見出し画像

C.「世界にひとつ」には2通りある。

自分の作品を正当に評価されていないとお悩みの方、はたまたコンテンツは無料という信条をお持ちの方、こんにちは。映像は無料ですが写真は有料の作家、九条イツキです。シェアって難しいですね。

例えば身近なところからどうでしょうか。僕はモノを作ったり貰ったりした時、それを他の人に見せたり贈りたくなります。スターバックスでフラペチーノを頼んだら、写真を撮ってLINEしたりします。

ではここで、物を贈られる側に立ってみてください。贈られてきた物が、例えばダンボール箱一杯のシイタケだったらどうでしょう?食べきれず困りますよね。逆にそれが世界にひとつしかない指輪だったら?結婚すら考えるかもしれません。

これを言い換えれば、「譲渡者と授受者の関係性は、譲受される物の希少性に負っている」といえます。もちろんそんなことは当然なのですが、ひるがえって考えてみると、<写真>はどうでしょうか?簡単に複製できます。なので写真とは、たくさんのシイタケと実は同じかも知れません。

そこで、これからひとつの話をシェアをしたいと思います。原典と複製の関係性のシェアです。

なぜならば、「世界にひとつ」には2通りあるからなのです。


1. 原典と複製を分け隔てる方法

さて、前章の「シュレーディンガーの猫」という問題とその答え、で「世界にひとつ」とは生命であり、「物理上」では生命でないモノでも「形而上」で同じような操作をして「物理上」に無理やり照応させれば生命と同じような「世界にひとつ」を達成できるのでは?という仮説をたてました。全く意味がわからない、という方もいらっしゃるかもしれません。

ですがこの仮説は、歴史的にいってすでに可能と証明済みの話なのです。

それはキミがオカシイという方向けに順をおってみると、そもそも物理的に複製が難しいものには希少価値があるとされていますよね。金やダイヤモンド。歴史をひもとくと、その昔は香辛料や本といったものも希少でした。

面白いのは、それを複製する方法を誰かが発明してしまうことです。誰でもご家庭で胡椒がつかえるようになります。すると希少価値がなくなってしまいます。結果的にいえば、金の卵を生むニワトリを殺してしまうんです。

そういうわけで、そんな複製を管理しようとする人達がでてきます。流通量をあらかじめ決めることで、「世界にひとつ」を維持しようというんです。

それはなにも物理的に複製が難しいものに限りません。貨幣、書籍、音楽、ゲームなどなど、ありとあらゆるものの複製数、いわば<生と死>が「形而上」で規定され、それが「物理上」に照応するよう不断の努力がなされています。現代社会の基盤ですよ。

とはいえ、複製できるものを一手に管理しようというのですから、警察権力があり、複製技術を囲い込め、人海戦術もとれる、そんな集団でないと全く務まりません。国家だとか、グローバルカンパニーだとかですね。

ですのでこれが、良くも悪くも、「世界にひとつ」をつくる方法のひと通り目だということです。

2. 固定概念の転換

それでは!ということで、ここで件の<写真>について考えてみましょう。どうでしょうか……?そうです。写真は簡単に複製できます。過去のある時期は、そうではなかったかも知れません。しかし今は、そうなっています。

なので写真は頼もしいジャイアンがいないと管理できないし、管理されていない写真はダンボール箱一杯のシイタケとあまり違いはない。

終わり。

経絡秘孔のひとつを突いた……お前はもう、シイタケている……。


と、思っていました。

ですが、常識はたまに変わります。大量のシイタケも天日に干せば長持ちするかも知れません。ヒントはでていたんです。オカネという名のヒントが。ご存知の通り、中央集権でなくても管理できるシステムとしてBitcoinが発表されていたんです。

今までは、貨幣といえば国家の管轄でした。強力な中央銀行が流通量を管理し、警察権が偽造者を取り締まり、国家最高度の技術が複製を阻止する。それをBitcoinは、全て自分たちで賄ってしまうというのです。

コインの流通量をプログラムが決定し、取引履歴を共有することで偽造を防ぎ、暗号化技術の粋を集めて世界的な取引を安全にサポートする。素晴らしいですね。とても個人では真似できません。

