今年読んだ本ベスト10(ライトノベル編)

今年読んで良かった本を、ベスト10のランキングにしてみました。

私が今年読んだ作品から選んでいるので、必ずしも今年の刊行とは限りません。
また、一般文芸は別記事にてランキングを掲載しております


第10位
長岡マキ子「経験済みなキミと、 経験ゼロなオレが、 お付き合いする話。その2」(富士見ファンタジア文庫)

いや、甘っ!!!
お付き合い開始から一月が経って、未だプラトニックに恋を育む龍斗と月愛ですが……まあとにかく甘いです。
とにかく彼女に誠実であろうとする優しい彼氏と、その優さの全てが嬉しくてたまらない彼女。
順調すぎて何も問題がない完璧カップル。
物語的には海愛の仕組んだ出来事によってひと波乱あるものの、それすらこのふたりなら乗り越えてくれるだろうと読みながら思わせるだけの熱烈っぷり(ちょっとハラハラはしましたが……)。
スローテンポで愛を育むからこそ、見ていて微笑ましさを感じます。
月愛がギャルでありながら素直でいい子過ぎて、よくぞ元カレたちに心を汚されずここまで育ってくれた……と泣いてしまいそうです。
あと海で披露したビキニ姿は本当に衝撃的でした……かわいすぎる……。
海愛をこのままフェードアウトさせるのはあまりにもかわいそうなので、彼女にもなにか救いの手が待っていると良いですね……。
恋人が経験済み、という設定にもしっかり向き合って描いているのがとても好ましく感じられました。
おもしろかったです。


第9位
暁佳奈「春夏秋冬代行者 春の舞 下」(電撃文庫)

いや〜ものすごい物語でした!
上巻で描かれた四季を司る4人の代行者と、その従者。
秋の代行者が拉致されたのを、代行者と従者たち総出で奪還するのが下巻の物語なのですが、あちこちでいろんなことが起こるわ起こるわ。
あっちで誰かが裏切ったかと思えば、こっちで誰かが裏切っている。
そんな疑心暗鬼に塗れつつ、アクション映画でも観ているかのような怒涛の展開がおもしろい。
そのうえ代行者たちや従者たちは誰も彼もがクソデカ感情を抱えていて、その心理描写を読んでいても熱くなります。
圧倒的ページ数に足る、満足感たっぷりの作品でした。


第8位
有象利路「君が、仲間を殺した数II ‐魔塔に挑む者たちの痕‐」(電撃文庫)

いや、めちゃくちゃおもしろいですよこれ。
1巻ラストで、シアを守るために彼女との決別を選んだスカイツ。
その続編たる2巻は、悲嘆に暮れるシアが、もう一度スカイツと向き合うための物語となっています。
シアとスカイツの歪な恋物語としてもおもしろいですが、バトルシーンも圧巻です。
クライマックスで描かれるバトルはあちこちに伏線が張られていて、ものすごくおもしろかったです。
1冊かけてシアが大きく成長したのが感じ取れて、ハードでブラックな世界観を圧倒する爽快感がありました。
あとがきよりこの作品はここで終わりの予定とのことですが、まだまだまだまだ読み足りないしこれから先どうなっちゃうの!?というポイントも多いので、もしも機会があれば続編にも期待したいところですね……!


第7位
有象利路「サキュバスとニート 〜やらないふたり〜」(電撃文庫)

これめちゃくちゃおもしろかったです。
ニートの和友が搾精したがらない落ちこぼれサキュバスのイン子を召喚する話です。
ぐうたらで非常識で思考が短絡的かつ暴力的で、けれどそこはかとなく憎めないイン子がとにかく魅力的でした。
物語もずっとハイテンションなギャグで突き進みまくり、ありとあらゆる手で笑わせてくる作品でした。
その上クライマックスからはシリアス展開もあり、まるでジェットコースターのようなめちゃくちゃな情緒。
笑えて泣けて、読み物としてのコスパがハンパないので、続刊めちゃくちゃ希望してます!(※続刊出るみたいです!!!)


