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不毛会議 season 1 #001ー#050

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とあるアパレルメーカーの会議室。 アズナブル=社長から毎日飛び出す 支離滅裂、奇想天外、叫喚地獄なワード集。 そんな言葉から生きることの奥義が見え隠れ。 ブラックユーモア人生指南…
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#人間模様

不毛会議 #1

不毛会議#1「馬鹿にもおびただしい種類がある、利口でもその最良のものではない」 トーマス・マン(ドイツの小説家) はじめに 「日常にこそ、特別なものが潜んでいる。」 「ツイていない」と感じる時ほど、とてつもないチャンスに接近しているのかもしれないし、「ツイている」と感じる時ほど、思いがけない不運に肉薄しているのかもしれない。 この当時、私は「ツイていない」と感じていた。 なぜならその時に働いていた会社のボスが毎日毎日、のべつまくなく理解できない発言を繰り返し精神的

不毛会議 #2

不毛会議#2「よくやったと褒め称えてやりました」 朝礼というものをいつの日からかやるようになっていた。 この前日はアジアカップで激戦の末、見事優勝を果たしたサッカー日本代表に向けてエールを送るアズナブル。 しかし、違和感がある。よくよく考えてみると彼はサッカーに全く興味がないはず。サッカーどころかスポーツに興味、関心があるなんて聞いたことがない。光に集まる虫が暗闇に集まらないのと同様、金にならないものには目を向けないのだ。 という事は、この話を通じて何か伝えたいことが

不毛会議 #3

不毛会議#3「俺たちは人間という動物をやってるんだけど」 スタッフに「素早く売れるものを作れ!」という話の中で出てきた表現。 私は私であり、俺は俺である。 禅の本を読むと瞑想と言うのは肉体的な自分と、本来の霊的な自分とを切り離しまた一致させることだと読んだ(たぶん)。 「アズナブルはそんな話をしているのか?素早く売れるものを作る話から、急にそんな深い話になっちゃう?」僕はひどく混乱した。 しかし、この視点は明らかに自分と言う存在を自分から切り離し、また人間と言う種から

不毛会議 #4

不毛会議#4「サッカー選手はバレーボールが嫌いです!サッカー選手でプロゴルファーになろうという人はいません!」 この言葉は、アパレル卸業を本業とする自社のEC小売通販業務の強化を進めていこうという話の流れでアズナブルの口から突然飛び出してきた。 餅は餅屋という言葉がある。 つまり、むやみに別の業界に行くのは良くない。 または、自分の稼業に集中しろと言うような時に使う言葉だ。 詳しいことは知らないけど、きっとバレーボールが好きなサッカー選手はいると思うし、プロゴルファ

不毛会議 #5

不毛会議「俺から会社取ったら廃人になっちゃうから」 会議室は変幻自在だ。 この発言を聞いたとき、ここが病室ではない事を確認しかけた。 白い壁、窓にはブラインド、大きな木の会議テーブル。目の前には漆(うるし)よりも黒く底の見えない黒い瞳をこちらに向けてどっしりと座るアズナブル。 病院も会議室も変わらないかもしれない。 "会社の未来の話"の際に出た発言だが、問診中と言っても大差ないだろう。 「どこか具合わるいところは?」 「ドタマです」(真顔) てな具合か。病院と何が違

不毛会議 #6

不毛会議「真剣に考えてたらアホ臭くなってきた」 「俺から会社取ったら廃人になっちまう」と 会社存続落語の後、数分考え込んだ挙句にムスっとした表情でアズナブルから吐き出された言葉である。 そもそも会議っていったいなんなんだろう? まず何らかの議題があるはずだ。 そして、参加者がそれぞれに意見やアイデアを出し合いベストな方法を議論して実行可能な結論を決定するんだろう。 「他所の会社」では。 そして結論は当然「アホ臭く」はならないんだろう。みんな一生懸命考えてるんだ。アホ臭く

不毛会議 #7

不毛会議「アズナブルに席替えを促されて意味が分からなくて腹が立つので休みます」 この会社には席替えの文化がある。 席替えをする切っ掛けは些細なことなのかもしれないし、そもそも切っ掛けなんてないのかもしれない。 売上が悪い。とか 体調が良くない。とか 目覚まし占いが12位だった。とか カラスが3羽とまっていた。とか 買ったジーパンが気に入らねぇ。とか カレーが辛い。とか 箸が付いてなかった。とか 信号が全部赤。とか 最近構ってくれない。とか 何となく。とか その号令は敵の

