サークル回顧録

 この間, 4年間在籍した軽音サークルを引退した.1回生のはじめに友人に誘われた勢いだけで入会を決めたサークルだった.入ったのが周りよりも少し遅れたこともあり初めの頃は他の1回生とあまり喋らなかった記憶がある.一番最初に組んだ固定バンドは1度もライブをすることなく他のメンバーが辞めていき,いよいよサークルでは誘ってくれた友人にくっついて,なぜかライブもないのに毎回いる人間となった.それでも大枚を叩いて買ったベース(といっても安価なものだが)を1度も弾くこと無く止めるのはなあという気持ちやせっかく誘ってくれた友人を残して止めるのもなあという気持ちだけでもう少しいるかと思って続けていた.正直1回生の頃は別の校地の先輩だらけのサークルに馴染めていなかったと思う.それでもずっとなんか知らんけど身内ばっかりの合宿にも行き,出るバンドもないのに学祭に行きということを続けていると次第と先輩とも喋れるようになりだんだんと受け入れられるようになったのかなと思った.そんなことを思うようになったら今度は同期がしこたま辞めていった.先輩が大麻をやっているだのなんだのという出所もわからない噂が流れていた.その噂が僕の耳に入ってきた頃にはすでに1回生は数えるほどしかおらず,サークルに友人が少ない情弱が故にサークルの辞め時を見失っていた.

 そんなこんなで1年が経とうとしていたころにコロナが流行り始めた.すぐに落ち着いて春からは何事もない1年が始まると思っていたら,なんだか酷いことになって気づけばまた一年が過ぎ先輩たちともあまり親睦を深めることなく今度は自分が先輩と呼ばれて,サークルを運営する立場になっていた.正直2回生の頃はサークル活動なんて全くしていなかったしさあこれからと思って買ったマルチエフェクターも1年以上使い方もよくわからないまま寝かすことになった.

 3回生に上がると少なくなっていた同期がもっと少なくなり僕を含めて4人しかいなかった.それでも2回生の頃よりも大学側の規制が緩くなったので潰れかけのこのサークルを立て直そうと,4人しかいないけど新歓を頑張ったらなんかわからんけど70人ほど新入生が加入してくれた.4人で20-30人きてくれたらいいねといっていたので,これは嬉しい誤算だったわけだが逆に4人でサークルのことを何も知らない70人もの新入生をまとめるのに苦慮した.苦慮したし,気がついたら同期は2人になっていた.3回生の頃は自分を殺して新入生が楽しめるように,不便ないようにということを考えながら運営に回った.3回の頃は2人しか同期がおらず,一個下の代はなぜかコロナ禍で全く動いていないサークルに入ってくれた2人と別のサークルから移ってきた数人のみでほとんど新入生と変わらない立場だったので,僕ともう1人で全ての役職を回すことになっていた.僕は前に立って話をするのが苦手なので裏方を全て引き受けるからといってもう1人に会長を任せ,会計や書類提出その他諸々を全て行なっていた.そんなことをしているとやっとできた後輩からはどんな人かは知らんけどずっと会長の横にいる人やと思ってましたと言われる始末.まあ正しい.3回生の終わりに差し掛かると会長をやってくれていた同期もあまり顔を出さなくなりついぞ1人になるかと思ったらサークルから離れていた別の同期が舞い戻ってきてまた2人になった.この頃もなんだかんだ辞めるタイミングを見失ってなんかずっといる人みたいになっていた.きっと辞めれるタイミングはいくらでもあったと思う.例えば1回生の終わりの頃とか,何もなかった2回生の頃にそのまま幽霊になって抜けることもできただろうし,3回のはじめにもそのタイミングはあったと思う.それでも辞めずに続けたのは自分の中での帰属意識というか,サークルへの愛着というか,そういうものがあったのかなと思う.思い返せば高校の部活も夏の大会までと思ってやっていたら気付けば11月まで続けていたし,自分は所属する組織に強い帰属意識を持ってしまうタチなんだと思う.

 そんなこんなで3回生が終わり,ひとまずサークルは潰さなかったし次の代に引き継ぐこともできておわりかと思っていたら,戻ってきた同期に誘われる形ダラダラとまた辞め時を見失って,先輩たちの言葉を借りるなら「老害」になってしまうわけだが,4回生の夏合宿で全然知らん1回生やあまり仲良くない2回生が大半を占める中4泊5日も一緒にいたから急に仲良くなって,仲良くなったらなんだか余計に辞めづらくなって定期演奏会や学祭にも本来であれば出られたはずの下回生の枠を奪う形で出しゃばった.でもこの1年は2回生の時に何もできなかった分を取り戻すようにバンドができてとても楽しかった.楽しかったし,ついに引退かとなった最近になってやっと目見にえて自分が上達したなと感じられたし,周りからベース上手いねと褒められるようになって,買って1年寝かしたマルチエフェクターでの音作りもわかってきた.だから,4年間を通して一番楽しいのが今なわけで,やっと楽しくなってきたというところで引退となって寂しさも一層あるわけで,慕ってくれる後輩もできて,下の代はまだあと1年ないし2年,3年と楽しいサークル活動を続けられるのかという羨ましさがある.

 最後に,一度潰れかかったサークルを立て直したことを日々感謝してくれる一個下の代の会長.君はなんでか知らんけど全然動いてないこのサークルに1回生の頃から所属してくれたし,コロナ禍で人が集められんかった1個下の代で他のサークルから友達誘って人数を増やしてくれたりして,さらには2個下の代とも仲良くしてよりサークルを盛り上げてくれたりした.君がいなかったら本当にこのサークルは潰れてたやろうからそういう意味でとても感謝している.やからそんなに俺のことを持ち上げないでくれ,気恥ずかしいから.

 4年間ずっと辞め時を見失い続けてダラダラとずっと居続けてしまったけど,最後はもう終わってしまうのかとこの別れが少し,いやかなり寂しい気持ちだけど,こんなこと後輩に読まれたら恥ずかしいけど,読まれないからこうして書いているわけで,後輩みんなのこと好きやし,辞めていった同期のことも好きやし,僕は結局,大学4年間を通して所属したこのサークルのことが大好きだ.あと2年は京都にいるから行ける時には真に老害になることだけ気をつけて少しは顔を出そうかなと思う.そう思うから,まだ思い出にするのはもう少し先にしたい.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?