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"グランド・ブダペスト・ホテル"が良すぎて堪らず書き殴ったメモを晒す。


実は、映画が好きなのですが、あんまり人に言ってません。「映画好き」というには偏りがあるからです。(そう、これは保険です)

私は「映画好き」というより「自分が好きな作品がめちゃくちゃ好きなやつ」って感じなので、「好きなものを繰り返しめちゃくちゃ観まくる」タイプであり「有名所をさっぱり観ていない」タイプです。

例えばタイタニックやスターウォーズ、ロードオブザリングや、バックトゥザ・フューチャー、観てません。
(名作と言われるものは時間が経っても名作だと思うのですが、なんとなく観たことがないまま今まで来てしまいました)

なので、世間一般に言われる「映画好き」のイメージで話をできないから、あんまり映画好きを名乗らないようにしてます。

映画館で見知らぬ人たちと同じ方向を向きひとつの作品をみんなで観るという状況もすきだし、月額制の動画サービスも登録してます。

ロマンチストなので、ふらりと寄ったレンタルショップで目についた作品に一期一会を感じて観ることもあります。

えぇ、グランド・ブダペスト・ホテルと私は、そうして出会いました。

DVDのね、裏のあらすじとかを読むのも好きなのですが、「短めだし面白そうだしこれ借りよ〜」と気軽に借りて、こんなにだいすきな作品になるとは思ってなかったです。

1度観た後に、すぐ2周目を観て「この気持ちを残したい!」と思って、iPhoneのメモ帳に感想をぶわーっと書き殴りました。

書く前は「読めるレベルになれば家族のグループLINEに流しておすすめしようかな!ふんふん!」って思ってたんですけど、書き始めたらあまりの熱量の高さに自分で引いてしまい、送るのをやめてそのままメモ帳にしまっていました。

ある日Twitterのスペースで映画の話をしてる時にその話になり、私のキモキモメモを読み上げることがあったのですが、「熱量高くてキモくていいね」と言ってもらえたのと、唯一そのメモを送って読んでもらった(映画も観てくれた)私のスペシャルから「愛を感じるレビュー」と言ってもらえたので、ここで公開します。

どうか、私のキモさが海を渡り、Wes Anderson監督に決して届きませんように。
(以下、iPhoneのメモ帳より)



2014年に日本で公開された映画、グランド・ブダペスト・ホテルを先日観た。あまりにも良かったので、すごくみんなにも観てほしい!

『グランド・ブダペスト・ホテル』とは、ドイツ・アメリカ合作のドラメディ映画である。とある高級ホテルのカリスマ的コンシェルジュである初老の男と若いベルボーイの交友を描いた作品
Wikipediaのあらすじより抜粋





そんなもんじゃない!!!!!

粗筋としてはよく言ったものですね!
たしかに粗く筋道を話すとそうなるかもしれない!!

だがしかし!!!
もし私がお勧めされた側だとして、上のあらすじだけを読んで観たなるだろうか?答えはNO!!!


なので、たかがこれっぽっちのあらすじだけでは伝わらない、私が今まで観た中でもTOP5に入る最高の映画、
グランド・ブダペスト・ホテルの魅力について語りたい。

※若干のネタバレ有り。頑張って若干に留めます。


“グランド・ブダペスト・ホテル”とは、とある作家の体験を記した一冊の本のタイトル。

今は亡きその偉大な作家の胸像に、1人の少女が本を握りしめて訪れるところから物語がスタートする。



ここで是非注目して欲しいのが、この映画のアスペクト比(映像の縦横の比率)。

1回映画を全部を観た直後、あまりの良さにすぐ観た2周目でアスペクト比に気付き、衝撃を受けたと同時に腑に落ちた。

現代の、本と鍵を握りしめた少女から始まり、そこから少し遡り、著者が亡くなる前の語り、本の内容である著者が体験した当時のシーン、そこで聞かされたとある物語、と場面転換がされるのだが、あれほどの数の役者が出演しながら、演者にも時代にも混乱することがなかったのはこのアスペクト比が大きい。必見である。



そして私を惹きつけた最高ポイントが、映画全体を通した色味!!

砂糖菓子のようなパステルなブルー!ピンク!そして目の覚めるレッド!なんてビビットなエレベーター!!最高!!たまらん!!

グランド・ブダペスト・ホテルが実際に存在しているなら、“映え”るスポットとしてさぞ人が集うことだろう。(調べたら実在しなかった。悲しい!)


一瞬一瞬がとにかく計算されているのがわかる。
ひとコマひとコマを切り抜いて額に入れたい瞬間が何度もある。もう全ての瞬間がアート!

メンドルケーキの造形はさることながら、それを包む箱、手際の良さ、そして制服の可愛さ。トータルのバランスがとにかく最高。本当に最高。

悪役が悪役らしく、明らかに色味が削がれているところもわかりやすくて非常に良い。ヴィランはやはり黒が似合うのである。「こいつ悪そう〜」って思ったらだいたいそう。いい意味で期待を裏切らない。しっかり悪い。



豪華絢爛なホテルのセットに魅力的なカメラワーク、アニメーションなような演出、内容はシリアス、それを感じさせないテンポの良さ、不意に現れる毒っぽいグロテスク、ドキドキハラハラ観ていたはずなのに、笑わずにはいられないシーンが多いこと!



