「銀河英雄伝説 Die Neue These」のOP曲「Binary Star」の歌詞に感動したので和訳作ろうとしたら和訳じゃなくなった【コラム】

こんにちは、銀英伝の推しはヤンとキルヒアイスです。>>>>どっちも○ぬ<<<<

OP曲が素敵だなあと毎週聴いていて、先日やっと歌詞を見る機会があったのですが、その歌詞がとても銀英伝ワールドナイズで感激したので、そのポイントを誰かにわかってほしくて和訳を考えてたらあまりの語彙力のなさに和訳じゃなくなりました。

でも頑張ったので読んでいただけたら嬉しいです。以下長文、読みづらいですがご了承ください…

構成上、歌詞の引用あります。


※5月16日、コメントでのご指摘を受け、単語の意味間違いを修正しています。

≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡≡


An adorable star we can see from afar
遥か見ゆる輝く星
(※ここのadorableですが、これをこの場合においてかっちり伝える日本語が他に思いつかないのであえてこの訳語にしてます)
But a truth it belies
(※ここのbutに注目(後述))
All who enters her dies
そこに住む全ての人は死にゆく運命
(※星の三人称は女性形なのでここではherです)

Hear the beating of wings as the pendulum swings
世界がどれほど大きく揺らいでいるかわかるのに
And we can’t believe it’s ever gonna end
それでもまさか終焉(おわり)が来るなど信じられようか
(※ここのandに注目。先程は逆接but.
これは何に対するbutか?→adorableに対するbutです。adorableは、畏怖、崇拝、崇敬すべきというような意味。つまりそれだけ栄光に満ち溢れんと輝いているように見える星【なのに】それもまた死にゆくのだということを、人が【どれだけ信じられないか】を伝えるbutなのです。
今回のand.こちらは順接。日本語的にはこちらがbutじゃないの?という感じですが、andには流れるように続くイメージもあります。
すなわち、翼がバッサバサバサササササ!とはためく煩いくらいの音に例えられるほどにはっきりと知覚できるはずの、世の中の揺らぎが【耳をすまさないと聞こえない(listen to)】ではなく、【自然と聞こえてくる(hear)】はずの音のようなものだが、そんな世の中に流され流され、現実を受け止められない人間のありようがandに表れています。ここでの【星】は、同盟軍の【星、故郷】的なものかもしれないです。銀英伝は最終的には帝国軍が勝つので)

You know blood is thicker than water
赤の他人より家族が大切だろうが、
(※「血は水より濃いでしょ?」という感じ。英語圏のことわざのようです。「遠くの親戚より近くの他人」の反対の意味。bloodは血縁によるつながり、waterはいつ解消されるかもしれない淡い人間関係を表しているらしいです。ここでは、文字通りの親戚親兄弟の意味だと解釈するなら、次の一文とつなげて、たとえば帝国側の人間もやはり家族が一番大事で、帝国内のその他大勢の生き死には本当はそこまで気にはしないのだけど、でもやっぱり同盟側の人間の安否を気遣うよりは帝国側の安否を気遣う、という感じなのかなと思います。すこーし違いはしますが、ラインハルトにとっては姉のアンネローゼだけが大事でやってきたのが、いつしか帝国全土のことを考えるようになった(この場合はどちらかと言うと野心ではありますが、ラインハルトにも国の腐敗を憂う気持ちがあったのだと私は解釈しています)のと似たところもあるのかなと。同盟側、逆も然りですね。)
(※※追記※※ このことわざの解釈として、「互いに流れた血を無視して同盟と帝国が和解することはできない」というような訳ができるとコメントで教えていただきました。すごい!なるほど!)
But you just want everyone to get along
それでも他の国民も生きていてくれればと願ってしまう
(※get alongは、うまくやっていく、普段通りやる、みたいな感じのイディオムです。ここは恐らく【生きていてほしい】というニュアンスなのだがあえてget alongが使われてるのも意味があると思う。
【死なないで】と願うことも出来ないが、【生きて】と強く望むこともできない状況で、ただ人は今までどおりなんとかどうにかならないもんかと【思う(心の中で望む、want)】だけしかできないということです。desireみたいな強い願い、祈りでもないし、hopeとかwishみたいにこうだといいなーなんて希望的観測もできない状況なのですね。神様に願うこともできないのかもしれないし、あるいは神様に祈るほどまだ切実な問題だと実感出来ないでいる状況の方かもしれません。だからなんとなく、【自分の中だけで思う、望む、外に出さない(want)】んですね。ただそのニュアンスも日本語で短く表現出来ないのでこの訳語にしています。あとここでのeveryoneは多分、同盟と帝国両方合わせた全員としての「みんな」ではなく、同盟人ならば同じ同盟の民の皆、帝国人ならば同じ帝国の民の皆、という「みんな」だろうかと。)

