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宅建試験で世界が変わるかもしれないと思う話。

前回、「宅建取ったら人生変わる」は割と的を得てると思う話。というnoteを書いたところ、なんと❤が50を超える反響を頂きました。勉強用アカウントでもなく資格学校講師、不動産屋でもないただの趣味アカウントが書いた記事でここまで伸びるのは大変嬉しいことです。いや、嬉しいというか驚きの方が大きいですね。本当にありがとうございます。(普段上げている趣味の記事も伸びると良いな、と思うのはここだけの話。)

前回の記事では私が宅建試験を受けることになった経緯と実際にどのような勉強をして合格に至ったかを記しましたが、今回は前回書ききれなかった部分について触れていこうと思います。

宅建試験タグの定番ランキングの上位にまさか自分の記事が載る日が来るとは…

Ⅰ.3500万円事件

私が宅建試験に向けて勉強していた際、主な勉強場所は職場でした。自宅で長時間の勉強が出来ないという点もそうですが、仕事の合間にまとまった休憩時間があり、スキマ時間の活用にも繋がるという点が大きい理由でした。

職場で勉強をするとどうなるか。周囲の人の目に付きます。

ある時から、同僚や先輩からの不動産に関する質問が多く寄せられるようになりました。

「実家を出ようとしているんだが、費用はどのくらいかかるか。」
「おすすめの物件はないか。」

という質問から

「住宅ローンの借り換えの相談をしたい。」

という質問まで幅広く。
流石に最後の質問については、実務経験も無く現段階で宅建士ですらない自分にはどうにもならないので断りましたが、残りの質問については宅建試験の知識の向上に繋がるかもしれないと思い、付き合ってあげることにしました。

私自身、実家を出て初めて一人暮らしをする際には10回を超えるほど内見をしました。今思えば、賃貸なんて巡り合わせなので迷っていても一生決まらんだろという気持ちですが、当時は少しでも良い物件を探そうとひたすら回数を重ねていました。

さて、宅建士証を手にした方ならお分かりかと思いますが、知識と実務は異なります。理論はあくまで理論なのです。もちろん実務は理論の上に成り立つものですが、宅建士証を手にした人が明日から不動産屋に入社して賃貸マンションの媒介契約を一人で交わせるか?というと業界経験が無い人では厳しいと思います。私もそうです。しかし、活かせる知識もあることにはあります。

ある日、いつものように職場で勉強をしていると同僚から話しかけられました。

「らぴで、宅建の勉強してるよね?」
「そうだよ。」
「ちょっと相談に乗ってもらいことがあって…」

また一人暮らしの相談かな、と思って話を聞いてみると違う様子。

「実は、3500万円のマンションの契約を止めたいんだ…」

当時、職場ではワンルーム投資が流行していて仲間同士での勧誘行為が盛んに行われていました。同僚も勧誘を受けて話を聞くうちに、元手が少額で資産にもなり節税対策にも活かせるという好条件から契約書に署名捺印したとのこと。しかし、3500万円の新築マンションを35年ローンで組み、果たして売り抜けられるのか。契約後にそんな心配が大きくなり、不安になったため契約を解除したいという話でした。不安なら契約するなよ。

ここでまず頭に思い浮かんだのが8種制限。クーリングオフという言葉の方が一般的でしょう。

(事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等)
第三十七条の二 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について、当該宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(以下この条において「事務所等」という。)以外の場所において、当該宅地又は建物の買受けの申込みをした者又は売買契約を締結した買主(事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く。)は、次に掲げる場合を除き、書面により、当該買受けの申込みの撤回又は当該売買契約の解除(以下この条において「申込みの撤回等」という。)を行うことができる。この場合において、宅地建物取引業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償又は違約金の支払を請求することができない。
以下略

宅地建物取引業法(施行日:令和六年五月二十五日)

いきなり堅苦しい条文を書いたせいで戻るボタンを押されては困ります。
要するに、宅建業者が自ら売主のときクーリングオフが適用されますよという内容です。しかし、これには期間や相手方などの例外があり、前提として宅建業者の事務所で契約を交わした場合は適用されません。