不毛会議 #8

不毛会議「今回の展示会の原価計算だけどさぁ、ほとんど間違っているわ、計算しなおして値段上げるしかないな」 展示会という定期的に行う新商品の受注会がある。 これが我々の商売の軸になっていた。 日本中からバイヤー達が展示会に集い、その数日間で半年くらいの発注を置いていくのだ。 この仕組みは受注生産という利益確保がまず担保される。バイヤー達も店舗の毎月の予算をやり繰りしながらもオーダーを置いて行ってくれる。言わば商売でもあり、信頼関係の場でもあるのだ。 その最終日に原価が違うと

不毛会議 #9

不毛会議「今日から社内を大阪にします!」 会議という定義なんか、もうどうでもいい。 陰鬱ムードの社内環境改善の為にアズナブルが出した解答はこれだ「どうだまいったか」と言うかのごとく高らかな宣言であった。 そう。何だかんだ言ってアズナブルも血の通った人なのだ。 社内の空気感、雰囲気の大切さ。 そう。人と人が存在する以上、人間が醸し出す"空気"というものを感じないわけにはいかないのだ。 思いやり、助け合い、小粋なジョーク、肩をたたき合い、上手くいけばハイタッチできる。 「な

不毛会議 #10

不毛会議「お前は出身江戸か?江戸じゃん?」 「社内を大阪にする」 そう宣言したら、やる事は決まってる。そう関東人狩りだ。 ノリの陰気な関東人は「教育せなあきまへん」なのだ。 東京?関東?しゃらくせい。 江戸の商人(しょうにん)じゃない、浪速の商人(あきんど)だ。 今は浪速の商人(あきんど)のノリが欲しいんだ。 「もうかってまっか?」 「ぼちぼちでんな」 と、そうリズミカルに言え。 浪速の商人ってのはそうやってリズムで商売するんだよ。 でも、アズナブル痛恨のミス。 「江戸じゃ

不毛会議 #11

「お前出身どこや?京都?嘘だろ?ずっと九州だと思ってた」 もはや会議と言う概念を超越してしまっている。 いったいこの場は何なんだ?正気を失う前に会議をググってみたら 関係者が集まって(一定の手続きにのっとり)議題について意見を出し、相談すること。その会合。 と書いてあった。 落ち着けひとつひとつ確認しよう。 「関係者」 関係者は集まっている。アズナブルと俺。そして営業部5人と生産部から2人だ。皆んな服を作り利益をあげようとしている仲間だ。 「一定の手続きにのっとり

不毛会議 #12

「俺は出身高知だけど、関西人やから!!」 ここは会議室だ。大きな木の会議テーブルを囲うようにスタッフが着席している。 もはや、自分が会議に出席しているんだということを自覚する為、目の前の事実に定期的に目を向けなければならなくなってきた。 そんな目眩のような考えごとをしていたら突然爆音でアズナブルがシャウトしたのが冒頭の言葉だ。まるで自分に言い聞かせるように。 酔うと土佐弁が出るアズナブル。 「おんしゃあふざけちゅうがか!あ”?」 と、凄まれたスタッフは何人いただろうか

不毛会議 #13

「お前はどこぞの小作人じゃい(怒)!」 これは現代の話で江戸時代の話ではない。 確かに交わされる会話は会議室というより奉行所のようではあるけど。 これは会議中、アズナブルが発した言葉。 この名言は会社OBなら誰もが知る殿堂入りフレーズだ。 時は売上アップに苦しんでいた時期。 「売上の為にどんな戦略をとるか」という議論の最中であった。 良かれと思ったであろう「営業で外回りするより電話で営業した方が効率良いんではないですか?」とさりげなく提案したスタッフ。 「そりゃそうだ

不毛会議 #15

「お前は今まで、どこで何しとった?」 アズナブルの面接を受け入社してきたグラフィックデザイナーに向けて、出社初日に発言。 履歴書は確認し面接もしているにもかかわらず、この発言の真意は何だろう。グラフィックデザイナーであれば経歴こそ見るべきポイントではないのか。 アズナブルを観察してきた結果、彼は恐らく人を判断する時に右脳や感覚、気配で判断をしているのではないかと感じる時が多々あった。 ビジネスのスイッチが入るとあまり右脳(的な感覚)を使わない印象。どんな冷酷な手段でも