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革布より革袋の方が先か

前節では、「人類が最初に手にした道具は服(被る革布)か」を考察した。類人猿が人への進化の過程で、服と言うか革の布を手にしたとして、どんなご利益があるのだろうか。頭に被って雨を防ぐのはその一つだ。現在の霊長類は一般に雨を好まない。動物園のオランウータンは、与えられたボロ布を被って雨をしのぐ事をする。

また、冷え込む夜や早朝には、革布で体を寒さから守るかもしれないが、これで寒冷地に進出できる、と言うのは大袈裟おおげさだろう。所変われば食変わるで、寒冷地の食糧事情に革布が、それ程役に立つとは思われない。子供の体を革布で覆って、寒さから保護すれば死亡率が低下し、群れ全体の人口増加に貢献するかもしれない。しかし、革布は何か、類人猿全体に与える影響力が、欠けているような気がする。

他の道具、例えば棍棒こんぼう、槍、弓矢は、狩猟動物になり始めた類人猿に、絶大な影響を及ぼすだろう。しかし、これらの道具を四足歩行、あるい四足と二足を併用する、類人猿が手に入れるのは容易な事ではない。これらの道具はずっと後に、人類と成ってから手に入れたように思う。

頭を捻っている時、ふと革布を風呂敷の様にして、餌でも包んで持ち歩くことができれば、食料事情が大きく改善すると思った。これは大きな影響を類人猿与えるが、上述の様に手に持つと言うのが難だ。しかも、袋状にして包むと言うのも、高度な技を必要とする。

そんな時、アフリカの報道番組ドキュメンタリーを見ていると、他の猛獣が倒し食べ残した、大型草食動物の御零おこぼれを、ハイエナがイソイソと持ち去る姿があった。ハイエナが口にくわえて引きずっていたものは、なんと袋、足の袋だった。足の付け根から大腿だいたい部までは、肉と骨が無くなるとひずめ部分が付いた長い袋状になる。自然な状態で皮の袋が出来るのだ。

俄人類学者の空想はこうだ。前節の「人類が最初に手にした道具は服だ」で考察したのは、類人猿が肉片付き皮をクチャクチャと歯で噛んで空腹を癒やす事だ。足の部分にも同様な事をしたはずだ。骨は、堅い木の実を石で割る様に、砕いて中の骨髄を食べたに違いない。最初は噛み尽くすと打ち捨てていたが、何万年も経過する間に、その足の袋に食べ物を入れて持ち運ぶ様になる、と言うのは有り得る話だ。

この足の袋は、四足歩行で口にくわえて運ぶことも、そのまま木に登る事も出来る。現在のチンパンジーに教えれば、当然出来るはずだ。手に持って運ぶ道具に比べて、行動様式になる難易度が低い。革袋による食糧事情の改善は、群れ全体に大きな影響を及ぼすだろう。これは革命的な事だ。こう考えると、前節で考察した革布より革袋の方が先かもしれない。

例によって、この空想を証明する物的証拠は何もない。以上

次回は「革布と革袋の次に、人類が手にしたものは杖だ

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