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美容メディア編集者と考える 「美しさの変遷 〜髪のこれから〜」

日々変わりゆく美容トレンド。いつの時代も女性が「美しくなりたい」と思う気持ちは普遍的だけど、「美の基準」は刻々と進化を遂げている。ヘアケア業界も例にもれず、変革が続く。そこで今回は、ファッション&ビューティメディアの編集者である八木由希乃さんをゲストに迎え、これからの美容、ヘアケアについて、㈱Jocy代表、鈴木みずほと対談しました。

ーーー時代によって美の基準はさまざまですが、美容意識は今、どのように変わっていっているのでしょうか?

鈴木 仕事柄、八木さんのほうがお詳しいと思うのですが、”装う美”から”素材美”へ、世の中の意識がシフトしてきていると感じます。たとえば友人と話していても、コスメよりスキンケアの話題のほうが上がりやすい。髪に関しても同様で、ヘアアレンジよりもヘアケアに対する会話のほうが増えた気がします。美容室でも、少し前であればでは髪のツヤを出すトリートメントを強く推しているところが多かったのですが、最近では髪を頭皮から健康にするヘッドスパをよりお勧めしているところが多いです。八木さんも”素材美”が注目されていると実感することはありますか?

八木 新型コロナウイルスの影響もあり、ファッションから美容、生き方まで、”本質的な美しさ”や”自分にとって快適であること”を求めているという声を、読者はじめブランド側からもよく耳にするようになりました。土台ケアやお家美容がとても盛り上がっていて、美容家電市場も活況です。自粛期間があったことで家にいる時間が増え、自分に手をかけるようになったという人が多いようです。そういったトレンドはまだまだ続く印象ですね。

鈴木 型にはまった美しさではなく、”自分に合っているか”がとても重要になってきていると感じます。最近ではモデルさんもスキニーな人だけではなく、さまざまな体型の方が増えましたよね。”痩せている=美しい”ではなく、”自分にフィットした体型=美しさ”になってきた。もちろん体型だけでなく、自分に合ったものが自分の美しさ、それが”素材美”に通ずるんですよね。

八木 美の多様性、ダイバーシティですね。さまざまな人種、体型を認めないことのほうが、むしろダサいという風潮に変わってきています。たとえばコスメブランドでは、ファンデーションのカラバリを増やしたり……消費者だけでなく、ブランド側も変革していると感じますね。

鈴木 ”素材美”って、自分を愛することなのかなって。以前はなにかを”装うこと”が美しさでしたが、今は”自分を愛すこと”が美しさ。素材美って、自分の持っているポテンシャルを上げていくことだと思います。

ーーーコロナの影響でさまざまな制約が生まれていると思います。美容にはどんな影響が出ていますか?

八木 コロナによる制約をネガティブに捉えるのではなく、違った美しさを追求していく方向に向かっていると私は思います。たとえばマスクを日常的に付けることが定着してきたことで、“マスクメイク”というものができました。マスクで顔が半分隠れていることをネガティブに捉えるのではなく、それを生かして美しくなる方法を見つけるという方向ですね。

鈴木 そうですね。さらにいえば、メイクには制約があるけれど、自分の”素材”に関しては、制約はない。たとえばマスクで顔は隠れてしまうけれど、髪は常に隠れず目に触れている部分。変な話、髪は化粧でごまかすことができない。”究極な美”だな、って思うんです。

八木 確かにそうですね。マスクってマットな質感なので、肌と髪にツヤがないとすべてがパサついたように見えてしまう。だからこそ、以前よりも肌や髪のケアが必要になってくる。そういったことがキッカケになって、”自分に手をかける楽しさ”に気付かされたような気がします。

鈴木 コロナの影響で髪や肌への意識は高まっていますよね。さらに、今まで”美は時間をかけることが大切”だったけれど、アウトソースできるものはアウトソースして、”効率よく美しくなること”が美徳になってきているような気がします。コロナで自分の時間が増えた人が多いはず、と思いつつも、時短や効率化が重視されるようになったと感じます。

