毎月勤労統計の「大企業は全数(悉皆)じゃなかった」は何が問題?

三行まとめ
ここ数日の毎月勤労統計問題。シンクタンカーの目で気になることを。
・一般論から行けば491件の抽出は、統計的に妥当
・だけど、今回は「前提崩し」だから問題

あんまり書く気がなかったのだけど、橋本岳議員のblogosを読んで、うーん、と思ってしまったので。
https://blogos.com/article/350657/

>適切なサンプリングを行うこと等により、調査コストの適正さと推計値の正確さをできるだけ両立させることに、社会調査法や統計学の意味があるのです。ですから繰り返しになりますが、抽出調査とすることそのものが問題だとは一概には言えません
(中略)
>本当の問題は、500人以上の事業所についても実際には「一部抽出調査」なのに、「全数調査」という看板を降ろさなかった、ということにあります。

ここ。ここなのです。

一般的な調査の信頼性、という観点では合格(留意事項あり)

491件を抽出し、全員から回答貰いましたという話は、調査の一般論から行くと充分な信頼性があります。
調査業界でいえば385件あれば信頼度95%、誤差5%を実現でき、かなり安全、と捉えられます。491件となると、誤差は4.4%にまで縮められます。
(他県との接続、という点も)

でも、全数って言ってたじゃん!問題。

ただ、全数と言っていたものを抽出しているとなると、業種バランスを配慮していたのか。という問題は残ります。何せもともと全数やるべきところなのですから。今回の問題で、割り戻しをやったのだから、うまくできるようにはなっているのだろうけど。

でもう一点の問題。
この調査の大企業部分、悉皆調査を喧伝しているので、誤差0%を前提にしているのです。(下記リンクの5ページを参照)
富山県の解説がわかりやすいですが、従業員500名以上は目標誤差0%、となっています。悉皆なのだから当たり前ですが。
http://www.pref.toyama.jp/sections/1015/lib/maikin/-rep28/setsumei_chui.pdf

当たり前ですが、調査結果を読む人には、誤差率を前提に読む人もいる。

調査を読む側からすると、誤差0%と4.4%では話が違うのですわ。

ふざくんな!という話。

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