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e-bikeにおける消費カロリーの推定法2

はじめに

前回,以下のようにe-bikeによる消費カロリーをどうやったら推定できるのだろうか?という問題に取り組んだ.その理由は,自転車後に飲み食いしても良いギリギリのカロリーを見極めるためである.

その結果「Garminのサイコンで取り込んだデータをiPhoneのヘルスケア経由でみるといくつかのデータが表示されるが,そのなかの「アクティブエネルギー」で示される値がどうもe-bikeでの消費カロリーを示しているようだ.ただし,どういう理屈でそれを算出しているかは分からない(今後の課題)また,Apple Watch単体ではe-bikeでの消費カロリーは推定できなさそうだ」ということが分かった

しかし,今回の検証の結果,前回の検証結果は半分くらい間違いだったということが分かった.というか,そもそも前提が間違っていた.まだまだ検証中ではあるモノの,現時点での結論から言えば「e-bikeに乗った場合,Apple Watchを装着するだけ(何かの計測モードにしてはならない)で正しい消費カロリーを計算してくれる.ただし,ワークアウトといった何らかの計測機能を使うと過剰値を示す」というものだ.Garminのサイコンなどを「併用」して消費カロリーを計測すると,そのデータは取り込むもの消費カロリーの推定には活用していないっぽいことも分かった.Appleは他のアプリを信用していないのかもしれない.

以下に詳細を説明していく.なお,本稿では広義の電動アシスト自転車を全てe-bikeと総称する.Tb1eはe-bikeじゃねーだろ?って無粋なツッコミはしないで頂きたい.

検証に使用したルート

検証という名の遊びに使用したルートは以下である.木津川市州見台のファミリーマートを出発し,加茂町,和束町を経由し,朝宮の有名な天下一品で昼食をとった.その後,山田牧場を経由して和束町,加茂町を経由しスタートに戻る.非常にざっくり言えば,往路はひたすらゆっくり登っていく感じで,帰りはその逆である.

ちなみに私はe-bike(Tb1e), 友人S氏はロードである.いくつかの急峻な登り道では私は余裕であったが,緩い登り・平坦路・下り坂はいずれもロード(というかS氏)が圧倒的に早かった.が,全体としてはほとんど同じペースで移動した.

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測定結果

そして各ポイント毎に計測した消費カロリーをグラフにすると以下のようになった.グラフ中の数字は地図中の各ポイントに対応している.グラフの凡例は以下である

オレンジ:Garminで測定した私の消費カロリー
青色:Apple Watchで測定した(ワークアウト機能は未使用)私の消費カロリー
灰色:Garminで測定した友人の消費カロリー(体重は私と同じになるように補正済み)
緑色:高度

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グラフは非常に興味深い結果を示している.まず,1→2の区間は急坂を含む割と坂道中心の区間であったが,Garminでe-bikeの消費カロリーを測定(オレンジ色)すると友人(ロード,灰色)よりもかなり消費カロリーが高かった.しかし,実際にはこの区間は走り始めで体力に余裕があったこととモーターによるアシストにより本当に鼻歌交じりであった.一方,友人は軽量ロードとはいえども,長く続く急坂はかなり大変そうで,何度も話しかける私に殺意に近いモノを覚えたに違いない(笑)彼の消費カロリーが私より少ない,ということは絶対にあり得ない区間である.にもかかわらず,私の消費カロリーの方が高く出ている.その後,2→3の区間は坂道は残っているものの下り坂や平坦路もあり,平均速度も高かった.私も友人も消費カロリーは下がり比較的近い値になったものの,それでもやはり私の消費カロリーが僅かながら高い値となった.

この段階で,天下一品休憩となったわけだが,何気なしにiPhoneのヘルスケアでアクティブエネルギーを見ると370kcalくらいの数値をだしていた.そのとき,私はふと気づいた.Garminは明示的に測定を終了させるまではiPhoneにデータを送らないはずなのに,iPhoneは何かを計測している.この数値は一体何だ?と.冷静に考えてみると,iPhoneはワークアウト機能などを使わない状態でも(おそらく)心拍数や入力した体重などからバックグラウンドで消費エネルギーを推定しているのは周知の通りだ.

私が気づいたのは「もしかしたらiPhoneが何の測定モードも使わない状態で測定した消費エネルギーってe-bikeの消費エネルギーを正しく測ってるんじゃね?」という点である.前回まではGarminのサイコン経由で得られた何らかの情報を使ってe-bikeの消費エネルギーを正しく推定していると思ったけど,実はAppleは自分の測定したデータだけを使っている可能性がある.

そう思ってから,実際にiPhoneのヘルスケアで見られるアクティブエネルギーを同時にモニターし,それもプロットしてみた.それが図中の青い線である.

