見出し画像

東大生、月下独酌。中国の白酒「五粮醇」を飲み大いに天下を語る

⚠お酒は20歳になってから
⚠強いアルコールを飲む時はチェイサーのお水を飲みましょう

ごあいさつ

皆様お久しぶりです。東京大学・昆虫遺伝研究室D2の大津高志です。
ご存知ない方に説明すると、「カイコガの遺伝子の研究をしている」「コロナ禍前は何度か東大生のテレビ番組に出た」今は博士課程の東大生で、学術論文は未だ出せていないです。
なかなか物事が進まずに色々試行錯誤しています。焦りも強いです。

研究だけでなく以前お話した趣味の邪馬台国関係のことも色々「面白い物語」にしようとしているのですが、自分の経験不足から色々苦労しています(それでも考古学など広い分野を調べるのは楽しいです)。
今思えば恥ずかしいことも色々言っていましたが、学ぶにつれて少しづつ心構えを修正しています。

時々気晴らしもしていて、カイコや古代史関係の色々なところに出かけて楽しんでいます。
例えば、ストーリーの中で岡山県の「楯築墳丘墓(たてつき)」を造ったキビ(吉備)の王を出そうと思っています。この墳丘墓は、近畿で巨大な古墳が築かれるよりも前に造られました。
実際に墳丘墓にも出かけてどのようなものがあるか見学しました。楯築墳丘墓は、いわゆる「映え」スポットではありません。実際、この墳丘墓を壊して近年建てられた給水塔のほうが目立ちます。しかし、見学旅行の中で様々なところを見る中で「ここに最初に大きな墓を作った、偉大な王がいた。しかし誰も当時のことは知らない」と不思議な感覚がありました。もっと吉備の考古学は世の中に知られるべきです。

楯築墳丘墓、当時の王の権勢は忘れ去られ、神社の御神体として「弧帯紋石」という特殊な模様がある石が残るのみ
埴輪の元となった「特殊器台」。吉備には古代を彩った様々な遺物が発見されています。弧帯紋に似た文様があります。(吉備文化財センター)


旅行だけではなく、文化の意味でも世の中の見学をしています。まず、日本の養蚕に関する古書を色々読んでいます。日本はかつては世界一の生糸生産国だったことから、養蚕について様々な情報が集まっています。研究以外にも過去のカイコに関わる物事を知ることで世の中に貢献できるように精進して参ります。

群馬県にある、養蚕技術学校だった高山社(たかやましゃ)。高山長五郎の「清温育」の養蚕技術を求めて遠くから人が集まった。


また、研究以外にも中国の本を取り寄せて色々勉強しています。中華文明では養蚕が古くから行われており、現代の生糸の生産量は中国が世界一です。養蚕やシルクの文化的な価値を知るだけでなく、まだ日本社会ではメジャーではない中国文化に触れる日々を楽しんでいます。

中国では、次世代シークエンサー(DNA配列を解読する機械)の利用が積極的に行われており、カイコの分野についても様々なデータが公開されています。このようなデータを解釈することも研究になるのですが、自分の実力が原因でなかなか上手くいきません。
カイコの研究で実用的なものとしては、前田進先生(故人)が「バキュロウイルス(カイコの核多角体病、NPV、人間には無害とされる)」によるタンパク質合成の研究(1985)が有名です。実際ワクチンになるタンパク質もバキュロウイルスから作られます。ただし、カイコは飼育が大変なので昆虫細胞でのバキュロウイルス利用が多いです。

たとえば、これは近代までの中国での養蚕の歴史を説明する本です。またいつか養蚕の本の紹介もしたいです。今日はタイトルがお酒の話なので我慢します。

中国語を学ぶためには、まず中国の漢字が読めるようにならないといけません。なかなか習慣付けができていないのですが、日々勉強をしようとしています。
先程買った本の中で、中国の小学生向けの「ピンイン(発音記号)付きの読みもの」があります。百科事典やニュートン(牛顿)の伝記だけでなく、中国の古典の物語もあります(現代中国語、普通话です)。
なかなか習慣づけができていないのですが、独学の読む方の教科書としては最適だと思っています。

中国の読み物の1つ。表紙は『三国志』において後に蜀漢の皇帝になる劉備が諸葛亮(孔明)の庵を3回訪れるシーン(三顧の礼)
ちなみに3回訪れる部分は諸葛亮の「出師表」によると史実。諸葛亮は蜀漢の丞相として絹を魏に輸出する政策をとった。
参考・同書より蜀漢の2代目皇帝で劉備の実の息子である劉禅が魏に降伏した後の説話。
「ここは楽しい、蜀の国が恋しいとは思いませぬ」
(教科書の雰囲気の参考のための簡易な引用、問題があれば削除します)

