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映画を撮る : ショットとカットの違いって何?

さて、シナリオを映像化する為に必要な作業として【コンテを練る】という作業があります。

コンテとはどのような方法で撮影するかが書かれた映像の脚本だと思って下さい。
当然ですが、撮影前にシナリオに沿ってどのように撮影するかを決めます。
大まかに分けて絵コンテ字コンテという物があります。

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これは正式な物ではないのですが私が書いた絵コンテです。
ここには

①シナリオのどの部分からどの部分まで撮影するか
②登場人物の動き
③カメラ指示

などが書かれています。

絵コンテ、字コンテの詳しい書き方は別の機会に説明するとして、コンテを描く為に必要な知識があります。

それは【ショット】の種類を知る事です。

コンテは脚本と同じようにスタッフと情報を共有する為に使います。
これを具体的に知らなければ、カメラマンやスタッフに指示を出す事が出来ないのです。

そして、コンテを練る作業というのは、言ってみれば監督の醍醐味。どのように撮影するかによって同じシナリオでも映画は180度違った物になってしまいます。

これら、ショットをきちんと理解し、それぞれがどのような意味があるかを知る事は映画監督にとって大事な知識となるのです。その為にはまずショットとは何かをきちんと理解せねばなりません。

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【ショット】【カット】の違い

まず、日本では多くの人が【ショット】と【カット】を混同して使っている傾向があるように見受けられます。

具体的にいうと【ショット】とは、撮影現場で監督が「よ〜い!アクション!!」と撮影を始め「カット!!」と言ってカメラを止めるまでのひと続きの映像の事を言います。

この様に撮影したままの無編集の物を【ショット】と考えましょう。
ですので、基本的に撮影前の絵コンテの段階で考えるのが【ショット】。
編集の段階で使用するのが【カット】になります。
【カット】は【切る】という意味ですが、言葉の通り編集によって切られた映像の事を言います。なので、1つの【ショット】から複数の【カット】を生み出す事が可能です。

よく日本では【ワンシーン・ワンカット】などと聞きますが、これは1つのシーンを1回の撮影(ワンショット)で表現したシーンの事です。
1つのショットを編集して頭とケツの要らない部分を切り取って1カットにしているので【ワンシーン・ワンカット】でも間違いではないのですが、海外ではこの言葉は使いません。意味が通じない事も無いですが、正確には【マスター・ショット・シーン】と言います。

(原則として、ここでは英語名称、考え方で説明していきます。日本で使っている用語とは多少の違いがあるかもしれませんが、ご了承下さい。)

②【マスター・ショット】

【マスター・ショット】とはシーンの頭から終わりまでを通して撮影されたショットの事を言います。
【マスター・ショット・シーン】との違いは、編集する事を前提に撮影されている事です。

現在、撮影の基本として1シーンに1ショットは【マスターショット】を撮影します。
通常、1シーンを作り上げるのにカメラの位置や人物の大きさを変えて複数のショットを撮影しますが、そのうち、最低でも1つのショットを頭から終わりまでショットを割らずに撮影するのです。
その理由は色々あるのですが、最大の理由は撮りこぼしが無いようにするため。撮影は時間との戦いです。下手したら予定通り撮影できない場合があります。もし、マスターショットを撮影せずに、長いセリフのシーンを頭から順に撮影していって、時間が無くなって最後まで会話が撮影できなかった…などといった事態にならない為に、バックアップ的な意味も兼ねて撮影します。
(私個人はこの考え方は好きではないのですが、現在映画業界では常識的な考えになっています。)

さて、編集を前提に撮影すると言いましたが…

例えば、AとB、2人の人物が会話しているシーンを撮る事にしましょう。

映画では頻繁に、登場人物のアップが交互に出てきますよね?
その場合、わざわざ1カットずつ、カメラを止めて撮影しているのではなく、AとBの顔のアップを1ショットずつ、マスターショットで撮影し、後で編集しています。

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そして、シナリオの中の必要な部分だけ、カメラ位置や大きさなどを変えたショットを追加で撮っていきます。

ちなみに、長いセリフがあるシーンなどは、途中で役者の為にショットを割って撮影する場合があります。しかし、同じカメラの位置、画面の大きさの場合、ショットを割っていたとしても、それがシーンを通して撮影されていればマスター・ショットとみなされます。

さて、ショットとは何か分かりましたか?
次回は具体的なショットの種類を説明していきます。

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