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演劇の「小屋入り」って??

こんにちは。倉増哲州です。

昨日の記事で演劇に関することで質問を募集しまして、
「小屋入り」って何をする日?って質問をいただきました。
すごく良い質問♪
でもすごく答えるのが難しい質問。
なぜならちゃんと「小屋入り」というものを説明しようと思ったら
セクション(役者、演出、舞台監督、照明、音響、制作などなど)が多岐にわたり、セクションによって全然違う。
なので今回は役者ポジションでの「小屋入り」について
僕自身のすごく限られた知識でお答えしたいと思います!!

予め先に言っておきますが、これから説明するのは
“関西”のいわゆる“小劇場”といわれる演劇ジャンルでの小屋入りのお話です。
関東、関西であまり違いはないとは思いますが、やっぱり微妙に違ったりするし、
同じ演劇でも小劇場というジャンルと、商業演劇、宝塚、四季とかになってくると全然違います。
大きく違うのはやっぱり予算の違い。お金です。
あとは専用の劇場を持ってる、持ってないなど。

小劇場では多少の金額の幅はあれど、決定的に予算が少ない。
なので切り詰めるところは徹底的に切り詰める。
なので、多くの公演の小屋入りは、少しでも劇場費を抑える為本番の前日に小屋入りという形が多いです。
だいたい劇場は基本的に一日借りて10時から22時ってところが多いので、
その時間を目いっぱい使って、照明吊って、音響仕込んで、美術を建て込んで、客席作って、ロビーでは受付の準備などなど“仕込み”をしていくわけです。
上記のような劇場で本番に向けて諸々準備することを仕込みっていったりします。
たまに本番2日前に小屋入りという形をとってくれる劇団もありますが、
これは正直めちゃくちゃありがたい♪
「2日仕込み」って言ったりしますが、これは時間的余裕はもちろん体力的余裕が全然違う。
「2日仕込みやったーー」って感じです。

さてさてここからざーっと「小屋入り」の日の一日の流れを説明していきますよ~

まず小屋入りの少し前の時間には劇場に集合し、公演の荷物を満載したトラックが到着すると同時に、総出で劇場に運び込みます。
荷物は、美術のセット、照明機材(劇場備え付けのみでやることもありますが、照明さんによって、また照明プランによっては持ち込むことも有り)
↑個人的にはこんな補足も必要かなって思いついつい細かく書いてしまうんですが、こういうことをいちいち書いてたら終わらないので以下は省略。
音響機材、衣装、小道具、制作セット、ケータリング類などなど。

荷物の搬入が終われば、早速照明さんが機材を吊っていき、音響さんもスピーカを仕込んだり、
ある程度落ち着いたら美術セットを建て込んでいきます。
うまく舞台監督さんが捌きながら、道具、照明、音響とセクションが入り乱れて作業は急ピッチで進んでいきます。
ほんと時間との戦い。
もちろん役者もそれぞれのセクションを総出でお手伝い。
舞台上はそんな感じ。

一方、楽屋では各出演者の鏡前を作ったりと楽屋準備。
衣装をアイロンがけしたり、手直ししたり、ケータリングを用意したり、
お弁当の手配したり、あとは小道具をそれぞれ使いやすい場所に準備をしたり。
ロビーでは受付準備、物販の用意、ロビーの飾り付け、あとは良く観劇される人は分かると思うんですが、観劇の際に座席においてあるアンケートが入ってたりする演劇のチラシ束。
そのチラシ束を作っていく作業。
その作業のことを「挟み込み」とか「折り込み」って言ったりします。
これも基本的に一枚一枚人海戦術で手作業で作っていきます。

ざっと色々書きましたけど、やること満載でしょ。笑
それぞれのセクションで舞台監督さん、道具さん、照明さん、音響さん、制作さんとプロのスタッフさんがいらっしゃいますが、
基本お金がないので各セクション一人。
人が足りないので、役者もお手伝いをします。

そんなこんなで美術が立ち上がり、照明さんの明かり作り(シュートって言ったりします)、音響さんのサウンドチェックが済めば、
いよいよここから役者としての出番。
“場当たり”
というのが始まります。
美術の建て込みの種類や規模によったりもしますが、だいたいここまでくるのが夕方ぐらい。
簡易的な美術だったりすると、14時とかから場当たりってこともある。
まぁ、これもお芝居の種類や予算によって変わってきます。

場当たりっていうのは、もちろん役者のためでもあるけど、各スタッフさんのチェック、演出の最終チェックって感じかな。

暗転チェック。
どこかから明かり漏れがなくしっかり暗転できてるか?
暗転中の役者の動線は?
危険がないように、必要なところに明かりがあるか? 蓄光テープが貼られてるか?