「五粮醇」について

さて、最近は中国の文化や料理についても調べています。その中でも、中国系の人向けに作られたタイプの中華料理店、いわゆる「ガチ中華」も時々食べに出かけます(もちろんそれ以外の中華料理も「ガチ」だとは思います)。
その中で、「白酒(パイチュー)」を時々買っては飲んでいます。
白酒は中国の蒸留酒で、醸造酒である紹興酒(老酒)とは異なるタイプのお酒です。材料は穀物や豆類です。
現地の人達は「干杯」と飲み干すこともあるようですが、自分はどちらかというとテキーラやウイスキーのようにゆっくりチビチビ飲む方が好きです。
そのなかでも、特に好きな味のお酒を紹介します。
「五粮醇(wu3liang2chun2、ごりょうじゅん)」です。(粮は糧の簡体字)

五粮醇のパッケージ、海外の輸出専用タイプ、アルコール度数45%

透明なお酒で、四川省(先程の蜀漢があったところ、中国の西の方)で作られています。
高級品に「五粮液」というお酒もあるのですが、同じ会社の姉妹品のようです(五粮液は数万円、五粮醇は2300円)。
名前に5とついているのは、穀物などが5種類使われているからのようです。

実際の「五粮醇」のボトル、500ml入り

「浓香型」という分類で、華やかな香りがします。
記事を書いている時にも飲みたくなりました。

非常識だとは思いながらも、飲み過ぎないようにおちょこを使う。

やはり45℃あるのでウイスキーのようなアルコールの鋭さはありますが、口に含んだ時の香りや感覚は「まさに濃香型」と言った感じです。華やかで幸せな感じです。
近い感じの香りを言うと、「もち米のお酒(特殊な日本酒・焼酎)」のような感じです。それが口の中でいっぱいに広がります。
味はアルコールに合ったような甘いお酒で(紹興酒の甘さとは違います)、鼻に抜ける感じです。
本当にオススメなので、中国酒は紹興酒しか飲まないという方にもぜひオススメです。
現地での愛され方は不勉強なので分かりませんが、本当に味わって飲むタイプの味です。
どういう料理にペアリングしていいのかわかりませんが、もしかしたら牛脂の火鍋のような、現地の食材、とくに脂がある感じのものがよいのかもしれません。
Amazonや中華食材店で買えます。残念ながらドン・キホーテには多分まだありません。

ただしかなり強いお酒です。本当に気をつけてください。
一緒にお水を飲みましょう。

ほかのオススメは山東省の「孔府家酒(こうふかしゅ)」や、同じブランドでビックカメラなどに売っている「火爆(小さい瓶、度数も比較的強くない)」です。
孔府家酒は名前の通り儒教の孔子の一族で有名な「曲阜(きょくふ)」で作られています。
「試してみよう」という気持ちなら、五粮醇以外だとこの2種類がオススメです(これらは瓶が小さいです)。

ちなみに、行ったことはないのですが五粮液の企業が六本木に高級中華料理のレストランを開いています。


中国語の勉強の中で、古典漢詩も出てきます。詩人として紹介されている中には李白、杜甫、王維もあり、本によっては「黄巣の乱」の黄巣が詠んだ詩まで出てきます。タイトルの「月下独酌」は李白の詩からです。
「飲む相手はいない。しかし月と私の影がいれば3人だ」
小学生向けの本でもお酒の詩があるのは、不思議な感じです。

お酒の詩といえば、井伏鱒二の「サヨナラだけが人生だ」も于武陵の漢詩の翻訳です。
自分なりの解釈を入れるとこんな感じの詩です。

君よ、この器の酒を飲んでくれ
いっぱい注ぐぞ、飲んでくれ
花が咲けばすぐ風に飛ばされる、世の中そんなことばかり。
人生に別れはもう十分。

小学生向けの漢詩の本、平仄(ひょうそく、アクセント)は分からないものの勉強中。「月下独酌」はこの本にもある唐代の李白の詩。この中には今の武漢にある「黄鶴楼」を読んだ詩も!

白酒について思うこと

もしかしたら皆様も今までも白酒を見たことがあるかもしれません。例えば、空港の免税店などで中華系の人向けに「茅台酒(まおたいしゅ)」が売っています。また、新宿の大通りにも大きな「五粮液」があります。

ご存知ない方に説明すると、赤いリボンの「茅台酒」は中国の山岳地帯にある貴州省の白酒(酱香型で独特な匂い)で、非常に高級なお酒として知られています。政治的にも大陸との日中国交正常化で記念として飲まれたお酒のようです。(ちなみに貴州省は発酵した漬物やドクダミの根が有名で、新小岩や上野に貴州料理の名店があります。原始的なカイコも貴州省由来の系統があります。)実際、「政治的な意味のあるプレゼント」にも使われているようです。

自分が茅台酒を知ったのはは、昔の少女漫画でお酒の名前がついたキャラクターが出てくるギャグ漫画「有閑倶楽部」で「マオタイ」という中国系のコメディ悪役です。

インターネットで調べると、「白酒」の中でも高級な物を見て投機対象か何かだと思っている方もいるようです。

もったいない!