「契約の申込みはどこでしたの?」
「(相手方)宅建業者の事務所」

アウトです。クーリングオフは適用されません。宅建業者の事務所が対象外なのは、契約する買主が自ら足を運んでいるため。買主から申し出た場合の買主の自宅や勤務先も対象外になっていますが、これは正常な状態での判断が出来たでしょう、という理由からだそうです。8日間なら契約解除できるでしょ、が世間のイメージですがそう簡単なものでもありません。

クーリングオフが出来ないと分かると、すっかり落胆してしまった同僚。相手に騙されたわけでもなく自らの意思で契約している以上、こればかりはどうしようもありません。しかし、まだ手は残っています。手付解除です。

(手付の額の制限等)
第三十九条 
(略)
 宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであつても、買主はその手付を放棄して、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
 前項の規定に反する特約で、買主に不利なものは、無効とする。

宅地建物取引業法(施行日:令和六年五月二十五日)

また条文かよ、なんて言わないで。
不動産の契約をする際に、最初に手付金を要求されることがあります。簡単に述べれば、その手付金を捨てるなら契約の解除が出来ますよというお話です。か弱い買主とプロの宅建業者とでは、不利を被る可能性が高いのは前者。そうした状況を防ぐべく、買主が保護されているのです。

さっそく同僚に契約書面を見せてもらいます。すると、手付金は10万円と記載されていました。つまり、10万円を捨てれば3500万円のローンから逃れることができるということ。本来ならば、契約後の解除は損害賠償をしなければなりません。損害賠償額は最大で物件価格の20%。単純計算で700万円の出費。700万円と10万円の比較、するまでも無いですよね。

実際問題、相手業者が騙したわけでもなく、単に買う側の一方的理由で契約を解除をすることは相手に迷惑がかかります。しかし、買う側も10万円という金銭的な負担を強いられているので、喧嘩両成敗のようなものです。もちろんいつでも手付解除できるわけではなく、クーリングオフの時のように「相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。」という例外が設けられています。

後日、同僚の地元の法律相談センターの助言を基に手付解除通知書を作成し内容証明郵便を送付。結果として手付解除に成功しました。相手業者からは「銀行とのパイプに傷がつくことになる。おたくはその損害賠償ができるのか。」という脅迫を受けましたが、法律で定められている行為を単に行ったまでです。当然に認められた権利の行使です。相手の気持ちを察すると気の毒には思いますがね。

相手業者からの脅迫を受けた際に同僚は諦めようとしていました。しかし、本心では契約を解除したいのに自責の念から契約解除を諦めるというのは馬鹿げています。この先、自らの意に反して35年間3500万円を払うのか?私は何度も説得しました。10万円という安くはない授業料を払ってるんだ、誰にも文句を言われる筋合いはないと。法律相談センターの職員に同じことを言われるより、同僚の自分から言われた方が“効いた”のではないでしょうか。

そもそも上記の事例は、同僚が地元の法律相談センターに行っていればすぐに手付解除という話に行き着く話でもありました。しかし、相手業者からのしつこい連絡や自らの責任で契約をしたという思いがあったせいか、どこにも相談できないでいたようです。身近に宅建を勉強する同僚がいたので相談をしてみようという気になったと本人は言っていました。私が居なくても解決できたであろう事例ですが、法的に解決できても、まず解決に至る一歩を踏み出すことは一人では難しかっただろうと思います。

自分の持つ知識が誰かを救う。そして、その知識をもって誰かの支えになる。宅建を勉強していて良かったな、と思う出来事の一つでした。

Ⅱ.成功体験を持つこと

宅建試験合格後に書類集めで訪れることになる東京法務局。
訪れるのは最初で最後かもしれない。

前回のnoteで一度宅建試験に落ちた話を書きました。その後、翌年の宅建試験を受けて合格することになるのですが、それまでの一年間は何をしていたのか。落ちたその日から早速勉強を再スタートさせたのか。

