された、“2ラインズ・イングリッシュ・エジプシャン”といわれています。
当時は新しいという意味合いで「グロテスク」と呼ばれていました。
凝った書体が多い中で、サンセリフ体は最初流行らなかったそうですが、後々様々な場面で活躍していきます。
ちなみに、サンセリフ体が日本で使われ始めたのは、明治時代後半の20世紀初め頃。当時はゴチックと呼ばれ、手描きで太く書かれていました。
20世紀〜現代.サンセリフ、デジタルフォントの発達
20世紀になると、デザイナーと言う仕事が独立し始めます。
文字の重要度もさらに増加し、映画ポスターの中などで文字が占める割合が多くなります。今に通じる書体が多く作られます。
ドイツでは、デザイン学校バウハウスの影響で幾何学的な書体が多くつくられました。
1925年頃からサンセリフ体がヨーロッパで主流になります。
1927年にはパウル・レンナーにより、Futura(フーツラ)がデザインされ、同年にはルドルフ・コッホによりKabel(カーベル)が発表されています。
日本では東京オリンピックのポスターデザインなどで、グラフィックデザインが開花し、その後「POPEYE」創刊をきっかけに、アルファベットを表記した誌面が次々創刊されるようになりました。
また、1980年頃からコンピュータでの製作が増え、表現の自由度が高まります。
また、デジタルフォントの流通から、スクリプト体や、バリアブルフォントが生まれました。
Futura(フーツラ)は、アポロ11号の銘板に使用されました。幾何学的な形が特徴です。
DIN(ディン)は、オリンピックのエンブレムにも使われました。
TimesNewRoman(タイムズニューローマン)は、ロンドンのタイムス誌が考案しました。多くのパソコンに標準インストールされています。
1950にはスイススタイルが流行し、Helvetica(ヘルベチカ)が生まれました。
パナソニック・ポストイットなどのロゴ書体に使われています。
バリアブルフォントは、スライダーを動かすことで大きさや太さを変更できます。2016年にオンライン用として発表され、IIlustratorはCC2018から使用できるようになりました。
まとめ
書体の歴史には、レイアウトやロゴ、開発側の意見、文化の変化など、複数の要素が複雑に絡み合っています。見た目の美しさ、読みやすさだけでなく、紙は節約できるか、大量生産に適しているか・・・など、開発側の意見が大きく関わったことが印象的です。
今後、セリフ体、サンセリフ体の詳細や、和文フォントについてなども、もっと勉強していきたいです!!
参考とおすすめ本
今回のブログにはこちらの書籍とブログを参考にしました。ぜひ読んでみてください!
となりのヘルベチカ(芦谷國一著)
デザインってなんだろ?(松田行正著)
欧文タイポグラフィ入門(アンドリュー・ポセケリ著)
5分で学ぶフォントの歴史500年|時代背景とタイポグラフィ|SMARTCAMP DEXIGN|
フォントから歴史と知識を学ぶこと | Swings
欧文書体の基本的な歴史と知識から学ぶことサンセリフ体編 | Swings
読んでいただき、ありがとうございました。
好きなフォントは GillSansです。はまでした。
弊社公式ブログでも社員がそれぞれ、たくさんの記事を掲載しております。
ぜひご覧くださいませ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?