#はまは考える #1 「真面目」について
「真面目」
1 うそやいいかげんなところがなく、真剣であること。本気であること。また、そのさま。「真面目な顔」「真面目に話をする」
2 真心のあること。誠実であること。また、そのさま。「真面目な人柄」「真面目に暮らす」
真面目と言われ、生きてきました。
私にとって「真面目」とは、褒め言葉でも何でもなく、後づけされたものでも、誰かに諭されたわけでもなく、ただただ元からそこにあったものです。鉄棒の逆上がりも、算数の宿題も、何事もそもそも一生懸命やらないと、私には出来ないことが多すぎたためです。
「真面目」というものはその昔、こと創作においては、破天荒なものと対比して描かれることが多かったように思います。勤勉で弁は立ちますが、ひと昔前の持論を押し付けたり、元からあった価値観を挙げて「アリエナイ」と言ってみたり、次々新しいことを始める破天荒の前では、かたぶつで融通が効かず、冗談の通じない、なんだかつまんなさそうな、そんな奴のように描かれます。最終的に彼らは、仲間を増やす破天荒の側で孤立し、挙句膝を折って、今度は自分が破天荒な真似をし出すのです。
私はいつしか、そうして「真面目」と言われることが、なんだか「お前はつまらない奴だな」と言われているように感じて、「そんなことはない」「そうじゃない」「私は真面目ではない」などと、周りに話すようになりました。
高校になったある日、化学のテストで言えないような点数を取った私は、誰にも言わずにこっそり参考書を買いに行きました。
その時に、一冊の参考書に出会いました。
わからなくて、周りはできても自分はできなくって、悔しくて、正直今はもうやりたくない。そんな気持ちにその参考書は、とてもわかりやすく、やさしく、問題の解き方を教えてくれました。
「この本を手に取った人は、もう化学なんかやりたくない、と思っているかもしれない。でも、出来るようになりたい。とも思っていると思う。だったら、きっとだいじょうぶ。もう一度だけ、やってみようよ。」
側になくても、わっと驚くようなかっこいいことが言えなくても、出来なくても、誰かの味方になることは出来るんだと思いました。
「わかりやすくて、やさしい。」
それは情報を整理し、言葉のトーンを選び、誌面を作り上げるデザインの力。そう気づいたのは、それから3年経った大学の研究室でのことでした。
あの参考書みたいに、誰かの助けになれたらいいな。きっとそうなれたら、いいなあ。と感じました。
憧れだけで飛び込んだ「デザイン」の世界は、
私が手ずから行うものとして、とても大きく、深く、遠いものでした。
このサイトを使う人は誰か。その人の仕事は何か。暮らしはどうか。何が好きで、何を見て過ごしているか。何が便利だと感じるか。見てきたもの、聞いてきたもの、使ってきたもの。慣れ親しんで、好きだと思ってきたもの、文化、歴史。暮らし。記憶。
私ひとりが考えつくものや、想像するものではとてもとても足りず、自分が、何も、何も知らないことに気づきました。大事にしてきた自分の価値観が、さして大したものでないことも知りました。
「デザイン」には正解は無い。という言葉は有名ですが、「なんか違うな」は確実にあります。「なんか違う」「なんか納得できない」「あっちの方が良いかも」も常にあります。
それらが重なるうちに、自分をとても信じられず、でもなんとかその中で「自分なりの答え」を出さなくては。と思ってそうして出した「答え」も、「答え」になっていなかったり。
そんなとき、「真面目」という言葉は、私の不甲斐なさをうまく隠しました。「真面目なんだけどね」「真面目だから」。自分の本質が、今になって浮き彫りになりました。「もしも、真面目じゃなかったらどうなるのか?」「真面目だったら何でも良いのか」「真面目にやって、できなかったら?」
私はそのとき、知りました。
真面目じゃない。というのは嘘だ。
私は、きっと真面目にすらなれていない。それすらおこがましい。
誰かのために、ものを作ることは、難しい。
でも、ひとり自分のために作るものよりも、ずっと、得られるものがあります。
こういうものが欲しいという依頼書を見るとき。こういうものが作りたいんだよね、と誰かが話しているのを聞くとき。この人にはきっと、わたしには見えないものが見えている。
それに少しでも近づきたくて、あれこれ、こんな感じかな。こんな感じかな。と考えるのは楽しい。そうして、もし作れた時に「こういうのです!」と喜んでいただけるのは嬉しい。自分は、かけがえのないことをさせていただいているんだな、と日々思っています。
社会に出て、AかBかで決まらない問題にいくつも当たって、その中で、誰かの話す言葉の意味や発した意図が、少しずつ判るようになって、それぞれ大切にしているものが、少しずつ見えてくる。
自分の事しか見えてない中で、教えていただいたこと、もらった言葉を、味がしなくなるまで噛み締めた。私にとっては、今年は大切な大切な、かけがえのない1年でした。
また、春が来ようとしています。
最近は、会社説明会を通じて、私と同じようにデザイナーになりたいという学生さんに逢うことも増えました。
「なぜデザイナーになろうと思ったのですか」
「仕事していて、どんな時が辛いですか」
「どんな時が楽しいですか」
「美術大学じゃなくてもデザイナーになれますか」
「僕でも」「私でも」「デザイナーになれますか」
「デザイナーです。」と堂々と言えるか。私も日々、勉強の身です。
そしてまた、いつか、わたしは、自分の「真面目」を取り戻したい。そうして、少しでも活かしていけるようになりたい。そうして、周りの方に、必要とされるようになりたい。人より、うまく出来ないことは沢山ありますが、一歩ずつ、これからも進んでいきたいと思います。
読んでいただき、ありがとうございました。
デザイナーのはまです。よろしくお願いいたします。
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次回は、同期のそーまが書いてくれます。
そーまは素敵で、周りに明るい、良い雰囲気をもたらしてくれて、私はそれに照らされて、いつもとても助かっています。
タイトルは「ご挨拶と伝えたいこと」です。お楽しみに。
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