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「ドル円相場と○○の関係」という都市伝説⑨人民元(後編)

前編はこちら。


前回の調査では、次のことが分かった。

・元円レート≒ドル円レート
・ドル円レートが動かない場合
→元高ドル安≒円高ドル安

つまり、ドル円レートが動かないと仮定して、かつ、今後アメリカの圧力により元の切り上げが行われるとすれば、2020年現在、元は対ドル・対円ともに割安である。つまり日本円使用者にとって割安(日本人にとって買い時)であることになる。

そんなわけで、日本円から人民元への両替を検討してみた。

§ FXレバレッジ1倍は外貨預金の代わりになるが、しかし……。


FXレバレッジ1倍は、長期保有するなら、外貨預金の代わりになるらしい。FXレバレッジ1倍をざっくりまとめると次の通り。

1元=16円のとき(2020年1月現在)
・必要証拠金:レバレッジ1倍の場合、1Lot=1万通貨(1万元)=16万円
・スワップポイント:日中両国の政策金利差(中国は4.3%、日本は0%)に応じて付与される。スワップポイントは会社によって異なるが、最高水準の「SBI FX」「みんなのFX」では1Lotにつき10円/日(3650円/年)。
・FXの為替手数料(スプレッド)は、外貨預金に比べて安い。
・FXは預金保護(ペイオフ)の対象となる。外貨預金は預金保護の対象外。


預金保護の件については、私はまったく気にかけていない。銀行が破綻する可能性を心配しはじめると、ハイパーインフレ、交通事故死、その他、個人の力では如何ともしがたい不幸事を心配する必要が生じる。が、そんなことを心配しても仕方ないためである(ただし地銀を除く)。

ところで、「外貨預金は所詮、手数料商売であり、銀行を儲けさせるだけなのでおススメできない」という意見がネットに多く見られる。が、FXの為替手数料が安い理由は、デイトレーダーを主な顧客としており、彼らはものすごいスピードで両替を繰り返すためだろう。結局のところ、FXも手数料商売ですよ……。

よくある意見として、「FXレバレッジ1倍のデメリットは、《少ない資金で大きな利益が得られる》というFX最大のメリットが失われることです」って、なんじゃそりゃ。私はそれをデメリットと呼ばない。私はレバレッジが嫌なので、1倍を検討しているのに。FXへの不信感が募る。

印象論で語るのはよくないが、FX関連のサイトは下品な色使いの広告が多く、パチンコ店の騒々しさを連想させる。なによりFX独特の専門用語が多く、それらを学び使いこなせるようになったところで、金融や経済の知識へと繋がらない印象がある。それが私にとって最大のデメリットである。
よく昭和時代のおじさんが「勉強のために株をやっています。いや、たいした金額じゃないですけども、経済ニュースに目を向けるきっかけになればと思いましてね」と言っていたけど、その勉強なんだよ。FXは視野が広がっていく感じがしないんだよね。

たしかにレバレッジ1倍で長期保有すれば、外貨預金より手数料が安いのは魅力的であるが……。

FXレバレッジ1倍の金銭的なリスクは次の2点。
・元を入手後、元安円高が進んだ時点で円に戻すと損をする。
・ロスカット(円高進行時における強制的な決済):為替レートが元安円高に急激に動いた場合、強制的にロスカットされる可能性がある。「SBI FX」のサービス「積立FX」では、証拠金維持率が30%を下回ると、強制的に決済される。たとえばレバレッジ1倍で、1ドル100円のときにドル転した場合、1ドル30円に達すると強制ロスカットとなる(自動的に円転される)。同様に、1元16円のときに元転した場合、1元4.8円に達すると強制ロスカットとなる。

● FX私的まとめ
・FXは、ややこしすぎる。


§ 中国株インデックス


FX(元円取引)をするくらいなら、元円レートを反映する中国株に投資する方が有利と思われる。株価は経済成長を織りこんでおり、またNISAなど税制面でのメリットが大きいため。

そんなわけで、中国の株価指数に連動するインデックス投信を検討する。中国の代表的な株価指数は次の3つ。

●SSE(上海総合指数)
・中国を代表する株価指数。
・日本円から購入すると、元円レートの影響を受ける。
・この指数に連動する有力な投資信託はあまりなさそう。

●ハンセン中国企業指数
・中国本土の優良企業が、香港市場に上場して発行する株式で構成される。それら構成銘柄の多くはH株と呼ばれる。
・日本円から購入すると、香港ドル円レート(=ドル円レート)の影響を受ける。
・この指数に連動する有力な投資信託はあまりなさそう。

●HSI (香港ハンセン株価指数)
・日本円から購入すると、香港ドル円レート(=ドル円レート)の影響を受ける。
・今のところ、香港デモによる株価への影響はさほどない。
・この指数に連動する投資信託商品は、三井住友の「香港ハンセン指数ファンド」ほぼ一択。

ということで、候補となる投信商品は、HSI(香港ハンセン株価指数)に連動するもののみとなった。HSI は、人民元ではなく、香港ドルで取引される。もはや人民元は関係なくなってしまった。


§ HSI (香港)の指数比較

まず、HSI (香港)を、円換算と比較してみる。

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円換算すると、2009~14年頃に一時的に乖離が大きくなっている。当時の円高ドル安を反映している。
2016~20年頃、両者はほぼ一致する。ドル円がほぼ動いていないため(対2004年比)。

次に、その他の株価指数との比較。

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・HSI(香港)は、EEM(新興国)に似た値動きである。EEMは、2019年に中国A株(元建て)の組み入れ比率を増やし、今後も増えていく予感。というか今までが少なすぎた。
じゃあ個人投資家としては、HSI ではなく、EEMを購入すればいいじゃない。
・ちなみに上図は2006年起点のチャートだが、2010年代のSENSEX(インド)の上昇率がすごい。

・下図は2009年(リーマンショック直後)起点のチャート。2010年代のSENSEX(インド)、S&P500(アメリカ)の上昇率がすごい。
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さて、残る候補は中国個別株のみとなった。
が、私はインデックス信者なので検討不要と考える。

ということで、今回は人民元投資を見送ることにした。

§ まとめ  ~~今回はお見送りすることに~~

・中国株インデックスに投資するくらいなら、その資金を、EEMなどの新興国株式インデックスに振り向けた方が賢明である。
・人民元預金、人民元FX(レバレッジ1倍で長期保有)は、候補の一つとしてアリだと思う。私はチャレンジしないけど。


§ 「ドル円相場と○○の関係」という都市伝説(全9回)は、今回でいったん終了します。

拙文にご付き合いくださいまして、ありがとうございました。

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