ところがこれを聞きかじったのが、一個人でも運用できる『ネット名簿登録』のヒントになりました。

さて、それではさっそくその『ネット名簿登録』のアイデアについて詳しくお話ししようと思うのですが……それだと全く伝わらないと思いますので、少し遠回りしたいと思います。

ここまででもうA4ページにまったく収まらないのに、まだ遠回りをしてなにをするかというと、上記Bitcoinの「取引履歴を共有することで偽造を防ぐ」という点について詳しく見ていきたいと思うのです。

それはシステムとしてのオカネの成り立ち。社会の原点の話です。

3. 取引履歴の共有とは?

そもそもオカネはどうしてできたのでしょうか?物々交換の代替物だったという説が以前は有力でしたが、最近は負債記録のためだったという説が脚光を浴びているそうです。まあ本当のところは分かりません。しかしその本質をつくような事象が研究されているらしいです。

僕が耳にはさんだのは、南太平洋のとある小さな島の話。その島では石をオカネがわりにしていて、石が大きければ大きいほど価値があるんだとか。


ある時、島の勇者がいいことを考えました。

最長老が話していた伝説の島、いっぺん行ってみてぇなあ。すっげぇ大っきな石がごろごろあるっていうぞ。舟で1週間もかかるって言ってたけどよ、そんくらいならオラならわけないもんね。見たこともないような大石を運んできたら皆ビックリすっぞ!

そこで勇者は遠くの島まで行き、巨石を積んで戻ってきました。

ところがなんということでしょう。

勇者の舟は沖合まで来たところで嵐に遭い、その石を海へ落っことしてしまったのです。

わっちゃー!積んできた石が無駄になっちまった。せっかく皆にみせて驚かせようと思ったのによ……勇者は港に集まっていた島民たちに肩を落としてそう報告しました。

しかし最長老はいいました。そうガッカリなさんな。沈んだ石の持ち主は勇者じゃ。ここで見ていた皆がよく知っとる。

それで勇者は大金持ちになったのでした。

めでたしめでたし。


というお話です。

これを聞いていったん思います。フン、まったくくだらない地球人とかいう未開人の話だ、石なんかいくらでもそこらに落ちているだろう、そのうえ水没した石のために報酬を支払うなんてバカげている。

実際その通り。ですがもういちど考え直すと、本当のところはもう少し複雑な事情があったのではないのかとも想像するのです。ここには裏事情があるけれども語られていない。それで"文明人"にこの話を馬鹿げた話のように思わせているのでは?と。

僕が想定したその裏事情とは……


まず島でできる仕事は限られていて、なにがどれくらい大変か皆が分かっている。しかも島の住民全員が知り合いで、誰がどこで何をしているか分かっている。そういう前提条件があります。

例えばの話、ある人は沖合で一生懸命漁をしていて、ある人はちょっと怠けて島でシイタケを採っている。それが島民の間でよく知られているとします(シイタケが生えているかは知りませんが)。

ある日、漁をしている人がたまたま魚が獲れなかった。そこでその人はシイタケを採っている人に、「余っているシイタケ三本ください」といって石をひとつ渡しました。夕食はシイタケです。

シイタケはそんなに難しくないので、「またこんど魚が獲れた時に、一匹くれれば石を返すよ」といって三本渡します。その島では、魚獲一匹労力はシイタケ三本採取労力と同等の価値があるという相場があるためです。

そんな一生懸命に漁をしている人なのですが、島民の間でこいつは見どころがあるなという事になりました。そこである時、遠くの島まで行って大きな石を獲ってくるという、島の一大事業に取り組む「勇者」に抜擢されることになったのです。

シイタケの人がやっぱりちょっと怠けて島でシイタケを採っていた頃、選ばれし勇者は命懸けで大海原を航海し、なんと無事戻って来た!ところが湾に入った所で、なんということでしょう。たまたま嵐に遭って、石を落としてしまった。

