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『山小屋エイド』プロジェクトに学ぶ、クラウドファンディングを「書く力」

これまでさまざまなクリエイターのクラウドファンディングを掲載してきたMOTION GALLERYがこの困難を乗り切るためのナレッジをシェアするマガジン、『MOTION GALLERY ACTION』。よりよいACTIONをサポートするために、MOTION GALLERYを運営する私たちのナレッジをシェアします。

今日は、MOTION GALLERYのディレクターである出川 光による、『山小屋エイド基金プロジェクトの成功からみるプロジェクトを「書く」力』。

MOTION GALLERY  ACTIONでナレッジを書くのは初めてです。実は私、これまでクラウドファンディングのナレッジを様々なメディアや著書に書いてきました。それでもプロジェクトを担当しているとさまざまな発見があるもの。今回は私が担当の『山小屋エイド基金』のプロジェクトで発見した、3つのプロジェクトを「書く力」についてシェアしたいと思います。

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クラウドファンディングには「書く力」が大切?

クラウドファンディングのプロジェクトって、どこか似ていると思いませんか?はじめまして!という自己紹介ではじまり、プロジェクトをやる理由が書かれていて、よろしくお願いします!と締めくくられている、あの感じ。誰がともなくお互いを参考にしあって、できあがったトーンなのです。
しかし、翻って支援する人のことを考えれば、読んでいてワクワクしたい、気持ちを動かされたい、情報を受け取りたい、と考えているはず。同じような定型文にする必要はないのです。『山小屋エイド基金』プロジェクトの「書く力」はそれを改めて教えてくれるものでした。それでは、3つにわけてその書く力を見てみましょう。

1.プロジェクトを「書く力」──スタンスを明らかにする

基本にのっとりながらも、『山小屋エイド基金』のプロジェクトには、発起人の山小屋への考え方やスタンスが明らかにされています。コロナ禍において「なぜ支援が必要なのか」「どうして支援したいのか」「支援するとどんな影響が私たちにあるのか」をリアルな言葉をもって伝えることでユーザーの心を動かしています。特に注目したいのは、「山小屋エイド基金の最大のリターンは、「登山」の存続です」という見出しから始まる段落です。一見どういうことかな、と立ち止まって読ませる内容ですが、支援をすることで得られる名前のクレジットや冊子ではなく、アフターコロナでも登山を楽しめるというかけがえのない経験に支援をしてください、と呼びかけています。ここに、登山そのものを存続させるためのプロジェクトであるというスタンスをみることができます。

2.支援者とのつながりを「書く力」──SNSでも細やかにフォロー

「プロジェクトが始まったらSNSでシェアしたり支援してくれる人と交流したりしてくださいね」と声をかけるものの、それを実行できる人は多くありません。『山小屋エイド』プロジェクトでは専用のSNSアカウントを立ち上げ、発起人が手がける媒体の公式アカウントと連携しながら支援者と丁寧なやりとりをしています。ここから生まれた声からクラウドファンディングを支援する方法の説明書を作るなど、実際に運用を改善してもいます。あらいざらいやりとりを見えるところで「書く」力がここで発揮されています。

3.アップデートを「書く力」──支援者のことを思いながら毎日書く


これもまた、プロジェクトを始めた人にはおきまりのアドバイスである、「アップデートを書いてください」。アップデートそのものがシェアされやすい性質のものではないので、モチベーションがだんだん下がり3日おきに投稿できれば上出来というプロジェクトが多いなか、『山小屋エイド』プロジェクトのアップデートは営業日毎日更新されています。内容には、賛同人のコメントや、メンバーの山小屋の思い出などさまざま。これがまた面白く、ひとつの読み物にまとめられそうなくらいです。おそらく、「アップデートを書く」ことを目的にしているのではなく「支援してくれた人に少しでも楽しんでもらおう」ということを目的にされているのだと思います。このアップデートがプロジェクトの信憑性を高め、共感を生み、次なる支援者を呼んでいます。

これらの3つに共通しているのは、自分たちのために書いているのではなく、誰かのために書いている文章だということです。プロジェクトを通して支援したい対象や、支援してくれる人を思って、時にクラウドファンディングの型を度外視して書くことが、プロジェクトをよりユニークに、血の通ったものに仕上げることができることをこのプロジェクトは教えてくれます。


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