八木 女性って、家にいるから暇というわけではないんですよね。”家にいる時間が増える=自分の美容時間をたっぷり取れる”わけではないというか。実際、私自身もそうです。在宅で仕事をすることで、より集中して仕事や家事をするようになりました。

鈴木 ”時間をかけず、効率的に”が、コロナ前もトレンドになりつつあったけど、コロナによってそれが加速した気がしますね。たとえば、電気バリブラシってすごく高いのに人気じゃないですか。それって、自宅で簡単に頭皮や肌もケアできるという、時短効果があるからかな、って。八木さんの仰る通り、お子さんがいたり、結婚していたりする人は、コロナでより忙しくなったんですよね。

ーーー働く女性の髪は、コロナでどう変わったんでしょうか?

鈴木 髪はセルフブランディングの一手になると思うのですが、働く女性の髪型について感じることはありますか?

八木 顔は整形をしないと変えられないけど、髪は簡単に変えることができますよね。仕事柄、モデルさんと撮影をする機会が多いのですが、ヘアアレンジだけで印象がガラリと変わることがあります。撮影する写真に大きな影響を与えます。

鈴木 ちなみに八木さんは少し前までショートヘアでしたよね。バッサリ髪を切ったキッカケや理由がなにかあったんでしょうか?

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八木 私、7年以上お世話になっている美容師さんがいるんですが、その方にたまたま勧められてショートにしました。大きな気持ちの変化があったわけではなかったんですが、その頃ちょうど、雑誌の専属ライターからフリーになり、やっと自信がついたくらいの時期でした。アーティストや女優さんなど、憧れの人にインタビューをする機会も増えたからか、ふんわり柔らかい雰囲気のライターというより、”この人になら任せられる”と思えるようなライターになりたかったのかもしれません。そんな気持ちとショートヘアがマッチしていたんだと思います。


鈴木 私もショートヘアにしたときは、芯が強く、凛としたイメージの女性になりたいと感じていた時期でした。ショートに対して、なにか共通意識がありますよね。たとえば、政治家の女性ってショートの人が多いじゃないですか。ショート=芯が強い女性というイメージがありますよね。ちなみに今はボブくらいの髪の長さだと思うのですが、ショートから伸ばそうと思った理由はありますか?

八木 1年半くらいショートを楽しんでいたんですが、それこそコロナになってから、個性を出せるのが髪と爪くらいしかない、と感じたことがキッカケです。そこで、髪を伸ばして印象を変えようという気持ちになったんですよね。

鈴木 たしかに、口紅を付けても全部マスクで隠れてしまうし、髪や爪に意識がいきやすくなります。

八木 ファッション業界ではここ数年カジュアルなものがトレンドでしたが、最近ではジャケットやボウタイブラウスなどのトラッドなものにトレンドがシフトしてきています。カジュアルが続いた反動なのか、私自身も今は少し女性らしいファッションを楽しみたくて、髪を伸ばし始めているのもありますね。

鈴木 実は私も今、髪を伸ばしているんですよ。おもしろいですね!

八木 ファッション業界の傾向は、世界的なファッションのコレクションがリモートになっていることも影響しています。複雑なデザインよりも、画面越しでも伝わりやすいような普遍的でクラシカルなアイテムを打ち出すブランドが増えている印象です。多くの企業でサステナブルな取り組みがますます推進されてきている今、過度なデザインで来年には着にくいものより、長く愛せるようなファッションを生み出していこうという流れもあると思います。

鈴木 一般消費者目線でもすごく思うのが、”華やかでいたい”という気持ちが強くなっていることです。自粛が始まった頃は、たまにしか外に出ないから華やかにしたい、家にいるときはカジュアルでいいやって思っていたのに、今は家でもキレイでいたい、という気持ちになりました。

ーーー変わっていくファッションの傾向。とはいえ、そもそも日本人の髪に対する意識は低い傾向にある?