For the candles in the darkness
Burning up the sorrow
(※あえてここ訳しません。理由は後述。それにしてもおしゃれな表現ですね。日本語でもこれくらいの比喩は使いそう。闇を照らす光とするために悲しみを糧にしているんですね。悲しみに火をつけて蝋燭とせよ、みたいな。悲しみをバネに道を切り開こうとしている、みたいな。ここだけ見ると綺麗ですね)
There’s no end to sadness
We didn’t learn
悲しみに終わりなどないんだ
(※逐語訳すると、悲しみに終わりなどないと我々は学んでこなかった過去形、です。ここではおそらく、過去から学んでこなかっただろう?でもわかりきってた事じゃないか!みたいな憤りを表す一文がここの【we didn't learn】なのではと思います)
For the broken hearted people
Diamonds now surround us
(※candles~のところ含めてここ正直うまい訳語思いつかん。心が傷ついてるんですね人類。戦争でかな。peopleとusがわざわざわけられてますね。usが戦う人なのではないかな。銀英伝でいえば、前線で宇宙で戦う人達がusですよ。peopleは安全なところにいる、一般市民。家族を亡くしていて心は傷ついているのかもしれませんが。このdiamondは文字通りダイヤモンドのような煌めきなのでしょう。何の煌めきかって?【the candles burning up the sorrow】です。
つまりこのthe sorrowって、このブロークンハートなpeopleの悲しみなわけですよ。それを背負って、軍人に戦えって言ってんですよ。それを闇を照らす光、つまり道標にしろと。もっと言うと、一般市民の無念を晴らすために、それだけを理由に軍人は戦えっつってんですね。だからそのあとの【out of mind, 気が狂った】状態になるしかないわけだ。訳せるわけないわ)
So out of our mind
Leave the past behind
だから前だけ見ていよう
(※だから気をおかしくして、過ぎたことは後ろにおいておけ、前だけ見てろと言ってるんです。まあ戦争って人殺しだから気をおかしくしなきゃやってられんですね。【so,だから】が、candleやdiamondをふまえた【だから】なのがすごく残酷ですね、皮肉効いてる)
(※補足すると、あるいはここは、「悲しみに終わりはない→闇を照らす蝋燭の火がなくなることはない→それをダイヤモンドのように価値ある輝きと信じて戦い続けなければならない」というどうしようもなさや軍人の苦しみを表現しているかもです)

We’re a binary heart
人類は、二つの主義にわかれている
(binaryというのは、二つでひとつ、みたいな意味の単語です。we=binary heartということですね。
つまりここではweが人類、binary heartは人類が独裁主義の帝国側と民主主義(一応)の自由惑星同盟の二つの主義、heartから成る、ということを言ってるのかなと。heartを使ってるから、心でもあり感情でもあり、心の臓たる人間の主柱みたいなものでもあるというニュアンスを伝えてくれてるのでにくい表現)
Tear each other apart
Growing from the same stem
They were us. We were them
(※こなれた日本語訳ができねぇ…つまりは根っこは同じ、同じ【人間】なのに、別個に考えて心を痛め涙するんですね。ちなみにstemは根っこではなく茎ですが。元は同じ枝から育った花だったんですね。かつては彼らは自分で、自分は彼らだった過去形なんですね。銀英伝だと、同盟と帝国は元は同じ地球の民で、同盟側は帝国から逃げて新たに拠点を構えたわけで、なのに互いを敵として認識していることについての歌詞ですね。
おそらくtear each other apartというのは、同盟は帝国の戦死者のことを想っては泣かないし逆も然り、ということを言ってるんだと思います。日本語だと否定形になる表現が英語だと肯定文(普通の文)で表現されてるってよくあること)
(※※追記※※ コメントで、動詞のtearには「裂く」という意味があると教えていただきました。こなれた訳だと「互いに引き裂かれていく」という感じのようです。)
On a course to collide
このままだとぶつかる
Is it strength not to hide?
隠れられる距離もない?
Let the politics decide you’re not a friend
政治にやつらは友ではないと決めさせろ
(※面倒くさくなってきたので逐語訳になってきました…つまり、このままbinary heartのままでいれば、双方は衝突まっしぐらコースなわけですね。隠れられない距離ですか?→衝突しないように隠れるのに充分な距離もないのでは?→どうしようもない、という感じ。
you're not a friendのyouは、binary heartの相手側、つまり自分じゃない方ですね。ここ、a friendで単数形ですね。帝国にいる人間達、同盟側にいる人間達、としてではなく、帝国を形作っている思想主義、同盟側を形作っている思想主義のこと、つまりbinary heartの片方を指してるから単数形になってるわけですね。友ではないなら殺していいのさみたいな戦争によくある考え方。それを決めるのは政治ですね。一触即発まっしぐらな未来で、避けられそうにもないので戦えー!なんですね。戦うためには大義名分がいるから、それは政治が決めろー!なんですね。相手は敵で味方じゃないから戦争していいわけだ。ここでan enemyなのではなくa friendなのも良いですね。隣人ではあるわけだ。でも友達じゃないから攻撃していい)