照明チエック。
いかんせん実際どんな照明かは劇場に入らないと分からない。
各シーンの照明の色味、明かりが当たるエリア、サスの位置などなど。
あとは照明がかわるきっかけの確認。
照明がかわるタイミング、照明が入るのはパッとカットインで入れるのか?
徐々にフェイドインで入るのか?
この色から別の色にクロスで入れるのか?
照明が無くなるタイミングも同じく。
そんなキッカケをシーンを細かに返して、客席で演出が指示や要望を役者や照明さんに伝えて調整していく。

音響チェック
音が出るスピーカーの位置の確認。それぞれ上手、下手、もしくは舞台奥、舞台面にスピーカ―があったりする。
各音量の大きさ。
SEといわれる効果音のチェック。
あとは照明と同じく、音が入るきっかけをシーンを返しながらチェックしていく。

そんな上記のチェックを、お芝居の頭から順に
照明、音響の変化があるきっかけを一つずつさらっていく。
それを演出がイメージ通りなのかを確認。

何度も言いますが、時間はカツカツなので
この場当たりの進行を演出がやることの方が多いですけど、
たまに舞台監督が進行をすることもあったりする。
その場合、演出は前から見ていてチェックするだけで済む。

そんなことをしながら、役者にとっても実際に組みあがった美術に立つのは初めてなので、
「ここにこんな段差があるな」「この階段はこんな感じか」みたいな
空間を把握することに各々努める。
割とこれが勝負。大切。

かといって、他のセクション、シーンの場当たりをしてるのに、
舞台上で自分のシーンの確認をする役者さん居る。
僕きらい 笑

というわけで、だいたい小屋入り一日目ってこんな感じ。
といってももちろんその公演によりますけど、
一日目で場当たりが全部終われば御の字。
終わらないことも多々ある。

だいたい公演の初日って夜公演がほとんどだと思うんですが、、、
たまに初日から昼夜の2回公演の時もある。
とにかく、場当たりが終わってなければ、次の日。
つまり本番当日、まず残りの場当たりをして、それが終われば
各セクション手直し。
場当たりを踏まえて、照明の色味、エリアの修正、音響の修正などをする。
そしていよいよ、本番と同じようにすすめる“ゲネプロ”
役者も衣装を着て、メイクして最終確認。

だいたい「小屋入り」から僕たちが本番を迎えるまでって、
その公演によりけり様々ですが、ざっとこんな感じです。

カツカツでしょ? 笑

時間との戦い、体力との戦いです。

ご質問にありました、お芝居の最終確認というのは、ゲネプロってことになりますね。
小屋入り前に、最終の稽古が終わったら、次にお芝居を頭から最後まで通してできるのはゲネプロになっちゃいます。
もちろん仕込み中に、気になるシーンがあれば、相手を捕まえてどこかの隅のほうでセリフやシーンを返すってことをしたりはします。

「小屋入り」
とにかく、初日の幕が上がるまで、ほんとバタバタ。
逆に言えば初日の幕が定刻にしっかりお客様をお迎えしてあがるように
各セクションのスタッフさんって限られた時間と予算で凄い働きをされている。
よく俳優さんがスタッフさんのおかげです。って言いますけど、ほんとにその通りなんです。

こんなバタバタのスケジュールですけど、どのスタッフさんも口を揃えて
「できるだけ早く役者さんを舞台の上に乗せてあげたい」
って言って、仕込みを円滑に進めようとしてくださる。

ほんとバタバタで時間的にも、体力的にも大変大変とばっかり書きましたけど、
そんなみんなで一丸となって公演を作っているのも大きな価値なのかもしれませんね~

でも、まぁやっぱり歳をとると一日仕込みはしんどい 笑
2日仕込み万歳!


ってな感じで答えになったのかわかりませんが、ついつい長々と失礼しました~。
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