不毛会議 #13
「お前はどこぞの小作人じゃい(怒)!」
これは現代の話で江戸時代の話ではない。
確かに交わされる会話は会議室というより奉行所のようではあるけど。
これは会議中、アズナブルが発した言葉。
この名言は会社OBなら誰もが知る殿堂入りフレーズだ。
時は売上アップに苦しんでいた時期。
「売上の為にどんな戦略をとるか」という議論の最中であった。
良かれと思ったであろう「営業で外回りするより電話で営業した方が効率良いんではないですか?」とさりげなく提案したスタッフ。
「そりゃそうだ」と参加者一同納得の中
発言者に向けて激昂し発言。
想像してくれ。
のどかな草原。
数匹のガゼルが草を食んでいる。
一匹が喉を潤すために川へ赴く。
首を傾け瑞々しい水面に口を入れた瞬間、水面を破り巨大なワニが脳天をガブリ。
そんな感じ。
一同口あんぐり。
アズナブルの定番の表現の一つに「小作人」というのがある。
「欲しいものは自分で(どんな手を使ってでも)手に入れろ」という事を常日頃から発言し実践しているアズナブルにとって、これは哲学を超えて信仰の域に達していた。
狩りをするかの如く自ら全国津々浦々どこでも参上し、意地でも(どんな手を使ってでも)オーダーを取るという泥臭さ。
そんな働き方(生き方)に計り知れない美学を感じていたんだろう、「電話でパッパと効率良く営業」するという事に対し、アズナブルの逆鱗に触れた(のだと思う)。どうやらアズナブル爆弾の導火線は機雷の中にあるようだ。火をつけた事にすら誰も気がついていない。
狩猟民族は出て行ってなんぼや、足で稼がんかい!と捲し上げるのをただただ呆然と見つめるしか術を知らない我々。発言者ガゼルは全身をあっという間にワニに飲み込まれてしまった。そして残ったのは、1分前にはそこに居なかったかのような静粛のみ。
そんなアズナブル、5分後には
「それさぁ電話で営業した方が早くねーか?移動費払わんぞ」
と無表情でシレッと言いのける。
勿論、全員内心は
「エエエエエエエエェー!?」ですよ。
そうして僕らは本質的には「社内の小作人」なんだという事実を刷り込まれていくんです。
【小作人】
地主の土地を契約により借り受け、小作料(時には高額になる)を払って耕作または養畜の事業を行なう農民。
つづく
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