不毛

不毛会議 #11

「お前出身どこや?京都?嘘だろ?ずっと九州だと思ってた」

もはや会議と言う概念を超越してしまっている。
いったいこの場は何なんだ?正気を失う前に会議をググってみたら

関係者が集まって(一定の手続きにのっとり)議題について意見を出し、相談すること。その会合。

と書いてあった。

落ち着けひとつひとつ確認しよう。

「関係者」
関係者は集まっている。アズナブルと俺。そして営業部5人と生産部から2人だ。皆んな服を作り利益をあげようとしている仲間だ。

「一定の手続きにのっとり」
何だそりゃ。一体何の話だ。手続きってなんだ?木に穴をあける鳥か?一定の手続きなんてものは無い。有るのは狂人の口から吐き出される「スポーツマンシップにもっこり」レベルな発言くらいなもんだ。

「議題について意見を出し」
議題はある。確かにあるんだ。"会社の未来"とか"販路拡大"とか。まともじゃないか。そして意見も出てる「ECサイト強化しようぜ」とか。どうだまじめだろ。しかしアズナブルの一言が全ての時空を歪ませるんだ。何なんだよ「廃人になる」とか「アホくさ」とか言って挙げ句の果てには「社内を大阪にする」ときたもんだ。

「相談すること」
相談している。確かに相談しあっていると思いたい。しかし何か解せない。相談してるのか?問診中か?「今日はどこがお悪いんですか?」「ドタマです」(真顔)のくだりか?

結論、これは会議ではない。

そんな人の脳内パニックなんか気にもとめずに「社内を大阪にする」と高らかに宣言した後、江戸だ浪速だと感覚的ではあるが、目指す目標が見えて余裕が生まれた様子のアズナブル。

本人はいたって楽しそうに、しかし真剣に一人一人の出身について順番に確認していく。
それはまるで隠れキリシタンを見つけ出す踏み絵だ。お前は江戸か、浪速か。執拗に無慈悲に確認作業は行われる。

そんな最中、目の前に居た毛深いスタッフに向けて放った言葉が、この言葉だった。
人間は見た目で9割がた判断しているという。
アズナブルも例外ではない。彼も人間なのだ。

つづく

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