不毛

不毛会議 #48

「早く車出せよ!」

深夜の六本木。

酔っ払いのサラリーマンと夜の華やかなネオンが煌めく街。
僕はアズナブルとサシで飲んでいた。
深酒となり終電がなくなってしまった。

当然タクシーで帰宅しなければならない。
交差点でタクシーを捕まえるのはもちろん僕の仕事だ。

他にも先に手を挙げてタクシーを止めたい客がいる。

「我先に」乗りたい訳だがここは日本。
こんなストリートにも秩序ってもんがある。
それが外国人観光客が1番驚く日本の素晴らしい文化だ。
だから僕は別の場所で捕まえようと構える。

ふと、振り返る。
すると当たり前のように順番飛ばしをしてタクシーに乗り込むアズナブル。

「なんてこった。」

ここは日本なのか?
それとも
アズナブルは日本人じゃないのか?
待っていた人に平謝りし後を追う。
既にタクシー乗りこんでしまってるアズナブル。
行動が速い。
置いて行かれてはたまらないと急いで行く。

さ、タクシーに乗ろうとすると目に飛び込んできたのは
タクシーの手前の座席に鎮座するアズナブル。
奥の座席には釣り銭を受け取っている前客。

「早く車出せよ!」

気が速い。
せっかちにもほどがある。

なんせ前客は釣り銭を受け取ったけど降りれないのだから。
見ず知らずのお客さんと一体何処へ行くのか。

「アズナブル、まだお客さんが降りてません」
「はあぁぁ?(隣を見て)お前は誰や?」

この繰り返し。
納得して貰うのに10分掛かりました。
だから六本木という街が未だに苦手。

つづく

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