不毛

不毛会議 #12

「俺は出身高知だけど、関西人やから!!」

ここは会議室だ。大きな木の会議テーブルを囲うようにスタッフが着席している。

もはや、自分が会議に出席しているんだということを自覚する為、目の前の事実に定期的に目を向けなければならなくなってきた。

そんな目眩のような考えごとをしていたら突然爆音でアズナブルがシャウトしたのが冒頭の言葉だ。まるで自分に言い聞かせるように。

酔うと土佐弁が出るアズナブル。
「おんしゃあふざけちゅうがか!あ”?」
と、凄まれたスタッフは何人いただろうか。
凄まれ、殴られ、蹴られ、蔑まれのミシュランもびっくりのフルコース。
更に酒が入り酩酊モードに入ると胡散臭い関西弁を使いだす。

普段は標準語使いなのに突然の関西人宣言にただならぬ決意を感じた会議室。たしかに西か東かといえば西だろう。でもいわゆる”関西”ではない"四国地方"というのが一般的だろう。それでもそこにわざわざ関西だと線引きをねじ込んできたには理由がある。

そう。この日の会議で決まったのは「社内を大阪にする」という大掛かりな結論であった。言い出しっぺのアズナブルが”関西”でなければ説得力に欠けると判断したのだろうか。

しかし、自律神経すら失調どころか失踪または蒸発してなくなるくらい壮大なスペクタクルであった会議後、一週間しないうちにこのブームは綺麗さっぱり消えてなくなった。

この空気が読めず「そういえば大阪になってきました?」なんて聞いてはいけない。もし聞けば真顔で「ここ目黒だぞ?」と聞き返されるのがオチだ。
でも大丈夫あの会議は幻想や幻覚ではない。あなたは気が触れたわけじゃない。

アズナブルは「決まる」と飽きるタイプなだけなんだ。

つづく

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