第6位
竹町「スパイ教室01 《花園》のリリィ」(富士見ファンタジア文庫)

このラノ2021文庫部門第2位の実績に違わぬ、とてもおもしろい作品でした。
不可能任務に挑むこととなった落ちこぼれ少女スパイたちの物語なのですが、「スパイ」を冠するだけのことはあり、あらゆる騙し合いが作中で繰り広げられています。
読み進めていくうちに、明らかな違和感や騙されている感覚があり、謎が明かされた瞬間にすべての違和感が解消される感覚がとても心地よかったです。
個性豊かなスパイの少女たちのやり取りを見ているだけでも楽しく、エンタメ性の高い作品だと思いました。
とてもおもしろかったので今後も追いかけたい作品です。


第5位
雨森たきび「負けヒロインが多すぎる!」(ガガガ文庫)

めちゃくちゃおもしろかったです!
主人公とヒロインの恋物語の前に、儚くも散っていった負けヒロイン……そんな彼女たちにスポットライトを当てたラブコメ。
まず負けヒロインたちが負けヒロインとは思えないくらい可愛くて魅力的で、だけど負けヒロイン故にどこか残念なところもあって。
そんな彼女たちとのコミカルなやり取りは、読んでいてとても楽しいものでした。
合宿に行ったりと楽しいイベントをこなしながら、一方で恋の切なさもしっかり描いているのが良かったです。
負けヒロインもストーリーもイベントも全てが楽しい、最高のエンタメ作品でした。


第4位
白鳥士郎「りゅうおうのおしごと!15」(GA文庫)

内弟子と恋人を失った八一は、供御飯さんと棋書を執筆。
そこで描かれる供御飯さんの長年思い続けた略奪愛は、その想いの深さもあってとても印象的な恋物語でした。それと同じくらい、八一の出した答えも……。
一方であい・供御飯さん・たまよんの激突する女流名跡リーグも息もつかせぬ熱い展開が素晴らしかったです。
今回のエピソードでは何が何でも名人を倒したい山刀伐尽や、実績の欲しいたまよんなど、初タイトルを望む棋士たちの熱い想いが描かれており、とても感動的でした。
夢が叶うのはひとりだけの厳しい世界で、どう幸せに生きていくのか……。
あと、手料理をたくさんつくって待ってる晶さんが可愛かったので、もっとあの人にも注目してあげてほしい……。


第3位
杉井光「楽園ノイズ3」(電撃文庫)

PNOにベースの新メンバーが加わり、真琴が一時脱退をする話。
今回もめっちゃくちゃ、良かったです。
親のコネを嫌って憧れのPNOに飛び込んできた伽耶のエピソードも、一時脱退中にソロ活動をしようと模索する真琴のエピソードも、そのどれもが印象的でした。
拓斗さん、蒔田さん、そして真琴が時代を超えて作り上げた音源のエピソードも、音楽の持つ力のひとつとして強く胸を打つものでした。
ギャグパートとしてはクリスマスイブに4人の女の子と連続デートをするはめになっていましたが、完璧に真琴ハーレムを構築しててヤバかったです。
音楽への熱さも、女の子たちのかわいさも、胸を襲う切なさも、その全てが「楽園ノイズ」の魅力で、心から堪能させていただきました。


第2位
山形石雄「六花の勇者6」(ダッシュエックス文庫)

ここまで様々な策で六花の勇者たちを苦しめたテグネウとの、最終決戦。
とにかくおもしろすぎました。もうこれ以上ないほどに追い詰められて、読者ですら「これはもう無理では?」と諦めそうになるほどの超逆境。
絶体絶命の危機的状況が幾重にも続く中で、勇者たちひとりひとりの機転と偶然とにより突破していくのが素晴らしかったです。
ありとあらゆる要素が絡み合って生み出された物語で、よくぞここまでの熱く入り乱れた展開を描ききってくれたと賞賛の言葉しかありません。
アドレットとフレミーのこれからの先行きが気になりすぎるのですが……、しかし、ここで連載は止まったまま。果たして……。


第1位
暁佳奈「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 下」(KAエスマ文庫)

めちゃくちゃ凄かったです。
破壊的なまでの武力を持つ少女兵として生きたことや、少佐との離別など、いろいろなことがありました。
しかしこの作品は、単なるヴァイオレットというひとりの女の子の恋物語に過ぎないのです。
下巻ではヴァイオレットが働くC・H郵便社の従業員たちにもスポットライトが当てられ、少女兵でなくなったヴァイオレットの生き方が描かれていました。
自動手記人形としてのエピソードのひとつひとつも涙腺を刺激されるものばかりで、とても良かったです。
感情の希薄なヴァイオレットが、少佐への想いを胸のうちで膨らませていく様子が、胸に迫るような文章でとても丁寧に描かれていました。
クライマックスではアクションあり、驚きの展開あり、そして恋物語あり、と盛りだくさん。
上下巻という短い中で、あらゆる感情を刺激されたような感覚です。
ヴァイオレットが自動手記人形として旅をして回る物語をもっと長く読んでいたかったと思うくらい、素敵な作品でした。



以上です。
来年も、今年に負けないくらいたくさんの素敵な作品に出会えますように。

読んだ本は毎月「星野流人の備忘録note」としてまとめていますので、ご興味があれば覗いてみてください。