語られない部分が多少あるけれど、それもきっと余白なのだろうな。ストーリーに関係のないところは、観た人の想像に任せているんだろう。今日一緒に働いたあの人の人生のすべてを私が知らないように、映画のすべてにも、説明は無くてもいいのかもしれない。



年齢を重ねるにつれ、“人が死ぬ映画”への体力が本当に無くなってきた。
「誰も死なないでくれ…辛いシーンは見たくない…」と思うことが増えて、“よつばと!”ばかりを読み返す私に、人が死ぬのにも関わらず、見終わった直後にまた観たい!DVDが欲しい!と思わせてくれる映画だった。

(そういう意味では、ミュージカルゾンビ映画という謳い文句に釣られて観た【アナと世界の終わり】は辛かった。Glee大好きの私にピッタリな最高のミュージカルで曲も好きだしすごい面白かったし、ゾンビ映画にもかかわらず程よいポップさや光るクリスマスツリーのセーターだってキュートでオススメしたいけど、観た直後にもう一度!にはメンタルがキツい。誰も死なないゾンビ映画って恐らく存在しないのではないだろうか)


キャラクターの良さについても熱く語りたい。
登場人物の全員にときめかずにはいられない。

が、しかし、あまり語るとネタバレになってしまうので、溢れる気持ちをぐっと抑え、本作の主役であるカリスマコンシェルジュのグスダヴと、ロビーボーイのゼロの2人だけについて話そう。

画像左:ゼロ / 画像右:グスタブ


カリスマコンシェルジュのグスタヴの人柄は、“愛”無くしては語れない。
自らの働く場所であるグランド・ブダペスト・ホテルを愛し、誇りに思い、そこに訪れる客のことも当然愛している。

そして多くのものを愛することで、彼自身多くのものから愛される。マダムから非常にモテていて、それを隠さないので軽薄にも見えるかもしれないが、その愛はロビーボーイであるゼロに対しても、同じように深い。


彼の良いところは他人のために“怒れる”オトナであり、自分の非を認め“謝れる”オトナである。

大人は、子どもの頃に見ていたよりもオトナではないのかもしれないと気付いたのは働きだしてからだった。
自分の感情のままに怒り、自分に非があっても謝れない大人は、世の中に実はたくさんいるのだ。



そんな世の中を知った今だからこそ、ゼロのために怒り、ゼロに対して真摯に謝ることができる彼の姿に、ぐっとくる。

そして、そんな立派なオトナであり、カリスマコンシェルジュと言われるだけの魅力と実力を持っているのにも関わらず、彼が完璧ではないところに人間味を感じる。欠点こそ、つい親しみを感じてしまうチャームポイントになりうることをグスタヴは教えてくれるのだ。


グスタヴのある行動が事件を起こすが、そうしてしまう気持ちが分からなくはない。
ただ、自分が同じ立場に立った時、迷いなく彼のような行動が取れるだろうか。私にはきっと無理だ。彼が即座に行動を起こせる原動力は、ありとあらゆるものを愛する才能があるからに他ならない。



そして、ロビーボーイのゼロ。誠実さの塊のような男だ。カリスマコンシェルジュであるグスタヴを尊敬し、師事する。

グスタヴへの信頼がとにかく厚く、師の言葉を素直に学ぶ姿勢は、きっと誰からも愛される。教えを乞う側に必要なものは、いつだって素直さが第一だろう。


人種差別や謂れなき迫害、観ているこちらが理不尽さに怒りたくなる場面であっても、ゼロは取り乱したりしない。彼がそういう扱いに慣れてしまっているようにも、彼の器が大きく、そんな扱いをする側を憐んでいるようにも見える。


ゼロは表面的なものに左右されない。本質を見抜く目がある。
彼は彼が信じたものに誠意を尽くすし、彼が信じたものは、決して彼を裏切らない。他人のために自らの危険を顧みずに行動できるのは、わかりやすいスーツを着たヒーローだけではないのだ。素直さと誠実さは銃より強い。

彼のまっすぐした瞳からは確固たる芯を感じる。どんなに蹂躙されたとて、彼の魂は気高いし、美しいのだ。


グスタヴと親しくなるにつれて、師弟関係だった二人が親子のようにも、友人同士のようにも見える瞬間がある。2人の築いてきた時間は、もはやただの職場の上司と部下ではない。互いに尊敬し信頼しあっている美しい関係性である。人生でいったい、何人とそういう関係が築けるのだろう。

★ 



何度も見たくなる最高の映画、グランド・ブダペスト・ホテル。

最後のエンドロールまで余すことなく楽しめる作品。
それがグランド・ブダペスト・ホテル。
100分間の魅力的な小旅行を是非楽しんでほしい。
きっとあなたも鍵が欲しくなる。

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