販売脚本:いまこそわかれめ

いまこそわかれめ

「ちゃんと仰げば尊し歌った?」
いつもの喫茶店。いつもの席。目の前の親友は不意にそんなことを訪ねてきた。
いつもと違うのは、卒業式だったこと。卒業しなくてはいけないのだということ。
親友の「仰げば尊し」講座が始まって、いつも通りにくだらない話をしながら、僕達は卒業していく。
卒業しなくては、ならない。

内容
「いまこそわかれめ」
アナグラム解説
あとがき

登場人物
諏訪玲奈(すわ れいな)
桐場泰司(きりば たいし)
店員


喫茶店。
席に諏訪玲奈が座って本を読んでいる。飲み物はない。
「仰げば尊し」を鼻歌で口ずさんでいる。
遅れて桐場泰司が入店。
諏訪、本に目を落としていて桐場に気づいていない。桐場、少し諏訪を眺めている。その桐場に気づき、店員、やってくる。

店員  いらっしゃいませ。一名様で?
桐場  あぁ、えっと
店員  あ。
桐場  え?
店員  いえ、なんでも。
桐場  えっと、あの席で。
店員  かしこまりました、ご注文決まりましたらお呼びください。

店員、離れる。

諏訪  おせーな
桐場  友達が多いんだよ。
諏訪  広く浅い関係の?
桐場  うるせーな
諏訪  高校卒業してさ、何人とその後も会うんだろうね。
桐場  本当にねー。
諏訪  あたしは、狭く深い関係の友達が多いからさ、どうせすぐ会うし、って、ぱぱっとね。
桐場  それで俺との約束に駆けつけてくれたわけだ。
諏訪  光栄に思いたまえ。
桐場  ・・・おぉ。
諏訪  なんかテンション低くない?
桐場  そう?
諏訪  うん。何?センチメンタル?
桐場  いやいや。あげるあげる!
諏訪  お店の迷惑になるからやめな。
桐場  なんだよ!
諏訪  しー。

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