ゲームで社会課題解決へ ゲームギルドLGGが模索するGameFiの意義



ゲームで得た報酬をお金に換えることができる「GameFi(ゲーミファイ)」は、Web3業界で将来性が有望視されている領域のひとつ。NFTゲームをプレーすることで、ゲーム内の通貨(トークン)を獲得できる「Play to Earn(遊んで稼ぐ)」モデルの確立や、人気タイトル「Axie Infinity(アクシーインフィニティ)」「STEPN(ステップン)」などの台頭で注目を集める一方で、ゲームを始めるためにはアイテムやキャラクターのNFTを購入する必要があり、初心者ユーザーの参入障壁にもなっている。

プレーヤーが初期投資しなくて済むようNFTを貸し出し、ゲーム攻略のノウハウ提供などサポートする存在が「ゲームギルド」だ。数多くのゲームギルドの中で国内最大級なのが「LCA Game Guild(LGG)」。ESG(環境・社会・企業統治)事業としてシングルマザーのサポートプログラムに取り組んでおり、社会課題を解決する手段としてのGameFiの可能性を模索している。そうした意義やGameFiが可能にする次世代の働き⽅について、LGGの最高サスティナビリティー責任者、庄司隆弘氏に話を聞いた。

■「Play to Earn」はGameFi普及の鍵になる

──LGGの概要を教えてください。

LGGは2019年立ち上げのゲームギルドで、現在は主にゲーム会社へのコンサルティング事業と、そこで得た知見やノウハウをまとめたレポートサイト運営、NFTゲームのトークンインセンティブモデルを活用したESG事業の3つを展開しています。



ゲームギルドを始めたのはLGG代表の細金(恒希氏)が、NFTトレーディングカードゲーム「JobTribes」を運営するDigital Entertainment Asset Pte.Ltd(DEA)のビジョンに深く共感したことがきっかけでした。ブロックチェーン技術を用いて新たなエンターテインメントを創造し、持続可能なエコシステムを作ることで少しでも経済格差をなくしたい。こうした思いを掲げるDEAを応援するために、LGGを発足したんです。

21年にAxie Infinityが世界的に大きな話題となり、NFT所有者が他プレーヤーにNFTを貸し出す「スカラーシップ制度」に注目が集まりました。Axie InfinityはPlay to Earnの先駆けとして、GameFi市場を活性化させるゲームタイトルになったわけです。それに続く形で、歩いたり走ったりすることでトークンを稼ぐことができる「Move to Earn」のSTEPNも登場し、「X to Earn」と呼ばれる新しい報酬獲得モデルの可能性がさらに広がりました。

LGGとしても、本格的にAxie InfinityやSTEPNをプレーし、X to Earnの再現性を検証してきました。そうしたなかで、従来の労働集約型ではない「分散型の働き⽅モデル」に将来性を見出すようになったんです。

──LGGが考える分散型の働き方とは、具体的にはどのようなものを想定しているのでしょうか。


Play to EarnはGameFiのマスアダプション(一般大衆による受け入れ)の鍵になると考えています。例えば株式投資は一定の資産を持っていないと参加できませんが、GameFiはトークンさえ持っていれば、誰でもエコシステムに参加できます。

分散型の働き方とは、GameFi特有のPlay to Earnが可能にする、次世代の働き⽅だと捉えています。NFTゲームのエコシステムを活用すれば、貧困や格差問題の緩和にもつながると考えています。

また、NFTゲームの特徴的なスカラーシップ制度は、ESGの観点からも世界的に関心が寄せられている仕組みです。NFTを保有するオーナーがNFTを借りたい人=スカラーに貸し出して、スカラーがゲームをプレーして得た報酬の一部を当事者間で分配できるため、NFTゲームに関わる人々の経済的な発展に寄与します。

つまり、プレーヤーが継続的にNFTゲームへ取り組むことで、安定的な収入につながる。経済的困難の解決の一助になり得るのです。

■貧困の連鎖断ち切るため、支援協会とも提携



──LGGはESG事業の「シングルマザーサポートプログラム」に取り組んでいます。ゲームギルドが社会課題の解決に取り組む意義についてお聞かせください。

ESG事業を開始した背景から話すと、生まれ育った家庭環境によって経済や教育の格差が生じ、貧困をまねく要因になるような「負の連鎖」を断ち切りたかったことが根本にあります。LGGを運営するLife Create Academy(LCA)はミッションに「大人が誰でも挑戦できる世の中を作り、構造的な経済格差をなくす」を掲げています。これに照らし合わせ、もっとも身近な社会課題は何かと考えて行きついたのが、シングルマザーの貧困化でした。

日本では、経済的不安を抱えるシングルマザーが多いといわれています。シングルマザーの生活安定に、少しでも力になれないか。東京・江東区議会の三次ゆりか議員に協力を仰ぎながら22年5月、一般社団法人の日本シングルマザー支援協会とパートナーシップを結び、シングルマザーにNFTゲームで収入を得られる仕組みや情報の提供を行う試み「シングルマザーサポートプログラム」をスタートさせました。

取り組みを始めるにあたっては、実際に三次議員にもJobTribesのPlay to Earnを体験してもらいました。同ゲーム内の暗号資産「DEAPcoin(DEP)」は日本の暗号資産取引所に上場しており、比較的容易に売却が可能です。かつ、高度なスペックのパソコンやソフトのインストールも不要なブラウザゲームなので、参加もしやすい。そういった部分に共感してくださり、協会連携の後押しになりました。

■NFTゲームは多くの社会課題の解決に貢献できる可能性がある



──Web3業界全体において、ESG事業がどのように進化していくとお考えですか。

Web3事業者でESGに取り組んでいるところはまだ少ないので、まずは我々の活動を知ってもらいたいと思っています。現在は6人のシングルマザーに対し、NFTゲームで収入を得る方法や確定申告の仕方などの情報提供をしており、月に平均して約2万~3万円(1DEP=0.8円、実績報告作成時点)の収入が発生しています。ESG事業に投資する個人のオーナーや企業を募り、もっと多くのシングルマザーの収入を支えるサポートができるようにしていきたいですね。

我々以外のESGのユースケースには、NFTゲームを活用した障害者の就労支援や、社員の福利厚生としてNFTゲームのデッキを会社のお金で購入し副業を促進するなどがあります。今後、この動きがもっと広まっていけばいいなと思っています。

──Web3業界が将来的にもたらすであろう仕事や生活の変化について、どのように捉えているのでしょうか。

インターネットが登場した1995年ごろは、リスクやネガティブに思う人が多くいました。今のWeb3もその頃と同じ状況だと思っています。遅かれ早かれ、必ず社会に浸透するものだと捉えています。

現状のWeb2からWeb3へ転換していくことで、なくなる仕事や変わる仕事、そして新しい仕事が生まれることでしょう。こうした変化を楽しみながら、少しずつ環境を作っていければと考えています。

──今後の展望や目標についてお聞かせください。


現状としてはシングルマザー支援を中心に取り組んでいますが、それは数多くある社会課題のひとつにすぎません。これからも日本の貧困や雇用問題の解決に貢献できるNFTゲームの可能性を追求するとともに、できるだけ多くの人にWeb3の魅力を広げていきたいと思っています。

加えて、今後も多くのゲームプロジェクトが登場してくるので、LGGとしても良質で将来性のあるNFTゲームの検証と精査を行っていく予定です。