You know blood is thicker than water
But you just want everyone to get along
For the candles in the darkness
Burning up the sorrow
There’s no end to sadness
We didn’t learn
For the broken hearted people
Diamonds now surround us
So out of our mind
Leave the past behind
(※重複してるので割愛)

Binary
A centrifugal force
Pushing us far away
(※バイナリーは、私たちを互いに遠く距離をあけて押し出す遠心力のようなもの、って言いたいんだと思う)
That’s our eternity
(※that=a centrifugal force=binary. このバイナリーは人類にとって永遠に続く命題、摂理、真理、的なことですね)
Binary
We can’t escape the force
Crushing us.
Gravity is our eternity
(※crushには「押しつぶす」という元の意味合いがあるので、pushと掛けてるんだと思います。我々を押し出すのみならずそのまま潰して壊してしまう諸刃の剣みたいな遠心力みたいな力、人の持つその力がバイナリーで、それから人類は逃れることは出来ない。だって重力は永遠の真実だから。みたいな感じなんだと。
ここだけだと急に観念的な話ですが、つまりなぜ世界が終わるかというと、人類にはバイナリーがあって、故に元は同じひとつの種族なのに分かり合えず衝突し争い合う、そして滅びるのだ、という、歌詞の一番から一貫したテーマをバイナリーの一言でまとめてる。バイナリーというのが人類の業だと言ってるんだと思います。)



読みづらかったと思いますが、ここまで読んで下さりありがとうございました。何が言いたかったかと言うと、繰り返しの部分では観念的な話になってはいますが、この曲の歌詞そのものが銀英伝の世界観に則ったものであり、美しいメロディーに乗せて銀英伝の物語そのもののようなシビアな人間の業をこの短い歌詞にまとめているのがあまりに素晴らしいなと思ったので、少しでも歌詞を読んだ時の自分の感動を誰かに伝えたかった、伝わって!ということでした。

バイナリーという単語をこの世界観に充てたその発想がすごい。


最後に一応意訳を置いておきます。高校の英語だったら酷い点とるだろう文法無視した意訳だけどわかればよかろうなのだ。

曲のタイトルとしては宇宙用語としての「Binary Star」、つまり連星でもいいと思います。自由惑星同盟の星と銀河帝国の星は連なっていて正しく象徴的連星といえるからです。ただこの場合は、やはり無理に訳すこともなく、銀河帝国と自由惑星同盟をふたつまとめて英語ではこう表現している、というふわっとした解釈でもいいと思います。タイトルからして既に世界観を踏まえている…だと……?




『Binary Star』

An adorable star we can see from afar
遥か見ゆる輝く星よ
But a truth it belies
All who enters her dies
住まう者は死ぬ運命(さだめ)

Hear the beating of wings as the pendulum swings
世界がどれほど大きく揺らいでいるかわかるのに
And we can’t believe it’s ever gonna end
それでもまさか終焉(おわり)が来るなど信じられようか

You know blood is thicker than water
But you just want everyone to get along
誰しも家族の命こそ大事だが、
戦争に行った者にも生きていてほしいとは思っている

For the candles in the darkness
Burning up the sorrow
悲しみよ燃えん 闇を照らす光となれ
There’s no end to sadness
We didn’t learn
悲しみに終わりなどないが
For the broken hearted people
Diamonds now surround us
大切な人を喪い傷ついた国民が為
我々を煌めく光が照らすのだから
So out of our mind
Leave the past behind
前だけ見ていよう
余計なことは考えるな


We’re a binary heart
私たちはふたつでひとつだが
Tear each other apart
引き裂かれていく 敵のために涙は流さない
Growing from the same stem
They were us. We were them
元は同じ茎から育った
彼らは我ら 我らは彼らだったのに
On a course to collide
Is it strength not to hide?
このままでは衝突を避けられぬ
Let the politics decide you’re not a friend
だがあれは友ではない 敵だ

Binary
A centrifugal force
Pushing us far away
That’s our eternity
バイナリー
それは遠心力
我々を押し出す永遠の力
Binary
We can’t escape the force
Crushing us.
Gravity is our eternity
バイナリー
抗うことのできぬ力
我々を押しつぶす
重力よ永遠なれ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?