人生をロストマンと歩いてきた

BUMP OF CHICKENに「ロストマン」という曲がある。
もう20年前の曲になる。
この曲を知ったのは、リリースされて比較的すぐのはずだ。
それから20年、人生をロストマンと歩いてきたような気がする。

色々な曲を聴いてきて、思い出して懐かしいことはあっても、今になっても懐かしいだけでなく、今の自分にも向けられているように感じる曲は今の所ロストマンしかない。
この曲は喪失しながら、別れながら、それでも歩むことを描いていて、これはとても普遍的なテーマだと思う。

生きている以上、人間は何かを失い続けている。
それは人間というモノが失わなければ生きていけないからで、実際私は人生で数多くのものを失ってきたし、色々なものと別れてきた。
ただ、それは痛みとか苦しみとかそういうものではなくて、生きていることの一部なんだよ、ってこの曲が歌ってくれている気がする。
間違った旅路の果てに正しさを、再会を祈って歩くことなんて、いくらでもあるし、これからもあるんだろう。
この曲に流れている諦めや悲しみが、いつでも心を揺さぶる。

この曲は、どこかに向かう旅を歌っていて、この旅はまだ自分の中では終わっていない。
恐らく死ぬまで終わらない旅になるんだろう。
とても陳腐な表現になってしまうけど、人生という旅路が続く限り、私はロストマンと共に人生を歩む事になるんだろうなあと思っている。
この曲を聴いて、失ったものがあることに反省して、歩いていく。

ところで、この曲って詩の構成がとてつもなく良いと思ってるんです。

1番ではポジティブ寄りの歌詞を続けた後にサビの後半でネガティブな言葉を歌う事で、「失った」がとてつもない威力を発揮しているように見えるんですよね。
(ポジティブに見えるのは自問自答だから、自分を守っている可能性はある)

ポジティブな言葉は「旅の始まり」「思い出せる」「選んできた道のり」
「足音」「正しさ」「祈った」
「寂しさなら忘れるさ」「繰り返す」「昇る日」みたいな感じ。
バンドサウンドの細かいところは分からないけど、1番は明らかに音が少ない。
サビでは音が多くなり、「失った」「迷子」を強調している。ような気がする。
この曲はロストマンという曲名だから、「失った」と「迷子」は重要キーワードなのは間違いない。

それで2番では音が明らかに1番より増え、ネガティブな単語ばかり。
それでも「サヨナラを叫んだ」ら「夢の設計図」になる。
ネガティブがポジティブに一気に反転する。
そこからは曲の最後までポジティブなワードが続く。

とても全てを言語化出来る気はしないんですけど、この曲ってポジティブとネガティブの言語センスがとても優れていると思うんです。

この曲は全体的にポジティブな言葉が多く使われている分、ネガティブな2番が際立つし、その他散りばめられているネガティブな単語も際立つ。
全体で見ればポジティブな曲ではあるんですけど、「ロストマン」というタイトルなので、多分そこでポジティブとネガティブのバランスを取っているんだと思うんですよね。
この曲自体は、歩みを描いた歌で、そこはポジティブネガティブもないものだからって話なんだと思ってます。

長々と書いたけど、要はロストマンはいつ聴いてもいいぞ!ってこと。それだけです。

ということで、ここで一曲。

BUMP OF CHICKEN - ロストマン




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