けれど見どころのある男が島の一大事業に取り組む「勇者」に選ばれ、もう少しのところまで石を運んできたという取引履歴は島民全員が知るところでした。

なので、海に沈んだあの石にはシイタケ365本採取労力相当だったという相場がつきます。ですから、勇者は水没している石を担保にシイタケ365本を獲得できました。

めでたしめでたし。


というわけなのです。

つまり島民達は労力という共通のものさしを背景にした取引を行っていて、取引履歴は島民の間で共有されている。そして石は、その取引の記録のために使っているに過ぎないという事です。

ここで例えば、この話を聞きつけたニートをしていると噂のワルが石の偽造を試みたとします。拾ってきた石や水中に沈んでいる石を指差して、「アレオレの石だぞ」「オレにもシイタケくれ」とシイタケの人にいってきた。

もちろんそんな偽造は通用しないですよね。取引履歴の無い落ちている石はシイタケ1本の対価にもならない、となります。

4. 『ネット名簿登録』

ということで、ある条件下に限りにはなりますが「取引履歴を共有する」ことが偽造を防ぐ理由についてかみ砕いて説明してみました。そしてよくよく考えてみると、これと似たような事は皆様のご家庭やお勤め先でも起きている。そんなことはありませんか?

要するにシステムとしてのオカネの本質とは、偽造されない取引を行うという一点にあり、取引履歴が共有できさえすれば、形にとらわれる必要はない。そういう事がご理解いただけたのではないでしょうか。

これが全世界にステークホルダーが大勢散らばっていて、誰も把握できないほどの量の取引をしていたり、取引履歴を匿名にしておくためには、Bitcoinくらいのシステムが必要になってくると思います。

なのですが、一個人のウェブサイトのような場合は、上記の島と状況が同じです。<石>を<写真>に置き換えて考えます。ステークホルダーも取引する物も数が限られています。そして履歴を匿名にしておく必要も、それほど必要ではありません。記帳も公開もできます。

そこで『ネット名簿登録』の出番です。

写真をお譲りの方に名前を伺い、所有者としてインターネット上に公開しておくだけです。それでステークホルダーは取引履歴を確認できます。所有者が独自に取引を行って新たな所有者に写真を譲渡した場合、その取引履歴を再度公開します。そうされていない場合は、独自取引以降の取引が無効扱いになります。

以上が取引履歴を共有することによって偽造を防ぐ『ネット名簿登録』の仕組みです。ビックリするほど簡単ですね。

『ネット名簿登録』要件

前提条件1:一作品毎の数量は初めに限定され、枠の追加はない物とする。
前提条件2:作品のサイズでミニマムプライスが決定される。
前提条件3:所有者とサイズ・交換限度は公開されていて、誰でも閲覧できる状態となっている。

実行その1:登録を行う際、名前と連絡先を伺って登録証を発行する。
実行その2:登録証と状態の悪くなった作品の返送により交換対応を行う。

他条件の1:作品と登録証の譲渡は可能。あらたな所有者は登録証を本部に郵送する。登録を上書きし、新たな登録証を発行する(旧所有者からの連絡も必要)。
他条件の2:登録を行っていない作品に交換対応は不可 。

ところで<石>を<写真>と置き換えて考えるとするなら、共通のものさしとなる「労力」にあたるのは一体何でしょうか?

それはいわばコミットです。

次に示す『ネット名簿登録』のモデルケースで取り上げるのですが、<写真>は拡大すると粗が目立つようになっています。つまりコミットの浅いSサイズは、キズもなく完璧な見た目で安価。ただしそれは、公開されている写真をどこかでプリントアウトしたものと同じかもしれません。

それに対してコミットの深いLサイズは、交換対応がついてお値段もそれなりに。それなのにキズが写っていたりする。ですが大きければ大きいほど原典に近くなる。つまり最終的にはそれを有する方が、原典の価値を維持する権利を有するということになります。

そしてコミットがない偽造については、作者として認定を行わない。インターネット上に公開されているので、誰でも明らかに偽造と分かるというわけです。


さて、ずいぶん長い遠回りになりましたが、これでようやく伝わるのではないでしょうか?そうです。これが、我々の原点に潜んでいた「世界にひとつ」の2通り目、原典と複製を分け隔てるもうひとつの物語だったのです。


D. モデルケース『インテリアアート導入プログラム』。につづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?