不毛

不毛会議 #7

不毛会議

「アズナブルに席替えを促されて意味が分からなくて腹が立つので休みます」

この会社には席替えの文化がある。
席替えをする切っ掛けは些細なことなのかもしれないし、そもそも切っ掛けなんてないのかもしれない。

売上が悪い。とか
体調が良くない。とか
目覚まし占いが12位だった。とか
カラスが3羽とまっていた。とか
買ったジーパンが気に入らねぇ。とか
カレーが辛い。とか
箸が付いてなかった。とか
信号が全部赤。とか
最近構ってくれない。とか
何となく。とか

その号令は敵の奇襲攻撃を受けたかのごとく、突如として起こる。

「全部ひっくり返せ」

なぜか興奮気味に、ライバルの砂山を相手が見てない間にぶっ壊すガキ大将かのごとく悪ぶれながらアズナブルはささやく。

「ただの席替えですよね?」と聞き返すのは野暮だ。そんな事を聞き返さない、無垢な素人がターゲットになりやすい。
もしかすると席替えはリトマス試験紙なのか?アズナブルは意図して従順で、盲目的にイエスと答える骸を求めている。
今回は生真面目な新人デザイナーの一人が席替え責任者に指名させられ(続け)たことに一抹の不安を感じて欠勤したときの理由が上記だ。

入社後1~2か月くらいはさほど問題はない。
「おかしいな」と感じていてもたまたまそういう時期だったんだと、そう飲み込めるからだ。
しかし、3~6か月いれば(3か月を超えて残れる人間はすくないが)その「なんか、おかしいな」が「絶対ヤヴァい」と確信に変わる。
そして、この若きデザイナーの反応は典型的な症状である。多分鬱だ。医者じゃないけど何となくわかる。なんせ3ヶ月で彼が命じられた席替えは7回目なんだから。

こうなると、会議室だけでなく、会社全体が病院なのかもしれない。なら総合病院て感じか。

つづく

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