いいえ、勉強は一切やめました。

宅建試験再チャレンジする人の中には、落ちたその日から早速勉強を始める人もそこそこいるようですが、私にとってそれは苦痛でしかありません。一年に一回しかない試験に向けて今まで費やしてきて、また一年追加で費やすことになると思うと、到底モチベーションなんて上がらないのであります。

では、何をしていたのか。
別の資格取得に向けた勉強をしていました。

ドラクエなどのRPGモノをやったことある人なら、途中のボス戦で行き詰って投げ出したくなる気持ちに共感できるかと思います。そんな時、例えばマリオカートなどの別ジャンルのゲームをプレイして気分転換したりしませんか?何回やっても勝てない時は、何回やっても勝てないのです。(謎の小泉構文)

宅建試験もそれと同じで、落ちたその日からまた宅建業法の目的とは…なんて出来ません。半年間で勉強してきたのに、一年間費やすなんて無駄に思えてしまうのです。でも、勉強の意欲はある。どうせなら新しいことを学びたい。だからこそ、別の資格取得を狙ったわけです。

私は、日商簿記3級の勉強をスタートさせました。

日商簿記3級は、

業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格。

基本的な商業簿記を修得し、小規模企業における企業活動や会計実務を踏まえ、経理関連書類の適切な処理を行うために求められるレベル。

日本商工会議所Webサイト

とあり、財務諸表を実際に作るまでが試験となっています。とはいえ、経理の経験も無く、大学で会計学を学んでいるわけでもない私に簿記なんて出来るのか。それこそ、資格学校が必要なのではないか。

いいえ、日商簿記3級も独学合格が可能です。
宅建がそうだったように、日商簿記でもYoutubeの出番です。

Youtubeでは日商簿記3級の講座が多数上がっていますが、中でも絶大な支持を誇るのがふくしままさゆきさんの動画です。

(注)宅建に引き続き特定の動画を紹介していますが、一切紹介料などは受け取っておりません。

なんと、このふくしままさゆきさんの動画。テキストも問題集も不要であり、リストの動画を見ているだけでそのまま試験に挑めてしまうという優れもの。まずは書店に行ってテキストと問題集を…という必要も無いのです。ここまで来ると、必要なのは試験の受験料のみ。コスパ最高。

なお、テキストと問題集が欲しいと思った時は、CPAラーニングを活用すると良いです。
なんと、CPAラーニングは日商簿記2級までのテキストと問題集を無料でPDFにて配布しています。それも書店で売られているものと全く内容です。しかも、実際の試験に対応した模擬試験も無料で受けることができます。

日商簿記検定は、2級までであればCBT方式での試験が受けられます。CBT方式とは、全国にあるテストセンターのPCを使って受験するスタイルのことであり、ほぼ毎日設定されている試験日時や会場を自由に選択することが出来るのです。ペーパーテストではなくPC操作で回答するため、そのクセをも模擬試験で克服できるという非の打ち所がない仕様。

あくまでこの記事は宅建試験に関するものなので詳細はこのくらいにしておきますが、私は翌年の4月から宅建の勉強を再スタートするつもりだったので、それまでの空き期間を日商簿記3級に費やし、無事に一回目の試験で合格することが出来ました。

CBT方式の場合は、受験したその場で合格判定が出て合格証書もPDF配布。
ちなみに何点で受かったのかは禁則事項です。

日商簿記3級に受かったことでモチベーションが上がり、それを維持したまま翌年4月からの宅建試験に向けた勉強を進めることが出来ました。

ここで大事なのは、成功体験を持つこと

去年の不合格を引きずったままだと、どうもモチベーションが上がらないどころか、次は絶対合格しなくてはというプレッシャーが生じます。もちろん、絶対合格するぞという気持ちは大事ですが、それが焦りとなり知識が頭に定着しないという負の連鎖が起きる可能性があります。
そこで、自分なりに高い低い問わずハードルをもう一個設けて、これを乗り越えることで成功体験とするというものです。人は成功すると嬉しく思う生き物。落ちた気分を上げるにはもってこいの方法です。

