私は西園寺さん家に住みたい

ドラマ「西園寺さんは家事をしない」を見ている。

松本若菜さん演じるバリキャリ西園寺さんと松村北斗くん演じる訳ありシンパパ楠見くんのハートフルラブコメディだ。

楠見くんの娘ルカ役の倉田エマちゃんは本当に可愛い。「何が欲しい?何でも買ってあげる」おばさんbotムーブをかましそうな程可愛い。
私含め大半の視聴者は毎週心臓叩きながら見てると思う。

そんな中もう一つこのドラマを見て思う。

西園寺さんが購入した一軒家が羨ましいと。

西園寺さんは家事が「出来ない」ではなく「しない」という大胆な発想の持ち主。そのためになるべく家事を減らした設計の一軒家を買い、家事代行を雇い、多少の埃は見ないフリ。実に効率よく素晴らしい生活だ。

栄枯衰退これだけの歴史を辿っていれば、家事など私が生まれる前に消滅しててもおかしくないと思うのだが、奴らの勢力は凄まじく一向に衰える気配はない。
人間と屍のハーフであるこの私でも湧いて出てくる家事という名のセルフサービス労働。
セルフサービスというのはリーズナブルなお店にあるからこそ真価を発揮する言葉であるのに。

幼い頃は誰しも親にお手伝いと称して家事をした経験があるだろう。今なら家事代行というサービスが立派な仕事として確立されている。あの時無知が故に無償で請け負ったことを悔やむばかりだ。

ところで、西園寺さんと比べて私の家事事情はどうだろうか。
私の家は親戚から譲り受けた立派なボロ家だ。
駅近で住みやすい。屋根がある以上の贅沢を言うつもりはないのでありがたく住み着いている。

ロボット掃除機は今や時短家事に欠かせないアイテム。
ふと見た足の裏に縮れ毛ご対面のサプライズとおさらばとは、なんと理想的で素晴らしい文明の力であるか。
しかし家にはない、というかおけない。なぜなら敷居が3.5cm以上あるからだ。
物理的に敷居が高いとは何という皮肉。

住人でさえつまづくのだからこれを乗り越えてくれる円盤はなかなかない。
解決案を議論した際は、スロープを設置するか部屋ごとに人力移動する2つの案が浮上した。
こうなるともはや要介護のロボット掃除機だ。便利を買うつもりが介護を強いられてしまっては老老介護もいいところである。よって不必要という結論に至った。

次に洗濯はどうだ。
西園寺さんはドラム式洗濯機で必要な時に直接取り出す一石二鳥スタイル。
私の場合、ドラム式なんて置いたら洗濯物が取り出せない。とにかく洗濯機を置くスペースが小さい。家電量販店でスペースはこのくらいですと言ったら店の中の洗濯機で一番コンパクトな製品を提案されたほどだ。
あぁドラム式。あの外国のコインランドリーみたいな見た目のおしゃれフォルムに憧れる日々。

そしてもう一つ。これに関しては家電というよりも家事そのもののシステムに問題があると言える。
とにかく乾燥機NG衣類の多いこと。そして洗い方、干し方、洗剤の成分など細かいHOW TOが細かくタグに刻まれている。

うちは速い安い美味いが売りの街中華屋スタイルなので、いちいちスタバの呪文カスタムなど聞いていられない。外出着以外は問答無用で乾燥機行きだ。
ちなみにうちのおばあちゃんは、外干しで乾かぬ洗濯物は炬燵に突っ込むストロングスタイルであった。
一族の冬の風物詩である。

そもそも、何故家電の為にこちら側が配慮しなければならないのか。空気清浄機やエアコンを買えば取説には適切な位置に配置してやりなさいとあるし、何かにつけて点検に付属品にフィルター交換。気付けば年末の大掃除でまた同じ事をする始末。
お掃除機能で少しは楽になるかと思えば、奴らはゴミ捨てというものを知らない。
結局人間がゴミや埃をかき集めることになる。私達の家事はケツ拭きと言っても過言ではない。何という屈辱だろう。
機能の充実とボタンを複雑化させる前に、置かれた場所で咲きなさいと残したマザーテレサの名言を叩き込むべきだ。

ついでに言っておくがAIが搭載されている家電、アレの費用対効果を説明できるやつはいるか?
うちの加湿空気清浄機や冷蔵庫にも搭載されている。
決して大したことは言わない。それだけにやたらと恐怖を感じる。
近い将来シンギュラリティを迎え、各ご家庭のAIが暴走を始めた時、発酵物を溜め込んで自爆したり、今まで吸い込んだ大気汚染物質を撒き散らしそうではないか。

そんな事は私の被害妄想だとしても、AIを搭載するなら、オナラを検知した際には、親の仇を取るかのように唸り始めるのではなく、隣の部屋からそっとアプローチする気遣いがほしい。家主の疲労を検知して消費期限の近い順から食材を選び献立と調理と洗い物からゴミ出しまでしてほしい。

もっと欲を言えば洗濯は脱ぎ散らかしてもロボット掃除機あたりに回収してほしいし、風呂に入れば勝手に全身を洗ってドライヤーまでしてほしい。いっそのこと服も着せて貰って寝かしつけられたりしたい。

欲望は尽きないものだ。

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