この青い線と友人の消費カロリー(灰色)を比較すると,ほとんど全てをうまく説明できるのだ.まず1→2の区間では,私の消費カロリーがはるかに低く測定されている.実際の感覚とも良くあう.その後,2→3は二人の消費カロリーはほとんど同じである.これも感覚に近い.食後,山田牧場に向かう道(3→4)はほぼほぼ平坦路かつ良い感じで追い風であり,またドラフティング(スリップストリーム)の感覚を少しつかみ,24-30km/hでかなりの距離を巡航できた.この領域ではほとんどアシストを使っていない(つまりただの重い自転車となる).この状態で私の消費カロリーは友人より僅かに高い程度であった.僅かに高いのは,私のTb1eが重く,走行抵抗も高かったのが理由だろう.また空気抵抗も高いだろうが,この区間はドラフティングを多用させてもらったので,そこまで大きな差は無かったように感じる.

さらに帰り道の4→5は,友人の消費カロリーの方が高かった.この区間は全体的に緩い下り坂の区間であった.部分的には5kmの区間平均速度が30km/hを超えるような領域もあり,当然電動アシストは全く効かない.友人はロードの特性を活かし,この領域でも正直完全に余裕だったそうであるが,私は単に重い自転車と化したTb1eほとんど全開で漕ぎ続ける必要があった.個人的にはかなりの消費エネルギーであったように感じる.しかし,それでも友人の消費カロリーが高かったのは,途中の5kmくらいの区間は自由走行として,友人がぶっちぎりで先行した(平均速度が高い)ことが原因かもしれない.また基本下り道とはいえども,途中3カ所くらい急な上り坂もあり,そこでの負担はロードがはるかに高かったことが理由として考えられる.

全体として,この青い線は実感と比較して非常に受け入れやすい数値であった.ちなみにオレンジ色の線(Garminによる測定値)ははるかに高い消費カロリーを示していた.これはGarminはe-bikeモードにしているものの,これはただのカテゴリとしてしか機能しておらず,私の心拍数と移動速度から総合的に「普通の自転車」としてカロリーを出したためだと思われる.Apple Watchもワークアウトとして「自転車」などを選択して測定すると,Garminと同様の数値を示すことから,e-bikeに乗るときに何らかの測定モードをを用いると過大測定となるようだ.

Apple watchによる測定値は何を測っているか?の検証

これまでの議論で,Apple Watchによる消費エネルギー(アクティブエネルギー)が何となくe-bike使用時の真の消費エネルギーを測定しているっぽいが,それが本当にそうなのかを検証するため,前回もやったような別の推定方法との比較を行った.

別の推定方法とは以下である.つまりGarminによる測定値からバッテリーの消費量を差し引く方法だ.私のTb1eは10%のバッテリー残量低下につき約100kcalのアシストをすることは簡単な計算から分かる.そのようにして測定した結果をApple Watchの測定値と比較した結果が以下である.

実はこのプロットは区間毎のデータに加え,後日,短距離を走ったときのデータも加えている.これを見るとほぼほぼ線形に近い関係が得られている.前回の検証ではよりよい一致(決定係数が1)を示していたが,今回はデータが増えたのでさすがにそうならないものの十分に良い一致である.

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原理上,横軸はe-bike乗車時の真の消費エネルギーを出している.それに対してApple Watchによる測定値は係数が0.929と1ではないもののかなりいい近似値となっている.

ちょっと気になるのは,今回の測定値(一番右側のプロット)がなければ傾きは1にさらに近づくことだ.言い換えれば,今回の真の消費エネルギーは少々過小評価されているような気はする.確かにGarminで1500kal近く消費していて,バッテリー消費が40%だったので1100kcalくらい消費してて欲しいところだが,実際には960kcalくらいだった.この誤差の要因についてはさらに調査が必要と思われる.つまり,もう何回か友人を連れ回して,もう少し細かい区間単位で消費カロリーを計測する必要はあるだろう.

理想的にはロード,せめてクロスバイクを用い,同じようにApple Watchのみで測定される消費エネルギーとGarminで消費されるエネルギーを比較することが重要である.上述の仮説が正しければ,e-bikeでない場合,2つの値はほとんど同じになるだろう.すなわちロードバイクが欲しい.

なお,今回注文した天下一品のこってりはカロリーが949kcalらしい.つまり今回の自転車で消費したカロリーとほぼ同じ.つまり体重は決して減らないと言うことである.これだけ走って・・・と思うと少々悲しくなる..ちなみに友人S氏は1日で最高290kmを走破したそうである.これなら3食天下一品のこってりを食べてもお釣りが来る.この距離になるとe-bikeではバッテリー容量から走破はかなり難しいだろう.やはりロードバイクが欲しい.

(現時点での)結論

Apple Watch+iPhoneでe-bike使用時の消費カロリーを推定したかったら,「ワークアウト」機能を使わず,単にApple Watchを腕につけっぱなしにしておけば良い.たぶん.

約70km走っても,天下一品のこってり食べたら相殺される

あとロードバイクがもっと欲しくなった.


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