見出し画像

コロナ禍に入江悠監督はどう映画を作ったか

2020年10月29日にモーションギャラリーで見事クラウドファンディングを成功させ、映画を制作した入江悠監督。映画界が静止してしまった2020年に、苦境に陥ったミニシアターを完成した映画を持ってまわることを目標に映画を作り始めました。この時期にクラウドファンディングを立ち上げ、成功させ、制作を行ったナレッジを書いていただきました。

静止してしまった映画界隈に希望をと掲げた目標

スクリーンショット 2021-01-26 19.44.57

2020年にミニシアターが危機に陥ったことと、私自身も映画の撮影がなくなってしまったこと。この2つが大きな『シュシュシュの娘』始動の動機でした。それぞれの足場が揺れ動いた時、じっと耐えて熟考することも必要ですが、自分は何かしら動きながら試行錯誤するしかないと感じました。動くことによって繋がれる人、未来に希望を抱ける人もいるのでは、と思って、一気にプロジェクトを立ち上げ、2021年へ向かっていく目標をつくりました。

それが、

・コロナ禍で苦境にある全国のミニシアターで本作を公開すること
・コロナ禍で仕事を失ったスタッフ・俳優と、商業映画では製作できない映画を作ること
・未来を担う若い学生たちと新たな日本映画を完成させること

です。さらにこれらを掲げて映画を制作するためにクラウドファンディングを始めました。

こんな時だから、
映画をみているような感覚になれるリターンを

『シュシュシュの娘』のリターンでは、できるだけユニークなものを設定しました。本作は2021年にミニシアターを応援することを目標にしているので、一緒に映画を作っている感覚になっていただけるよう、スタッフと工夫をこらしました。

スクリーンショット 2021-01-26 19.46.08

クラウドファンディングが終了した今、振り返ってみると予想以上の反響をいただいたことに驚いています。クラウドファンディングのゴール突破が、映画の制作過程でのひとつの目標になったのと、それをスタッフ・キャストが共有でしてくれたので現場で一体感も生まれました。なによりも多くの応援の声をいただいたことを嬉しく思います。

いただいたのは金銭的な支援だけではありません。人と人が会うことが難しくなったこの時期に、クラウドファンディングの力で遠くの方々とのつながりを強く感じることができました。金銭的なバックアップだけでなく、気持ち的にもたくさん支えていただいたとの思いがあります。今は、いかに映画の制作者として恩返しをできるかを考えているところです。

どうすれば、コロナ禍で映画を作れるか

クラウドファンディングと並行して行った映画制作で苦労したのは、何よりも人と気軽に会うことができないこと。対面オーディションや打ち合わせには苦労を重ねました。映画制作という共同作業にとっては、濃密で頻繁なコミュニケーションが重要になります。それをいかに工夫して行うか、あるいは別の方法で代替するかが問われた映画制作でもありました。


定期的な換気やマスク着用など基本的なことはすべて行った上で、『シュシュシュの娘』は自由な自主制作という利点を生かして、体力的に無理をしないスケジュールを組みました。疲労がたまってくると免疫力も落ちて感染リスクも高まるため、できるだけたっぷり睡眠を取り、現場では毎日美味しいご飯を食べられるように工夫しました。商業映画やドラマの方がスケジュールがタイトでスタッフやキャストに無理がかかるので、『シュシュシュの娘』の余裕あるスケジュールを組んだことがよかったと思います。今後は商業の世界にもこの考え方をフィードバックしていきたいと思っています。

これからの『シュシュシュの娘』と芸術のともす灯


『シュシュシュの娘』では2021年に全国のミニシアターを1館でも多く回る予定です。できれば、一人でも多くの映画館スタッフの方とお会いして情報交換し、ウィズコロナの時代をどう乗り越えていくかを相談しつつ、永続的な支援につなげていきたいと考えています。各地の映画館、ひとりひとりのフリーランスのスタッフやキャスト、そういった孤立しがちな仲間を、『シュシュシュの娘』の運動を通して、いかに繋げていけるかが、来年以降の課題だと考えています。

苦しい時代に力強い芸術が生まれてきたことは、これまでの歴史が証明しています。人が集まって制作したり、制作物を発表したりするのが難しい未曾有の時期ですが、何か新しい契機もそこには潜んでいるのでは、と思っています。

(お話:入江悠監督 / 編集:出川 光)


プロジェクトを掲載したい方へ

モーションギャラリーでは全国に緊急事態宣言の発令が広がる現状を踏まえまして、2021年3月末までこの「AIDファンディング・プログラム」を延長しています。新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされている「日本全国の興行場・飲食店・宿泊施設等」を支援するクラウドファンディングの「サービス手数料は無料になります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?