見出し画像

【第17話】〜開きたくないアルバム〜

「もう一緒にできない」
そうマリンに送ったまま、一方的に連絡を閉ざしてしまったあみは、それからずっと後悔していた。
やっと見つけた仲間だったし、マリンの歌は、ずっと探していた自分の世界を広げてくれる魔法のようだったのだから。

だけど、「どういうこと?」「ちゃんと話し合おう」「全然納得してないから!」マリンからメッセージが入るたびにどう返していいかわからなくなってしまい、途中から見ることもできなくなってしまった。

本当はすぐにでも返信したかった。
「ごめん、マリンさえいいなら、やっぱり一緒に続けたい」
そう、伝えたかった。でもできなかった。

マリンに迷惑をかけたくないというのも本当だ。
この前、二人で公開した曲のコメントの投稿者に、見覚えあるアルファベットの並んでいるのを見た瞬間、胸の奥がドンっと押されたように鼓動が早くなった。

そのコメントを読むと、今度は血の気が引くように何も考えられなくなった。「あの子だ」中学の頃、一緒に曲を作ろうと誘われて、嬉しくて何曲か二人で作った。

でも数ヶ月後、それが『彼女一人の曲』として公開されていたのだ。
最初は何かの間違いかと思って彼女に聞いた。すると平然と答えたのだ。「あみには手伝ってもらっただけだし」と。
ウソでしょ。ほとんど私が作ったのに、なんでそんなこと、という問い詰める間もなく、彼女はあみを遠ざけた。

まるであみの方が彼女を虐げたように周りに言って、SNS でも配信しているのを知った。悔しくて、あみは“自分の曲”として、何曲も作っては公開した。すると、まだ中学生だったこともあり、“天才中学生が現れた!”とちょっとした有名人になったのだが、それでも彼女はあみが公開するたびに、悪意あるコメントをしてきたのだった。

それに耐えられなくなったあみは、とうとう曲を公開するのを辞めてしまった。「ピコンッ」とまたメッセージを受信した音がして、「マリンかな」あみがスマホを見ると、その中学の頃、音楽を教えてくれた人からの久しぶりのメッセージでびっくりする。

そして、読むとさらにびっくりした。
それは学校の教師、本村のことだった。