テレワークとタバコとわたし【前編】
こんにちは。保健師の小林智美です。
新型コロナの影響で急速に広がっているテレワーク。
そのテレワークのかげで、こんな声が上がっています。
Aさん「子どもの前でタバコを吸うのは…と思って、今まで会社でだけ吸っていました。でも今、子どもは学校が休みだし、もともと家では吸わないルールだから、吸う場所がないの…」
そう、仕事環境の変化とともに喫煙環境も変わり、困惑している喫煙者が続出しているんです。
健康増進法の改正で吸える場所がますます減少
コロナ禍のかげに隠れ、あまり話題にあがっていませんが、2018年に改正された「健康増進法」がこの4月から施行され、望まない受動喫煙をなくす取り組みが、世の中では着実に始まっています。
つまり、このコロナ禍を乗り越えても、喫煙者には喫煙しにくい環境が待っているんですね。
「それならやめればいいだけの話でしょ?」ーータバコを吸わない人はそう思うかもしれません。でも、なかなかそうはできないのがタバコなんです。
どうしてタバコをやめられないの?
「意志が強くないと禁煙はできない」と聞くことはありませんか?
実はこれ、意思とはあまり関係がないんです。
タバコにはニコチンという物質が含まれます。
このニコチンが禁煙を難しくしているんです。
喫煙によりニコチンが肺に入ると、そこから血液に取り込まれ、わずか7秒で脳へと運ばれます。そして「ドーパミン」という幸せや満足感、快感を生む脳内物質を強制的に分泌させます。
でも、体内のニコチンが減るとこのドーパミンも一緒に減るわけですから、幸せや満足感もなくなり、イライラや不安が出現してくるのです。その結果、ニコチンを供給するために再びタバコを吸う……これを繰り返してしまうのです。
これが、いわゆる「ニコチン依存症」。
ニコチン依存症は脳の病気といえます。ですから、意志の強さだけでは禁煙は難しいんですね。喫煙者の実に70%がこのニコチン依存症に陥っていると言われているんですよ。
ここで思い出してほしいのが、先ほどのAさんのコメント。
「会社だけで吸っていました……」
ということは、裏を返せば「家では吸っていなかった」ということ。完全にはニコチン依存症に陥っていないのかもしれません。Aさんのようなタイプの方は、今このタイミングで禁煙に取り組んだら、比較的楽に禁煙できると可能性がありますよ。
喫煙は集中力をあげる?
「タバコを吸うと頭がすっきりして、集中できるんだ!」という方がいらっしゃいます。これ、実はニコチン依存症の方によくある都合の良いとらえ方なんです。
ニコチンの血中濃度が下がると、脳の覚醒レベルが低下します。喫煙するとニコチンが供給され、脳の覚醒レベルが回復されます。だからタバコを吸うと頭がすっきりした感じがするのですが、実際は、そこから30分もすると体内のニコチンが切れてまたイライラ。これって立派な禁断症状ですよね。
ニコチンが切れるたびにイライラしたりボーっとしたりしていれば作業効率は落ちますし、吸う場所を求めてひんぱんに外出していたら仕事に集中できませんよね。客観的には、喫煙がむしろ集中力を奪っているようにしか見えないわけです。
お子さんの面倒を見ながらのテレワークを余儀なくされているAさん。集中しにくい環境の中、タバコを吸えないイライラで更なる生産性の低下を招いてはストレスはたまる一方。
本当はこれを機会に禁煙できるといいのですが…。
加熱式タバコに変えたら家で吸っても大丈夫?
では、もう一人の喫煙者、Bさんのコメントも聞いてみましょう。
Bさん「マンションのベランダは喫煙禁止だし、近所の喫煙所もぜんぶ閉鎖されていて、私も吸う場所がないの。でも、加熱式たばこならまわりへの害がないから家で吸っても大丈夫よね?」
家族など、まわりの人への影響も考えているBさんの気持ちはうれしいですね。でも、ちょっと待ってください。
従来の紙タバコがまわりの人に影響を及ぼす煙には2種類あります。
*副流煙……吸っていない間にタバコの先端から出る煙
*呼出煙……喫煙者が吸い込んだ後に吐き出す煙
一方、加熱式タバコには副流煙がありません。そういう意味では、紙タバコにくらべれば周囲の人への影響は低いといえるでしょう。
これが近頃、加熱式タバコが人気の理由です。
でも、ココが落とし穴!
吸った後に吐き出す「呼出煙」はあるわけですから、加熱式タバコ(アイ○ス、○ローなど)にも受動喫煙のリスクは存在するんです。つまり、
紙タバコでも加熱式タバコでも、受動喫煙のリスクは発生する。
これが正しい知識です。
「テレワークを機に紙タバコを加熱式タバコに変えたんだよね」という方、残念ながら「これで家族も安心」と思うのは間違いなんです。
タバコを吸う場所がどんどんなくなっていく!! 😖
加熱式たばこに変えてもダメ !? 😣
いったいどうしたらいいの!!? 😱
そんな悲鳴がが聞こえてきそうですね。
そこで、次回は「テレワークとタバコとわたし 後編」を配信します。
テレワークは禁煙しやすい?禁煙しにくい?などについてお話しながら、テレワークにおける禁煙ポイントをお伝えする予定です。
どうぞお楽しみに!
文/小林智美(こばやし・ともみ)
産業保健師、メンタルケア心理士、アンガマネージメントコンサルタント叱り方トレーナー
さんぎょうい株式会社が提供する、はたらく女性の健康とキャリアプログラム「mezame(めざめ)」では、組織で働く従業員のみなさんが長くイキイキとキャリアを重ねるためのサポートをしています。
女性従業員のモチベーションアップ、定着、ライフイベントと仕事の両立支援等に課題をお感じの企業さまからのご相談をお待ちしています。
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