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『バカ女26時』単行本1巻発売メモ

 上記作品有難いことに、5/17から単行本の1巻が発売されます!🎉🎉
また、たくさんの作品のリポスト等ありがとうございました(SNSが苦手なので、投稿してくださった浦助先生もありがとうございます)。

 1巻発売に際して、ありがたいことに多くの人に読んでもらえたので、なぜ二人の逃避先をベトナムにしたかを少し語っていければと思います。
※そもそも大前提として、殺人は犯罪ですし、フィクションなので色々と無理はありますが、無理の部分は温かい目で見守っていただけたらと思います。

逃亡先に求める条件
 作中では「ヨーロッパはやめよう」ということくらいしか触れていませんが、逃亡先の国選びには一応二つの条件がありました。まず、庇護してくれるだけの権力を持った協力者がいるというのは大前提のもと、そもそもその金持ちの「コネ(融通)が効く国」でないと厳しいです。次に、食にうるさい日本人が長期滞在ができるくらい「ご飯がおいしい国」。ここまでの条件で、ドバイと東南アジアあたりが候補として浮上していました。
 そこで絞り込むために、最後に追加した条件が「女性が活躍している国」です。この物語は結末はどうであれ、二人がそれまでの人生で失ったものを取り戻す旅の予定なので、二人が影響を受けるような、強くてかっこよくて面白い女性がたくさんいる国がいいなと思いました(二人が励まされるよううな男の人も、もちろんいずれ登場させたいです)。

裏メモですが、二人の人生が明けるよう願いを込めて、タイトルに26時が入ってたりします。

『バカ女26時』Episode2より引用

当てはまったのがベトナム
 調べていってみると、ベトナムが二人の旅のイメージにとても近い国でした。

 最近だとアマンダ・グエンさんという女性が宇宙飛行を行う予定ですし、そもそも女性の社会進出も想像を上回っていて、ベトナム統計総局によると、2020 年時点で 15 歳以上の女性の労働参加率は 68.7%と 世界平均の47%をゆうに超えているようでした。
参考:https://www.viet-jo.com/news/social/190308180743.html

 日本からアクセスできる範囲のネットニュースを簡単に調べた限りでも、かなり女性たちがさまざまな分野で活躍している印象があります。ベトナムについては女性史について下記のようなありがたすぎる本も出ており、自分なりに色々勉強することができました。

ハイ・バー・チュン(Hai Ba Trung)と多くの戦う女性たち
 
ベトナムでは歴史を遡ると何人もの女性が名を残しており、ハイ・バー・チュンが特にその代表格だと言われています。ハイ・バー・チュンとは、中国の支配期に、苛酷な圧政に対し戦った二人の姉妹の愛称です。

戦う女性たち、というと多くの場合社会と戦うというような意味合いが強く、暴力はそこまで伴わないことが多い印象なのですが、この姉妹は反乱を蜂起した首謀者なので、文字通り戦いました。二人の逸話を読んでいると、『キングダム』読んでいるような気持ちになってきます。作品に登場してもなんら違和感がない。この二人の詳しい説明は少し血生臭くなる上に長くなるので端折るのですが、この二人を筆頭に、ベトナムの歴史で名前を残した数々の女性たちの話を読み、私はベトナムの女性たちに他の国では見たことのない類の強さを見た気がしました。私はまだその強さについてうまく言語化できていないのですが、先ほど紹介した本では、その強さについてこう評されています。

ベトナムの歴史の過程で形成され長く定着してきた家父長制の元でのベトナムの家庭は、奇妙な特徴のある独特の構造を持つようになった。それは女性を拘束し束縛する場所でありながら、実際には女性が主人となっており、大黒柱になっているのであった!

『ベトナム女性史: フランス植民地時代からベトナム戦争まで』著:レ・ティ・ニャム・トゥエット(明石書店

アツコとユリが必要なことがあるはず

 専門家というわけではないので、執筆しながら取材をしたり、資料を集めたりしているのですが、おそらく…きっと‥アツコとユリが失ってしまったものを取り戻させてくれるだろう環境がベトナムだろうと思っています。なので、もしベトナムを愛する方で、逃亡先としてベトナムを選んだことで不満に思っている方がいたら、決して見下すような気持ちで選んだわけじゃないことは、1巻発売前のタイミングで伝えられたらいいなと思いました。

コネと賄賂は悪なのか

Episode8より 

 ちなみに、ベトナム自体は今賄賂について浄化を進めている最中だと思うので、5年後くらいにはまた変わっている可能性もあるのかなと思いつつ、やっぱり周りの話を聞いていると現在もまだ賄賂もコネも横行しているように思います。2023年時点でも、知人が会社でベトナム進出しようとしたものの賄賂がないと何も進まないので、経費計上で非常に困っていました。

 ただ、私個人の偏った考えですが、コネについては、大きな事件等では絶対にいいことではないけれども、人情が残っている国という風にも捉えられるのかなと個人的には考えています。この考え方は、国こそ違いますが『賄賂のある暮らし』(白水社)という書籍に影響を受けているのかなと思います(かなり面白い本なのでおすすめです)。土地とのコネクションがない、異邦人にはシビアできついですが、逆に言えばコネさえあればある程度やれちゃうというのはフィクションにとって大変ゆとりがあって助かっています。

主語を勝手に大きくして

 実際、本だけではわからないと思い、ベトナム取材の際にお世話になった通訳さんにも賄賂についていくつか質問したのですが(物語のあらすじを伝えた上で、そういうふうに起用されるのは嫌だろうかとという点も不安なので聞きました)、通訳さんはケロッとした様子で「賄賂については別に事実だからなんとも思わない」「むしろ賄賂が一切許されない仕事は大変そうで日本はかわいそうだと思います」という、なんとも人間臭い言葉をいただいたので、たった一人の意見とはいえ、勝手に主語を大きくして心の支えにさせてもらっています。ベトナムに縁がある方で読んでいる方がもしいたら、これからベトナムのいいところもいっぱい描ければと思うので、許しておくれ…と願いながら描いています🙇

そんなわけで『バカ女26時』よろしくお願いします

アプリ版の連載バナーと分冊版と単行本版でなんと全部イラストが違うので、好きな方を手に取っていただけると嬉しいです!

また、もしベトナムでの面白い体験談とかあったら、是非是非DM等で教えてください!

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