鈴木 八木さんにすごく聞いてみたかったことがあって……。私、日本の女性って髪へのプライオリティが高くない気がするんです。たとえば、お金をかける優先度としても、ファッションやメイクに比べて髪は低め。すごく高そうなバッグを持っているのに、髪はあまりお手入れしていなさそう人も町中でよく見かけるので、とても不思議だったんです。最近はちょっと変わってきたかも、と感じたりもしますが、八木さんはその点、どうお考えですか?

八木 たしかに着飾ることに比べて、髪のメンテナンスはつい後回し、という方は多いかもしれませんね。それでも年々、髪のメンテナンスへの需要は高まっている印象です。メディアでも、ヘアケアの記事がとても増えていますよね。ヘアケアが注目されてきた要因の一つとして、ナチュラル志向のブランドが増えたことがあるかもしれません。たとえばシャンプーでも環境に優しかったり、肌にも優しかったりして、スキンケアも同時にできますよっていうアイテムが増えたからかもしれませんね。

鈴木 THREEさんのように、スキンケアアイテムを出しているブランドさんがヘアケアのアイテムを出していくことで、ヘアケアをすることが受け入れやすくなったのかもしれませんね。

八木 ヴェレダに人気の頭皮ケアアイテムがあるのですが、先日オンラインで参加した同ブランドの発表会では、そのアイテムを使った頭皮ケアをレクチャーしてもらえる時間がありました。

鈴木 スキンケアのブランドさんも、顔だけをケアして美しさを底上げていくのは厳しいから、頭皮に意識がシフトしていくっていうのは自然な流れですね。多くのブランドさんが、頭皮も肌と一緒に愛そう、という訴求に変わってきました。ユーザー的にも、頭皮環境も良くなって顔も引き上がるから、いいことですよね。

八木 それでいうと、プロのヘアケアが簡単に自宅でできるようになっていく、と思います。コロナの影響もあって、美容院に行くことが特別になって来ている今、せっかく行くなら、思っている以上にキレイになりたいっていう気持ちが高まるかもしれませんよね。とある有名美容室がお洋服を販売しているんですが、これが好調らしいんです。自分の髪もライフスタイルも知っている美容師さんは、もはや髪型を相談するだけの相手じゃなくなっていくのかもしれない。美容室は、自分の美を追求する場所になっていくのかもしれないですね。そのほうが続けて通いたくなるし。

鈴木 美容室はトータルな美を見つけに行く場所になっていくのかもしれませんね。たとえば、美容室にメイクや服の相談をするとか。メーカーさんからしても、顧客とのタッチポイントしてとてもいい場所だと思います。美容師さんってキレイな人が多いし、そういう人から提案されたコスメとか服って、とても刺さります。美容師さんにとっても売上げアップになるし、楽しそうですね。

八木 美容院に出かける楽しみがますます広がりそうですね。

■プロフィール

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八木由希乃
ファッション&ビューティメディア編集者
1984年、神奈川県生まれ。大学在学中に訪れたミャンマーで伝統化粧「タナカ」に出合い、化粧論に興味を持つ。卒業後、化粧品会社に入社。販売、広報職を経て、2015年にライターに転身。ビューティ、ファッションを中心に取材、執筆を行う。18年12月より出版社に勤務。編集者として主にタイアップ記事を担当するほか、キャリアに関する取材を行う。趣味はジャズと落語。


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鈴木 みずほ
株式会社Jocy代表取締役
美容室定額サービス「MEZON」を運営。大学卒業後、不動産ベンチャーに勤務。その後、サイバーエージェントグループで5年半、大手企業と事業提携を行い新規事業企画・開発に従事。新規事業ギネス更新。
2017年10月、株式会社Jocy設立。

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