計算はちょっと…という方には3級FP技能検定がおすすめ。いわゆるファイナンシャルプランナーですが、なんと不動産に関する項目が試験範囲となっています。そんなの、宅建試験の勉強で蓄えた知識の出番ではないですか。実は私はFP3級を取った際、ノー勉で挑んで受かってしまいました。不動産分野の問題は全問正解し、他の分野も基礎的な知識で合格出来ました。もちろん、その部分は人によって異なるとは思いますが、不動産部分が省略できるだけでもメリットなのではないでしょうか。
3級FP技能検定は、なんとこの2024年4月からCBT方式へ移行しました。つまり、いつでも受験が可能になったということです。

資格は何でも構いません。自分にとって挑戦してみたかった資格、興味のある資格なんでも良いです。大事なのは、自分で決めること。自分が決めたことだからこそ、本気で取り組めるというものです。

Ⅲ.”世界”とは何か

宅建試験に受かると世界が変わるのか。

いいえ、何も変わりません。あくまで”世界的”には。

では記事タイトルの「世界が変わるかもしれない」の”世界”とは何か。

それは、自分の世界を指します。

宅建試験に受かったからといって、紫綬褒章が貰えるわけでも戦争が無くなるわけでもありません。でも、少なくとも自分の世界は変わると思うのです。

宅建試験は合格率が約17%。100人受けて17人しか受かりません。確かに司法試験や司法書士、社労士に比べたら難易度は低いですが、誰でも受かるわけでもありません。知り合いの不動産屋曰く、不動産会社の社員ほど合格率は低かったりする(根拠は無い)らしいです。

そんな資格に自分の実力だけで受かったとき、色々なことを感じることでしょう。私は、学ぶことの楽しさを得ました。

元々社会人になったら勉強を最低限にして生きようと考えていました。でも、思いがけないキッカケから宅建試験を受けてみて、学ぶという行為が楽しいと感じられるようになりました。

哲学者ソクラテスの「無知の知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。学びは”もう知っている”と思ったときから停滞する。生涯学習の重要性について注目されている今、常に学びを得ていくことがやがて自分に良い影響を与えてくれるのではないかと私は思っています。

3500万円事件の時に紹介した手付解除も、手付金がもしゼロ円だったら。契約時は、手付金不要なんて良い会社だ!と契約をして後から契約解除がしたくなったら。世の中は知らないことで満ち溢れています。

Ⅳ.独学に必要な力

あ!これ宅建で勉強したやつだ!の典型的な例。
いままで見向きもしなかった看板も、つい足を止めて見てしまいがち。

前回のnote記事を見て、宅建気になってるんだけど相談したいという方から実際にDMを貰いました。まぁ、note記事の最後に連絡くれたら相談乗るよ!と書いたからなのですが、本当に連絡が来るとは正直思っていませんでした。

現在、その方には自らの経験を基にアドバイスを適宜行っています。しかし、私は専任の宅建士でも資格学校講師でも無いので勉強自体は教えられません。私に出来ることは、モチベーション維持です。

独学のデメリットは、何でも一人でやり遂げなければならないということ。疑問が湧いても自力で調べて解決しなければなりません。また、勉強のペースも自ら設定しなければならず、初受験では試験の全容を掴みにくいことが独学の大きな問題点でもあります。
そこで、私は勉強の進め方や動画の活用法などを伝授しています。独学に必要なのは、何でも自分でこなせる力。そのためには勉強を教えていても意味がないのです。

もし、この記事を見ていて独学で勉強をしているが孤独であるという方がいらっしゃいましたら、是非XのDMへ気軽に連絡してください。話ならいくらでも聞きます。お金も要りません。勉強を教えるでもないのに、対価は取りようがないです。でも、寿司は奢ってほしいです。

つい数日前の2024年6月7日、正式に今年度の宅建試験の試験日が公告されました。試験日まで約半年。これを読んでいただいた方が一人でも多く合格できますよう祈っています。

※3500万円事件の同僚は、当noteへの掲載許可について快諾してくれました。この場を借りて御礼申し上げます。

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