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俳優演出-俳優演出は話あうことから一歩が始まる

では高度でハードな要求のやり取りを成立させる為にはどうすれば良いのでしょうか?

自主制作の現場では素人さんか又はそれに近い人と働く事が多いと思います。自身の経験では、俳優さん探しは以下の様なものでした。

①SNS等で公募する
②友人に頼む
③芸能事務所に依頼する。(もちろん有料)

日本の場合①〜③のうち、どれを選んでも、俳優としての可能性が未知数の方が多いです。
その未知数の中から、まずはどんな人を選べばいいのでしょうか?

大事なのは ”やる気“ “情熱” “好奇心”
これは最低限の条件です。
もちろん、これだけでは意味がありませんが、これが無いと何も始まりません。
この3つがあれば、可能性があります。
素人さんをどうやって“役者に変身させるか”考えていきましょう。

前提として共彼らと通認識を確立する事が大事です。

①演技とは何か?俳優とは何か?を考えさせる。

過去記事を参考に、こちらの質問をぶつけましょう。


そして、その答えを自分が思う答えに ”導いて” いきましょう”
大事なのは ”否定しない事“ また “ヒントを与えながらも俳優自身が答えに辿り着く事” が重要なのです。

例えば
「演技とは何か?」の問いに
「役になり切る事」と答えた場合…

「では、“役になり切る”とはどういう意味なのか?」
「それは本当に可能なのか?」

と、質問形式で話し合っていきましょう。
その質問は最終的に監督の考えに誘導できる形で進めていきましょう。
また、そこで重要なのが相手の考え。
ひょっとしたら、思ってもみない素晴らしい答えが返ってくるかもしれません。その場合は多いに監督が共感した事を伝えてあげて下さい。

この話題を十分に話し合った後はこちら…

②演技とはハードな仕事である事を認識させる。

“仕事” であると認識してもらいましょう。
"仕事" と思う事はとても大切で、責任感や義務が生じてきます。
そして、監督自身が同じように役者に対して責任感と義務を認識する事が大事です。

仕事と認識してもらう為には安くてもギャラを払うというのはとても有効です。

自主映画の現場の場合、いや映画の現場は常にお金がありません。
10円、1円でも安くしたいのは分かります。
しかし、現実としてタダの仕事はタダなりの仕事しか要求できません。

以前にも言ったように、俳優への要求はとても難しく大変です。
もし演技をするのが仲の良い友人ならば、監督の方が遠慮して思う様な要求が出来ません。
中途半端に仲がいいだけに相手への譲歩、妥協、嫌われたくない、という意識が無意識のうちに働きます。そうなると【監督】と【俳優】という関係性ではなく、ただの【友人】になってしまいます。
実は役割の自覚はとても大切です。その為に、まず始めに①の質問をし、十分に語り合う必要があるのです。その話し合いの中には【監督】と【俳優】の関係性の共通認識を作り上げる意味も含まれているのです。役割の自覚と共通認識を互いがきちんと持てれば、この後の作業が大変円滑に進みます。また、演じる相手が友人の場合、金銭のやり取りは監督自身の本気度や相手の意識を変えるのに有効に働く場合があります。(それは友人以外でも同じですが)

また、忘れてはいけないのが相手は素人です。
素人は “俳優という仕事がどんな意味で大変なのか” を知りません。
これを認識しないまま、闇雲に指導しても理解できません。

”何が必要で“
“その目的を達成する為に多少辛い思いをしてもらう可能性がある事”
"でも、それはいい映画を作る為に必要である事"

をきちんと伝え、話し合っていきましょう。

ここで大事なのが、監督も相手の話しを聞くこと
相手が何を思い、どういう認識で”演じること“を考えているのか、きちんと知りましょう。
もし、相手と自分との間に温度差があれば、容赦なくその人と仕事するのは止めましょう。

自主映画のいい所は金がない分、時間がある事。
納得できる人をしっかりと見つけることが重要になります。

余談になりますが、実は私がポーランドで学生映画を撮った際はカメラマンや編集マンにはお金を払いませんでした。また学生の場合は役者さんでもタダで演じてもらう事もあります。
(卒業した役者さんには、どんなに安くても、ほぼ例外無くギャラを払います)

もちろん学生ということもありますが、ウッチ映画大学の学生は3年生にもなると外でプロとしてお金を貰って仕事を始めます。
外でお金を貰える仕事が出来る人間が、なぜタダ働きしてくれるのでしょうか?

それは“常に技術を磨きたい” “お金がもらえる仕事では出来ない体験がしたい”という飽くなき向上心と好奇心からです。その為、もちろん企画が面白くなければ引き受けてくれません。彼らにとって信頼=面白い企画という認識があるのです。
信頼関係とプロ意識さえあれば金銭が絡まなくても素晴らしい仕事が出来ます。もし、あなたが自主制作現場や低予算映画でそういう人に出会えれば幸運です。

ただし、タダで働いてくれた人にも “メリットがある” という事が前提です。
そのメリットは “確実に経験になる”という前提です。
さらに "良い作品が作れる" と言うのが何よりもメリットになることを自覚しておきましょう。

そして、そう云う作品になる為にどうすればいいのか、常に考え行動して下さい。

監督は、スタッフ全員のメリットの為に働く。その意識が大事です。
監督には責任があるのです。だからこそ、要求が出来るのです。
そのことを覚えておいて下さい。

私も今までに多くの失敗を繰り返してきました。上記の意識が足らないことも多々ありました。今は自分がそういう考えに至ることができた環境に身をおくことができています。それはとても幸運なことかもしれません。皆さんも多くのチャレンジをしていくことになると思いますが、失敗を恐れずに、一歩踏み出してみましょう。

追記として金銭はあくまで、手段と一つの誠意の形である事を覚えておきましょう。

大事なのは役割と仕事の内容、『いい作品を作る』という共通の目標を共有できるかです。

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