せっかく美味しいお酒があるのに、これでは「このお酒は中国から来た」という表現にしかなりません。中国文化の進出に納得いかない方には威圧的にさえ感じるのではないでしょうか。全く知らないものが大規模な宣伝されているのを見ると、それがお酒かどうかは関係ありません。

しかし、

「中国のものだから」は白酒を好きな理由、嫌いな理由にはなりません。例えば、ワインの地域ならフランスのボルドーだけでなく、チリや南アフリカ共和国などでも作られています。ブドウの品種もピノ・ノワールやシャルドネなどの様々な種類が知られています。蒸留酒ならウイスキーもテキーラ(とくに100%アガベ、リュウゼツランの原料のもの)も魅力的なものが知られているだけでなく、「知っていると素敵な知識」としての側面もあります。地域を超えて質の高い美味しいものは求められます。

日本酒でも、「純米・醸造酒の分類」「酸度」「製法(山廃や『生酛、きもと』など)」や地域など、様々な分類があります。味も多種多様です。法律的には「日本酒」ではないものの、海外でも「SAKE」を作ろうとしている人たちがいます。

原動力は、おいしさです。

これは、食感以上のものを含みます。たとえば日本酒の場合は、製法や杜氏さんの努力を知ることで、勉強してより美味しく飲めるようになります。今どきの昆虫食も特有のいい香りの独特な味だけでなく、「自分は昆虫を食べている、なんだかいいなあ」という感覚もあります。蜂の子や天竜川の「ざざむし」なら、白米のご飯に合う香りだけでなく、「貴重なもの、生物多様性や文化の恵みを食べている幸せ」もあります(もちろん昆虫食の魅力は白酒とは別のタイプです)。

本当に白酒はまだ(中華系以外の)世の中に知られていないだけなのです。そして、「文化によって更に発展の余地がある」ものです。

たとえば、日本で作るなら地域名物のクリなど、焼酎の技術も使えるかもしれません。日本のクラフトジンで柚子や山椒を入れるように、独特な製法があるかもしれません。アルコール度数を水で減らすこともできます。貴醸酒のように、白酒のアルコールで甘いお酒を作ることも出来るはずです。

ただ文化の壁、そして普及レベルの問題だと思います。美味しさが広まるかどうかの問題と思います。

アルコールで饒舌になったのもありますが、自分はこれからも白酒のいい所を発見していきたいと思います。

(茅台酒も少しだけ飲んだことがありますが、本当に美味しいです!下に紹介する茅台醇だけでなく、茅台王子酒やゴルフ用の茅台酒もあります。)

日本に白酒を広めようという方たちも最近活動を始めたようです。下のリンクからどうぞ。


クリスマス前後にひとりて1人で六本木の「中華茶房8」さんに行った時の「乾杯白酒」さんとのコラボメニュー。新宿店だと数は少ないものの、独自のお酒がある。
五粮醇とセットでお祝いに買った「茅台醇(2008年)」。やはりと特徴的なカラメルのような香りがします。少し高めで5000円台。専用の紙袋付き。


下のリンクは、中国酒の輸入をされている「日和商事(にちわしょうじ)」さんのサイトです。
「赤いリボンの茅台酒」のブランド的な成功を書いた本の翻訳です。
日本で白酒の本は多分これだけですが、もちろん読むだけでは味は分かりません。でもオススメです。
(もちろん味も香りも最高峰、でも酱香型は特殊なタイプで全体の雰囲気をつかむにはもっと飲むしかないです)


世の中では、中国からのビザ新規発行停止など、不穏な話題が多いです。本当に政治問題は難しいです。
その事については不勉強ゆえに触れません。

ただ、白酒は本当に美味しいです。中国の地方料理も美味しいです。ただこれを伝えたいためにこのnoteを書きました。

終わりに

自分は研究の文章を書くのはあまり得意ではありませんが、こういうタイプの文章を書くのは好きです。
カイコの研究もこれからも頑張りたいと思います。自分が将来どのようになるかはわかりませんが、カイコ分野や研究に惚れているので続けたいと思います。
本当に話したいことは色々あるのですが、アウトプットに慣れていないのでまた練習する時に書きます。
今後何かあればまたよろしくお願いいたします。


いつの日か「カイコ本」のことも色々紹介出来れば……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?