香川県 ゲーム・スマホ条例の疑問点(ちょっと統計触ってる人目線)

香川県、やっちゃいましたね。ちょっとお仕事で統計を触ったりする人の目線で、疑問点を2000文字程度で整理してみました。ねとらぼさんの記事を参考にしています。引用元は基本、ねとらぼさんの記事です。

中学生アンケートの妥当性

「ネット依存の傾向にある」と考えられる生徒の割合は、中学生では3.4%、高校生では2.9%となっているという調査結果が出ています。 (資料4ページ)

H29県調査結果のようで、これはキンバリー・ヤング博士のDiagnostic Questionnaireを流用しているようです(young8、とも呼ばれる)。で、この2.9%や3.4%の「ネット依存傾向生徒」なんですが、定義が問題。

ネット・スマホ依存の予防に取り組む(香川県のスタンスに近いのでは?と推測しますが・・・)アスクさんのWEBにちょうどいい説明があります。

上記の設問のうち、5項目以上あてはまる場合、キンバリー・ヤング博士は「インターネット中毒(インターネット依存症)」であると述べています。

え!?ヤング博士が述べているだけなの?科学的なエビデンスは・・・?って思ってしまいますよね。

はい、まあ、ね。(たぶん通説ではあるのだろう・・・)

ちゃんとやるなら、せめて同じヤング博士が開発した、young20を使う方がまだよいのでは。young20は、20項目に対してそれぞれ5段階評価し、100点満点で40点以上を依存傾向あり(70点以上だと傾向強い)、と評価するようです。これまた古いですが、総務省H25年調査報告書にそのあたり記載があります。

因果関係と相関関係

スポーツ庁が発表した令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査の結果によれば、児童生徒のテレビ、DVD、ゲーム機、スマートフォン、パソコン等による映像の視聴時間と体力合計点との関係において、平日1日当たりの映像視聴時間が長時間になると体力合計点が低下する傾向がみられるという結果が出ており(編注:資料を確認しましたが因果関係は示されていませんでした)、インターネットやコンピュータゲームの過剰な利用が体力低下を引き起こす要因になるものであると考えています。(資料7ページ)

ここではねとらぼ編集部のツッコミが、一般人の意見を代弁しているというか。確かに報告書では

体力合計点を比較してみると、男女とも視聴時間が3時間以上のグループの体力合計点は全国の平均値より低い。

と書かれています。(令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査報告書30頁)つまり、相関性は記載されていても因果までは書かれていない。

ところが、この報告書の概要版には、香川県側の記載のとおりに因果が書かれてしまっている。おそらく香川県は、概要版を根拠にコメントを書いたのだろうな、と。(概要版5頁を参照)

スポーツ庁担当者の書きぶりが悪かったのだと思うけど、これは明らかなミス(「映像視聴時間が長時間になると体力合計点が低下する傾向がみられる」だと因果が読めてしまう。「映像視聴時間が長時間の児童は体力合計点が低い傾向がみられる」ならば因果は切り捨てて関係性だけを示せる)。ただ、本編を見ればそれには気づくはずなので、香川県の回答も浅薄だなあと思います。

まあ、つまるところ、体力低下とスマホ等視聴時間の因果関係については特に論じられていない。

実はデータ間の相関性を示すのは案外簡単なのですが、因果関係までを立証するのは簡単じゃない、というか難しい場合が多いのです。

ここで何年か前に有名になった疑似相関サイトをご紹介しましょう。

ニコラスケイジの映画がリリースされると、プールの溺死者が増える。データ上は相関係数が出る(相関性がかなり強い!)のです。香川県の如く強権を発動して、アメリカの大統領がニコラスケイジの映画公開を差止めしたら、溺死者が減るんですよ。それをアメリカったら何もせずに。香川県議会に比べて何たる怠慢なんでしょうか。

とはならないわけで。一笑に付す話ですよね。

そもそも、学力と相関性が最も因果が強いと思われる生活時間は、スマホ・ゲーム時間じゃなくて勉強時間ですよ、おそらく(※未確認ですが)。だとしたら、よっぽど「1日x時間以上の家庭学習義務付けを条例化」の方が素直じゃありませんか?(是非は別として)

おまけ。長時間部活を禁止しよう。香川では。

学習院大学の長沼豊教授が、ちょうどこの2月に「運動部活動の活動時間と学力には「弱い負の相関」あり」との分析をまとめています。詳細は以下の、長沼教授のホームページ(分析結果PDFへのリンクもあり)を参照されたいのですが、

個人的には、スマホ・ゲーム時間を削った分を部活につぎ込まれたら学力下がるからさ、そんなに勉強させたいなら部活時間にも制限かけて勉強時間確保しないとまずいよぉ?と思うなあという話。

そもそも帰宅部より、そこそこ部活やる子の学力が高くて、部活ガッツリの子は学力が低いという構造、実はスマホの使用時間と学力の関係と似ていて、これ自体が統計のトリックだったりするのだけど、これはちゃんとした統計学者さんがどこかで書くだろう、うん。


(メモ:長時間部活をやる子、長時間スマホやる子は、比率としては少ないので、ちょっと成績ダメな子がいると一票の重みの都合で、平均点がガクっと下がる。で、分析時の時間軸が例えば「5時間以上」とかで切られると、廃人的な10時間戦士とかも入ってくるので、そういう子は勉強を疎かにしがちで成績が低い場合が多いかもしれない。逆に5時間1分の子は、成績優秀な可能性ありますよね)


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