フェアプレーポイントでの勝ち上がりはいけないことか、等

まあそうなるだろうなと思ったら、やはり炎上案件になった
「負けてもいいからカードもらうな」作戦について。
もう話題が一巡したと思いますが個人的な意見を。

まあたくさんの記事があるが、論点はこんなところでは。
1.フェアプレーによる勝ち上がりはダサイ、卑怯
2.ボール回しはアンフェアだからフェアプレーと対極
3.負けててボール回しは規定違反
4.試合後の会見の話

1.
日本のテレビは大部分が勝ち点、得失点差、得点数くらいしか順位表に
示していないが、実はFIFAのドキュメントを見ると、順位表に
FPP(フェアプレーポイント)が記載されている。

https://resources.fifa.com/image/upload/russia-2018-standings-fair-play-points-26-june.pdf?cloudid=ofsqal0tab7l0nernxwu
(6月26日段階のもの)

総得点でも決まらなきゃFPPを使うんだぜ!っていうのが
アピールされている、といっていいだろう。フェアプレーポイントで順位を決める場合がある、というのであればそこまで盛り込んで計算をするのは、出場者にとっていかにも自然である。

2.
引き分け狙いで両チームともに責めない、ということはしばしばある。
あるいは、勝ち越されたあと追いつこうとせず負けてGL2位通過を狙う、ということも間々ある。
そして、それによりFIFAから処分が下ったという話は寡聞にしてなんとやら。故意オウンゴールを除けばほぼない。
なお、FPPについてはカードの枚数で算定されるのだが、フェアプレーコンテストについては、ポジティブプレーへの加点、ネガティブプレー(遅延、シミュレーション等)への減点が加味されることになっている。FPPには「敢えて」遅延行為等が加味されていない。

フェアプレーコンテストについては下記の70頁以降を。
https://www.uefa.com/MultimediaFiles/Download/Regulations/uefaorg/Regulations/01/87/54/21/1875421_DOWNLOAD.pdf

3.
引き分けはまだしも負けてる状態でそれを放置するのは悪、という考え方もある。
しかしながらFIFA(JFA)行動規範は
「どんな状況でも、勝利のため、またひとつのゴールのために、最後まで全力を尽してプレーする」となっている。すなわち引き分け狙いもNGである。

引き分け狙いが責められるならばともかく、引き分け狙いが許容されるのであれば、最少得失点差などを目指すことも許容され得るのではないか。換言すれば「勝利のためでない」という意味では、引き分けを目指すのも負けを目指すのも等価値なのでは。

この点、朝日新聞記事
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180630-00000027-asahi-spo&pos=2
は、
>一方で外国から批判を浴びているのは、ポーランド戦の終盤が
>つまらなかったからでなく、勝利を目指さずに
>決勝トーナメントに進もうとしたことがフェアプレーでないからです。


これは少なくとも「勝利を目指さずに」だけでは処理しきれない話なので、嘘もしくは誤解だろう。
勝利を目指さずにGL突破、というのは決して珍しい話ではないからだ。それをフェアプレーでない、と言い出してしまうと、多くの国がまずいことになる。

今回の日本は「負けてなおGL突破という状況であった」という稀有な状況において、「FPPルールでの勝ち上がりにより」GL突破を目指す、という特異ケースであり、「(引き分けでもいい、でなく)負けでもいい」というのが批判を受けているのだろう。が、先述のとおりFIFAのルール上は引き分け狙いも1点差敗戦狙いも等価値と考えられる。

4.試合後の会見
https://www.sankei.com/sports/news/180629/spo1806290022-n1.html
逐語でないのでちょっと産経のこの記事にはバイアスもあるが、
確かに西野監督は「(負けている状態だが)このままで・・・」
ということを、記者の問いかけへの追認という形で認めている。
これは責を逃れがたい。
全世界誰がどうみても引き分け狙い、ないし1点差敗戦狙いに見えていた、としてもこれを認めるべきではない。
女子日本代表だと佐々木前監督、高倉監督がいずれも引き分け狙いを公言し問題になったことがあり、このあたりはJFAによる監督へのメディアトレーニングがあるべきなのではないかと思う。
実際、この西野追認を問題にされているジャーナリストも多いし、同感。である。

5.結論
引き分け狙いと最少失点差負け狙いは等価値と考えれば、最少失点差負けを狙うのは「カッコよくない」かもしれないが、鬼の子のように批判されるほどの話ではない。
しかしそれを公言するのをここ数年で三度(佐々木、高倉、西野)止められなかったJFAは猛省してください。日本のサッカーファミリーは毎回ヒヤヒヤしています。



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